クリスマス・イブ
「え? 今日はひとりで寝るの?」
お母さんが心配そうに尋ねてくる。
「うん」
「ほんとうに? 怖くないの? 大丈夫なの?」
お母さんが心配そうに、僕の顔を覗き込んで、
僕は少し、イラッとした。
「うるさいっ! 心配すんなっ!
俺はもう子供じゃないっ! ひとりでだって寝れるんだ!
今日はクリスマスだからっ!
サンタさんがいるのかどうか、確かめるんだっ!」
「そ、そうね……」
お母さんはまだ心配をやめない。
「ははは、まぁ良いじゃないか。やらせてみれば。
サンタさんがいるかどうか、確かめるのか? 面白そうじゃないか。
お父さんにも聞かせてくれよ、その作戦」
お父さんが、楽しそうに笑った。
「お兄ちゃん、ひとりで寝るの?」
弟がびっくりした顔で尋ねてくる。
「作戦は、秘密だっ。でも今夜は、だれも俺の部屋にはいって来るなよっ! 作戦が失敗しちゃうからな」
「分かった!」
弟が元気に返事をする。
「ははは、楽しみにしてるよ」
お父さんが笑顔でこたえる。
こうして僕は、自分の部屋に自分の布団を持っていき。
はじめて自分の部屋で寝ることになった。
★★★
ドアを閉めて、くっつけるようにテニスボールを置いた。
あれ?
そこで僕は気づく、テニスボールは勝手にコロコロと転がってしまうことに。
どうしよう? これじゃ意味がない。
結局僕は、まるめてガムテープでとめた紙ボールをセットした。
これなら転がりにくい。
静かな自分の部屋。
昼間はここで過ごしているけど、夜寝るのはじめてだ。
頑張ろう。
そして僕は、部屋の電気を消した。
パチン……
暗い……
凄く暗くて、何も見えない。
僕は手探りで布団を探した。
寒い12月の夜、あったかい布団の中に忍び込んだ。
なんだ、意外と大したことないな。
お父さんお母さんがそばにいなくても、そんなに怖くない。
うん、大丈夫。寝れる。
だって風香ちゃんだって、ひとりで寝ているんだから。
今ごろ、寝室では父さんや母さんや弟が寝ているのだろうか?
それは昨日まで僕が寝ていた場所で、
でも今日の僕は、ここでひとりで眠っているのだ。
ガタン……
え?
窓の外で、何か物音がした。
ビクン、と僕の身体は強張り、全身からじんわりと寒気が登ってくる。
ガタ、ガタン……
まただ、風の音だ。
風が吹いて、外で音がしているだけだ。
怖い……
僕は無意識に、お母さんを探した。
でもそばには誰もいなくて、
そうだ僕は、ひとりで寝ているんだ。
怖い。
怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
僕は、怖すぎて、
あたりを見渡しても、誰もいなくて、
なにか悪魔か死神が、忍び寄ってきている気がして、
「うわぁぁぁあぁぁ」
気づいたら、大声で泣いていた。
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタ!!
激しい足音が聞こえてくる。
僕は恐怖のあまり、身動きがとれなかった。
バチンッ!!
部屋の扉が開かれて、眩しい光が部屋を包み込んだ。
「大丈夫!!?」
部屋に飛び込んできた。お父さんとお母さん。
僕はその姿をみて、ホッとして、安心して。
「うわぁぁああん!! お父さん! お母さん!!」
さらに涙が溢れてきた。
「よく頑張ったね、怖かったね、大丈夫、もう大丈夫よっ」
お母さんが、あったかい身体で僕を抱きしめてくれて。
お父さんは何も言わずに、僕の頭を撫でてくれて。
「ううっ、うううっ……」
僕は、わんわんと泣いた。
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