ただの日に何やってんの

家猫のノラ

第1話

『チキンとケーキ、半額です!!』

のぼりを出した、12月25日午後5時。イヴに祝うことが定番である日本では、もうクリスマスも余韻だ。

今店頭に残っているほとんどが捨てられるんだろう。クリスマスは一年で1番廃棄量が多い日らしい。

みんな浮かれちゃってさ。

普通の日と何も変わらない製法のチキンとケーキがクリスマス限定ボックスに詰められているのを、どこか自分と重ねながら俺はレジ打ちをしていた。

このおばさんめっちゃ見てくるやん。

ピアスバチバチでわるーございましたね。舌ピもありますよ。見せましょか?

チャラい見た目でクリスマスにコンビニでバイトしてるのはおかしいことらしい。

俺やっぱお前らと仲間だわ。

無駄にいっぱい飾りつけて、特別感出して、値段釣り上げて、一瞬目を引くけど、結局捨てられる。

『なんか意外とフツーなんだね』

そうだよっ!!俺はいたって凡人!!凡人だと思えば凡人なりに美味いのに、なんで俺は特別になりたかったのかなぁ。

おばさんはボーっとしていた俺からレシートを取り上げて出て行った。

入れ替わるように女子中学生が入ってきた。

いつもの子だ。

黒のブレザー、黒のボブ、黒のリュック。すごく地味。

塾があるのか、この子はいつもこの時間に、ココアと肉まんを買う。

毎回、合うのかこれは。と思いながらレジを通す。

でも今日はきっと違うんだろう。

なんたって今日は、普通の日がクリスマスという飾りをつけているんだから。

その子はクリスマス限定パッケージに包まれたココアを手に、レジに向かってきた。

「これと肉まんください」

寒さで赤みがさした頬に真っ直ぐな目。

その目にはきっと飾りをつけないまっさらな世界が映ってるんだろうな。

肉まんにクリスマス限定パッケージなんてない。

いつもと同じように、詰めて、渡す。

きっとココアと肉まんは世界一の組み合わせなんだろう。


その日の帰り道。

ショーウィンドウに映る凡人がひどく愛おしく思えた。

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ただの日に何やってんの 家猫のノラ @ienekononora0116

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