サンタクロースの確かめかた

スイーツ阿修羅

作戦会議

今日はクリスマス・イブ。


 サンタさんが、子どもの僕に、プレゼントを持ってきてくれる日。


 楽しみだなぁ。

 僕はサンタさんに手紙で頼んだんだ。

 初めての自転車が欲しいって。

 学校の皆は、みんな自分の自転車を持っていて、

 僕もついに、自分の自転車が手に入るんだ。


「ねぇ、サンタさんって本当にいると思う?」


 え?

 急に風香ふうかちゃんに話しかけられて、僕はドキっとした。


「いるんじゃないかな」


「ふぅん……」


 風香ちゃんは、何か考えるように口を噤んだ。


「見たことがないのに、いると思うの?」


「え……?」


 風香ちゃんの追及に、僕は言葉が詰まった。


「たしかに僕も、見たことがないけど……」


「そうでしょう!」


 風香ちゃんがぱぁぁと笑顔になって、大声で頷いた。


「私さ! 思いついちゃったの! サンタさんがいるかどうか確かめる方法を!」


 風香ちゃんは満面の笑みでそう言った。


「え? 本当に?」


「うん! 私の作戦はカンペキ!」


 風香ちゃんは、ドンッと自分の胸を叩いた。


「ねぇ、知りたい??」


 そしてニヤニヤ悪巧みをする顔で、僕の目を覗き込んでくる。


「う、うん」


 サンタさんがいるかどうか確かめる。

 それは僕には、なんだかイケナイ事のような気がした。


「じゃ、教えてあげる!

 まずは寝る前に、自分の部屋のドアを閉めたときに、ドアの前に小さなボールを置いておくの!」


「え?」


「つまり! サンタさんがドアが開けた時に、ボールが押されて動くようにするの!

 そうすれば朝起きた時に、たしかめられるでしょ?

 もしボールが動いていたら、サンタさんが入ってきたってコト。

 もしボールが動いてなかったら、サンタさんは入って来なかったってコト」


「な、なるほど……」


 僕は風香ちゃんの方法に関心していた。

 確かにそうすれば、サンタさんが部屋に入ってきたか分かる。


「で、でもさ。他の人がドアを開けたらどうするの?

 たとえば弟とか、お母さんやお父さんが間違えて入ってきたら……」


「それは……」


 風香ちゃんは眉をひそめて考えこんだ。


「家族みんなにお願いする。『今夜は部屋に入らないで』って。

 私の作戦を説明したら、みんな協力してくれると思う!」


「なるほど、確かに」


「でしょう!」


 風香ちゃんが得意げに鼻を鳴らした。

 たしかに風香ちゃんの作戦は完璧だ。

 でも、僕は……


「で、でも僕は、ひとりで寝たことがないんだ。

 ……いつもお父さんお母さんと一緒に寝てるから……」


 恥ずかしくて顔が熱くなりながら、僕はそう言った。


「ふうん……そっか」


 風香ちゃんは、少し寂しそうに、


「じゃあ私だけで、たしかめてみるね!」


 そう言った。


「ぼ、ぼ……」


 僕は自分が恥ずかしくて、


「ぼ、ぼくもやる」


 大人な風香ちゃんが、カッコよくて、


「ひとりで寝てみる! 一緒にやる!」


 勇気を出して、そう言った。


 目の前の風香ちゃんは、パッと無邪気に笑って、


「ありがとう、一緒にやろうっ!」


 そう言って拳を突き出した。

 僕は、ドキドキと心臓を暴れされながら、

 コツンと、風香ちゃんの拳に拳を合わせた。


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