とある男の胸騒ぎ
@wzlwhjix444
第1話
私は、あるメーカーの中小企業に勤めるごく普通の? サラリーマンです。
結婚をし、妻と四歳になる娘と、中古で買ったマンションで慎ましやかに暮らしている。
ごく普通のと申しましたが、私には何か、昔から不思議な能力があり、
というのも、子供の頃から何か危険な目に遭う前に何かしら、体の不調が生じるのです。
例えば、小学生の時、同級生と下校後、日課のように遊んでいた公園で、その日だけは、何故か急に激しい頭痛がして、直接帰宅することにしたのです。
そしたら偶然にもその時間、公園で遊んでいた同級生数人が、変質者に脅され、路地に連れ込まれて、いたずらをされた事件が起こったのです。
成人してから、忘れられないのは、
3.11の東日本大震災の時も、激しい腹痛で会社を休んだおかげで、帰宅難民にならずにすんだ。
そんな出来事は、今の今まで枚挙にいとまがない。
そして、その、何とも言えない、予知的な能力は、体の変調以外、もやもやとした表現できない不安とか恐怖みたいなものに襲われるときもあります。
だから、いつもの、通勤ルートでそれが起こると、わざと遠回りすることもあり、それによりあのへんな感覚がすっと消えるのです。
おそらく、いつものルートで通勤すると何か身の危険にあったのではないかと思うのです。
だから、自分は、それを信じて、行動することが頻繁にあり、隠そうにも隠すことが出来ず日常生活を送っている為、勤め先で、自分が突然会社を休むと、天変地異が起こるのではないかとか、取引先に同行するだけで、一緒に行く仲間たちに不安がられてしまい、まるで、災いの元凶のように思われ、浮いた存在になっています。
もし、お前が会社を突然辞めたら、うちの会社、潰れてしまうんじゃないかともいわれ、正直、いづらいのも確かだが、辞めるにも辞められないのが現実です。
ですが、早々、頻繁に起こることでもなく、しばらく、そんな症状も出ず、安心していた矢先。
また、あの、症状が発症したんです。
いつもの通勤途中、例の、訳の分からない不安と、胃痛と頭痛が突然おこり、ルートを変更しようと、他の道に向かっても、全く収まらず、会社どころではないと思った自分は、上司に連絡し、有休をとることにした。
無論、上司は、お前がそうだとみんなが不安になるんだと、嫌味を言われたが、自分は、ただ、申し訳ありませんと平謝りする以外ありませんでした。
家に帰ると、妻は驚き、
「いったいどうしたの?」
と心配顔で出迎えてくれた。
「ごめん、またいつものやつがはじまって」
と、申し訳なさげにいうと、
「いいのよ、あなたが無事ならば」
と、優しい言葉をかけてくれた。妻も自分のことを知っていて、全て理解してくれている。
「出先で、列車事故とかないかしら」と、テレビをつけ、「あの子が保育園のお休みの日でよかった~」
と、愛娘を心配し肩をなでおろしていた。
娘も、「今日はパパと一緒におうちで、遊べるね」
と喜びはしゃいでいた。
そんな家族を見て安心したのか、家に帰るなり激しかった痛みや、不安が全くなくなった。
今からでも、会社に行けるような気がしたが、数々の出来事を振り返ると、やはり行くことをためらわずにいられなかった。
「で、いまの体調はどうなの?」
と妻は私に聞いた。
「うん、全然大丈夫だよ」
と、言うと妻は、
「家にいて大丈夫なら、地震とかは来ないかもね」
と、チャカすように笑った。
自分も複雑な心境になったが、なにか、外で、他人が犠牲になるような出来事だけは、起こらないで欲しいと心から願った。
次の日の朝。
「昨日は、テレビとか、ネットのニュース見てたけど何にも起こらなかったわ」
と、妻が眠たい目をこすりながらつぶやいた。
「それならそれに越したことはないよ」
と、俺は言ってみたものの、不謹慎な考えだが、何故なにも起こらなかったのかと不思議に感じた。
もしかして、過敏性腸症候群のような症状で、会社に行くのが嫌になってるのではないかと疑ったり、逆に、会社に行って昨日、何も起こらなかったと、みんなが、不安がらないでくれるかもしれないという期待とか、ついに、その能力みたいなものがなくなってしまったのではないかと、いろいろ思考を巡らし、頭の中が混乱していた。
思った通り、会社に行くなり、
「昨日は、特に事件や事故とかなかったじゃねえか、お前マジでズル休みしたんだろ?」
と、上司や、同僚から、からかわれたが、皆の顔が心なしか、ホッとしているように見えた。
が、しかし、残念ながらあの、自分の不調はやはり本物だった。
行きつけの食堂でランチをしていた時、食堂のテレビに、母子殺害の強盗事件が報じられていた。
事件は、宅配便を装い、
それは昨日、自分が、例の症状で会社を休み、家にいた時、誤配だと追い返した宅配業者の男と全く同じ顔だった。
もし、自分が家にいなかったら……
そう考えたら身震いがした。
「おい、どうした? 顔が真っ青だぞ」
一緒にランチをしていた同僚が自分に向かっていった。
「いや、午後の会議を考えてたら、緊張しちゃって」
と、取り繕うように笑った。
この胸騒ぎは、本当だ、でも……
もうこのまま、みんなの為にも、秘密にしようとバクバクの心臓がそう言ってるような気がした。
完
とある男の胸騒ぎ @wzlwhjix444
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