メリー・クリスマス
朝、目が覚めた。
身体を起こして枕元をみると、すぐそばに、リボンで梱包された大きな箱があった。
これが、僕の自転車……
弟を見ると、まだ眠っているみたいで、
弟の枕もとには、僕のより少し小さな箱があった。
お父さんやお母さんは、もう寝室にはいなかった。
僕は立ち上がり、着替えるために自分の部屋に踏み込んだ。
昨晩凄く怖かったその部屋は、朝起きてみると大したことなくて、
いつもと変わらない、僕の部屋だった。
なんでこの部屋が、夜になるとあんなに怖くなるのか?
僕には不思議でしかたなかった。
★★★
「メリークリスマス、昨日は頑張ったね」
リビングにいくと、お母さんから褒められた。
「うん」
僕は、昨日、ひとりで寝ることは出来なかった。
でも……
ひとりで寝ようと、頑張って挑戦したことだけは、
ちょっとだけ自分が誇らしかった。
★★★
「おはようっ! ねぇっ! サンタさん居たよぉぉ!!!」
僕が教室に入ると、風香ちゃんが興奮気味に駆け寄ってきた。
「えぇっとね。
野球ボールじゃ転がっちゃうから、小さな箱を置いておいたんだけど……」
風香ちゃんが楽しそうにまくしたてる。
「朝起きたら箱が動いてたの! そしてプレゼントも来てた!
やっぱりサンタさんはいるんだよぉぉ!!」
「そうなんだ……」
「うんっ!!」
風香ちゃんの太陽みたいな笑顔は、僕にとっては眩しくて、
凄いな、大人だなって思った。
僕は、ひとりじゃ怖くて眠れなかったから……
「ねぇねぇ、サンタさんには何を頼んだの?」
風香ちゃんが僕に訊いてくる。
「じ、自転車だよ」
「え、いっしょ!!」
風香ちゃんが、驚きながら声をあげる。
「私もはじめての自転車だよっ、すごい偶然だねっ!」
「う、うん」
びっくりした。
まさか風香ちゃんも、サンタさんに自転車を頼んでいたのか。
「じゃあさ、今日の放課後、一緒に練習しようよ! はじめての自転車!」
「う、うん」
「やったっ!」
そして僕は風香ちゃんと、一緒に自転車の練習をすることになった。
風香ちゃんはいつも元気で、優しくて、運動もできて、
ひとりの部屋で眠ったり、お母さんの料理を手伝ったり、
とにかく凄い女の子なんだ。
風香ちゃんに比べれば、僕はまだまだ子どもで、怖がりで、何もできなくて……
僕が風香ちゃんに勝てるものなんて、何もなくて……
でも、だからこそ、
僕は決意した。
「自転車だけは、風香ちゃんよりも先に乗りこなせるようになってやる」
と。
サンタクロースの確かめかた スイーツ阿修羅 @sweets_asura
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