じいちゃんの遺言が「あの子を守れ」だった
きじたろう
第1話 じいちゃんの遺言
あの日はとても暑い日だった。
「あの子を守れるのはお前だけだ。だから精一杯戦え。そして守りきるんだ。頼む、これが俺からの最後のお願いだ。」
じいちゃんはその言葉を最後に翌日、俺が七歳の頃に死んだ。
“あの子”とは、「姫野芽衣」のことで、昔からの幼馴染だ。
芽衣は別に魔神に襲われやすい体質でもないのに、
なにをどう守るんだ?
というか、なんで俺が?
国家組織の治安部が助けてくれたって良いじゃないか。と、そう思ったりしてたんだけど、俺の中にある何かが否定していた。
それはじいちゃんが俺に治安部に入れと、訴えているようだった。
俺の両親は6歳の頃、何者かに殺された。今も犯人は捕まっていない。それに何故、どの武器で殺されたのかも、未だに分かっていない。
身内を全員失った俺は、施設に入った。
あの日から10年が経ち、17歳になった。
俺はそこそこ頭の良い学校に行った。
勉強は嫌いだし、提出物は全くださなかったけど、受験一年前から勉強した。俺はやるときはやる、から。
高校一年目が終わり、春になると冬の寒さは消え、真夏並みの暖かさになった。
最近、いや、数年前から身体が変な感じがするんだ。
怪我とかの違和感じゃなくて、全く痛くない。
首から右腕にかけて、ゾッとする感じが。
何も関係ないと思っていたけど、五十メートル8秒台だった中3の頃、高一になって6秒前半まで上がった。それが関係あるのか分からないけど、運動音痴な俺がそこまで上がるなんておかしい。
俺は帰宅途中ぼーっと考えていた
「どうしたの?」
そう問いかけてきたのは、じいちゃんの言ってた、姫野芽衣だった。
「あ……いや、なんでも」
「最近なんかおかしいよ?」
やっぱりな。と感じた。授業中とかまともに話聞けないし、好きな…いや、幼馴染の前でもぼーっとしてしまう。
「何かあったなら言ってね。心配だから」
「うん。ありがとう」
芽衣は優しい。俺にだけじゃない。芽衣の友達、芽衣の男友達にまで優しい。
だから…ちょっと嫌だ。男と話してんのが。
ダァァァァン…
「ハッハッハ……やっと見つけたぜ…姫野芽衣」
「だれ……?」
芽衣がそう聞くと、そいつはすぐに答えた
「分かんねぇのか?魔神だよ魔神。アンタら人間が大嫌いな魔人様さ。」
「魔神……?」
え……魔神?
「まさかこんなド田舎にいるなんてな……探すの大変だったぜ」
煉獄の目…2メートルは軽々超える身長……
…本当に魔神なのか!?なぜここにいる!?
しかも喋れる魔神……災害級の魔神だ……
これはまずい……
「お、千条家の生き残りじゃねぇか。俺って運良いんだなぁ」
何言ってんだこいつ…とにかく芽衣を…
「逃げろ!!芽衣!」
「え…でも…龍二は…」
「俺は良いから、早く!」
事の展開が早すぎて頭が追いつかない
「逃がさねぇよ」
ドンッ!
その地響きと共に「魔神」が空に舞った。
「死ね。俺らの邪魔者」
「嫌…助け……」
芽衣は逃げる余裕もなく、芽衣の腹に後ろから魔神の右腕が腹に入る
「芽衣ぃぃぃぃぃぃぃ!」
俺は無我夢中に叫び続けていた。
それだけ覚えてる。
──────────────────
気づけば、俺は上裸で突っ立っていた。
目の前には魔神が血だらけで倒れている。
俺の息は荒く、全身が燃えるような熱さだ。
タタッ
音が聞こえる
タタタッ
足
タタタタタッ
足音……
「お前ら!大丈夫か!」
人がいる。
背中に
治安部…か?助けに来てくれたのか?
(そうだ、芽衣は…どこに…)
辺りを見渡すと、田舎の路上の街灯の下で、横になっている芽衣がいた。
「芽……衣……!」
声が出ない、足も動かない。
段々と立っていられなくなる。
目が霞むと、俺は足を崩して地面に這いつくばった。
「大丈夫か君!」
「俺より芽衣を…!」
「お前…頬のノコギリ刃模様の痕…もしかして……」
芽衣が生きているかは分からないけど生きている気がする。いや、気じゃだめだ、生きてる絶対に……!魔神…アイツら一族絶対許さねぇ!
その日、俺は神に誓った
アイツらには芽衣に、指一本触れさせない…と。
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