第19話

---街中


超能隊のメンバーはそれぞれ一人で街中を見回っており、街中を歩いている高身長の坊主頭の男、マグ・ドルクウェルもその一人である。


事前に町の人々に警報を発していたため街中で出歩いている人はいない状況である。


だが、見回りをしているマグの目の前に突然ピンクのカーテンが現れ、カーテンが開くとそこにはピエロが出てくる。


「ハハ、ちょうど超能隊の人に会えたよ」


ピエロは目の前にマグがいたことが嬉しいようだ。


「お前の情報は聞いているぞ。空間移動の能力を扱える他に身体能力強化など多くの能力が使えるそうだな」


マグはピエロが現れたことに動揺を一切見せず、軽くステップを踏みながら臨戦体制をとる。


「ハハ、残念だけど今日は遊んでいる時間は無いんだよね〜」


ピエロはマグと戦うつもりはないようで手のひらをぷらぷらと振る。


「じゃぁ一体俺に何のようだ?」


戦闘の意志を見せないピエロを見てもマグは警戒は怠らず、いつでも戦闘を開始できるようにステップを踏み続ける。


「ハハ、君はさ封印の宝玉の隠し場所がどこか知ってるかい?」


ピエロは両手で丸を作りながらマグに問いかける。


「さぁな。知ってても教えるわけが無いだろ」


マグはピエロの問いかけを冷たくいなす。


「ハハ、君は特に口が硬そうだから言わないだろうね。他を当たることにするよ。またね!」


ピエロはマグに手を振るとピンク色のカーテンが現れてピエロの姿を隠していく。


マグは逃げていくピエロを追うことはせず、再びマグは街中で一人になってしまった。


---南門


南門では6人が三組に分かれて一対一の戦いを繰り広げていた。


一番派手に戦っているのはバン対ロックの組み合わせである。


バンは背中からコウモリの翼が生えており、耳も長くなって容姿が変わっている。服装も黒を基調とした色で統一されており露出が高めの服に変わっている。


対してロックの姿は全身ゴツゴツとした岩で覆われており、バンとは対照的に肌が全く露出していない。


「岩岩弾丸(ガンガンダンガン)」


ロックが地面を思い切り殴ると殴った地面の周囲からバン目掛けて多数の岩が飛んでいく。


「血操(ブラッドオペレーション)・網防(ネットバリア)」


バンが右手を軽く前に振ると五粒の血が飛んでいく。それぞれの血は岩に近づくと網状に変化し、多くの岩を包んだ後に地面に落下させている。


結果的にバンに向かってきていた岩は全てバンの前で落とされることになった。


「やるガンス」


ロックは一言こぼすとすぐに次の行動に移る。目の前でバンがこちらに向かって来ており、血で作られた大剣でロックを斬りかかろうとしていたからだ。


「岩岩拳点(ガンガンケンテン)」


ロックは拳を包んでいる岩を大きくしながら、振りかぶられるバンの大剣に殴りつける。


二人は衝撃で後ろに飛ばされる結果となり、それぞれの力量は互角のようだ。


「ふふ、あなた中々いい男じゃない。殺し屋でくすぶってるのがもったいないわね」


バンは背中の翼を羽ばたかせると、空中で体制を整えて華麗に地面に着地する。


「物心ついた時からこの仕事で生きて来たガンス。不満はない」


ロックは吹き飛ばされても体制を変えることなく、そのまま地面に衝突するが身に纏った岩のお陰でダメージはないようだ。


バンとロックの接戦はしばらく続くことになりそうだ。


-


バンとロックの派手な戦いとは違い、ビートとスードの戦いはお互いがかなりの速さで移動して行われる肉弾戦となっている。


スードが能力を使うと下半身の筋肉は異常なほどに発達し、足の速さを向上させている。対するビースは自身の足をチーターの足に変化させることで素早く移動する。


お互いの移動するスピードは互角のようでスードが走り出すとそれに並走するようにビースも走り出している。


