第2話 千条家の生き残り
目が覚めれば、白い部屋の中に俺はいた。
ベットの上に寝かされている。
「やっと起きたか……」
声が聞こえてくる。寝起きだからか、目がボヤけて周りが見渡しにくい。
「ここだよここ。」
見つけた。かなりの大男だ
「ここは……」
俺がそう聞くと、その人はその言葉を待っていたように答えた。
「治安部さ。日本の要の。」
「え?」
治安部……そう、日本を魔神から守る国の特殊戦闘部隊だ。それより、俺はなぜここにいる?
「君、二週間以上寝てるから流石に驚いた。死んでるかと思った。」
「あ、あぁ……」
まともに声が出ない。というか俺、そんなに意識なかったんだ……
「あの日、君が倒した魔神、あれ七大魔神の一柱なんだ。」
「は?」
俺が倒した魔神……?
……そんな強い魔神を俺が倒した……?
そうだ、思い出した!俺は芽衣と帰っている途中に襲われて……
その瞬間、俺は嫌な想像をしてしまった。
芽衣はあの時腹に一撃を喰らった。
もしかして……
「芽衣は!?」
「え?」
「俺と一緒にいた、芽衣は!?!?!?」
「…」
何故黙っている
「まだ…分からない…」
「は?…なにがだよ」
「生死をさまよっている」
「嘘…だろ…」
なんで芽衣が…どうして…
許さねぇ……!
「安心しろ、必ず生きさせてみせる」
「……お前、だれだ」
「治安部長の
「え?」
よく顔を見たら、あの祭器だった。
「あぁ、お前か」
「怒りで目上の人に敬語すら使えないか。」
「まあいい、君が倒したのは七大魔神の一柱、闘神だ。」
「……?」
馬鹿馬鹿しい。俺みたいなガキが闘神を倒せるわけが無い。
「信じられないのも無理は無い。まず、七大魔神の全柱の名前はしっているな?」
「当たり前だ。強さ順に…魔神、天神、鬼神、雷神、風神、女神、で…闘神。」
「そうだ。俺が駆けつけた時、君は闘神を目の前にしていた。その闘神は胸に大きく穴が空いている。」
「それがどうした?」
「俺が付き添ってることには、理由がある。」
「は?理由?」
「ああ、君に言わなければいけないことがある。」
「なんだよそれ」
そういうと、治安部長が険しい顔になった。
「申し訳ないが、結論から言うと、君には治安部に入ってもらう。強制だ。」
「え……?」
何言ってんだこいつ、俺みたいななんも出来ない運動音痴が治安部に入る?
「順を追って説明する。」
そう言いながら祭器が指さしたのは俺の頬だった。
「鏡で自分を見てみろ」
祭器は手鏡を俺に渡してきた
「うわっ!」
心の底から声が出た。ノコギリ刃のような痕が、頬にある。
「これって…」
「そうだ、知っていると思うが、これは千条家の記し。」
千条家。それは古から魔神を倒すための正義の力を授かっている一族だ。まあ、俺の苗字は山田。しかも千条家は数年前に滅んだから、多分有り得ない。
「俺、山田。」
「それは知っている。」
頭が回らない。話にいまいち追いつけていない
「千条家の血を引いている、ということだ。」
「え?でも、そんな訳が…」
「この頬の痕で分かる。メイクで作れる精度じゃないからな。」
俺はベッドから起き上がった。
「痛くないのか?」
「いや、全く。」
近くにあった水道で顔を洗った。どんだけ擦っても、痕はとれない。
「……」
芽衣を守れ、と、じいちゃんはあの日遺言に残した。
「消えないだろ?」
「ああ。」
じいちゃんは俺が千条家ということを知っていたのか?それにじいちゃんは、未来が見えていたのか?
「話を戻すが、治安部に入ってもらう。良いか?」
分からないだらけだ。けど、治安部に入ればそれがなにか分かる気がする。
「ああ、当たり前だ。」
「え?本当に大丈夫なのか?」
じいちゃんの伝えたい事は分かってる。けど、何故そう言ったのかは、分からない。
「芽衣は……、俺が守る。」
「ふっ、青春だな。」
じいちゃんが守れと言った理由を知る為にも、治安部に入って俺はこれから戦う。
じいちゃんの遺言が「あの子を守れ」だった きじたろう @kizitarou
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