「この速さについてこられるやつにあったのはお前が初めてザンス」


スードは立ち止まるとビースに対して笑顔で話しかける。


「それはこっちも同じだ。やっぱり楽しくなってきた!」


ビースも長く伸びている八重歯を見せるように笑うと二人は猛スピードの戦いに戻る。


-


三兄弟の末弟ヘアと戦っているのは金髪の少女イスである。


ヘアは髪を自由自在に伸ばして操作する能力を持ち、多方向からイスに攻撃を仕掛けているが、右手の人差し指から伸びている青い糸を上手くつかうことでヘアからの攻撃を全て避けている。


時に地面に糸を当てて自分を押し出したり、ヘアから伸びている髪に絡ませて攻撃を防いだりと一本の糸でヘアと渡り合っている。


「何でそんな一本の糸で俺の髪の束が塞がれているヤンスか!」


ヘアは自分の攻撃が全ていなされていることに対してイスに対して恐怖心を持ったようで、徐々に後方へと下がってしまう。


「おいヘア!心配すんな、お前はあの女よりも充分強い。もうちょっと頭を使ってみるザンス」


猛スピードで近寄ってきたスードはヘアの後方で立ち止まると励ましの言葉を送る。


スードが立ち止まっている隙をついてビースは勢いのついた蹴りをスードに対して放つ。スードは立ち止まった状態で反応して同じく蹴りをビースの足に交差する形で放つが、勢いのついたビースの方が威力は大きくスードは後方へと吹き飛ばされてしまう。


「スードの兄貴!」


「心配するな!お前は自分の戦いに集中しろザンス!」


ヘアは自分のせいで吹き飛ばされてしまったスードに対して心配の声をあげるが、すぐにスードはヘアに声をかける。


「頭を使う、、俺は強いヤンス!」


「髪千本(カミセンボン)」


ヘアは頭を触りながら考えるとハッとした表情になり、イスに対して頭を向けるとその勢いで髪の毛を飛ばしていく。


「螺旋糸(ラセンシ)」


飛ばされてくる鋭い髪の毛に対して、イスは青い糸を新体操選手がリボンを回すかのように螺旋を描くことで髪の毛を防ぐが、糸の隙間から髪の毛がイスを襲う。


「ぐっ、、」


髪の毛はイスの体に刺さりはしないが体の表面を次々に切りつけていく。


「これはかなりキツイよ、、」


イスはそれでも螺旋を描く腕を止めずに懸命に飛んでくる髪の毛を防いでいる。ふと飛んでくる髪の毛の気配がなくなり、ヘアの方を見ると頭がツルピカで髪の毛が全て抜けたヘアの姿があった。


「あっ、あれ?髪の毛が生えてこないヤンス!な、何でヤンスか?

こんなに髪の毛を連続して飛ばしたことが無かったからキャパオーバーしちゃったヤンスか!?」


ヘアは自身の能力が使えなくなった焦りから、頭に手を当てて撫でまわしているが一向に髪の毛が頭から生えてくる気配はない。


「もう終わりみたいだね。すごい痛かったんだから!お返しだよ!」


「青糸危機一髪(アオイトキキイッパツ)」


イスの人差し指から伸びる青い糸がヘアの頭の中心にくっつくとヘアを空中高くへと持ち上げる。


「ちょっ! ちょっと待つヤンス! 辞めてくれヤンス!!」


ヘアの懇願も意味はなく青い糸は勢いよく地面に引っ張られる。勢いのままヘアは頭を下に地面に激突し、地面に軽く穴が生まれながら気絶してしまった。


「今の一撃で表面に軽く傷ができただけなんだね。頭が頑丈で良かったね!」


イスはヘアの気絶を確認するとバンとビースの戦いに目を向ける。


「ビースさんの戦いは早すぎてついていけなそうだからバンさんの助太刀に行こうかな!」


イスは体に傷をつけられたのに腹がたっているのか、バンの元へ向かう際にわざとヘアの頭を踏みつけ歩いて行った。

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