第18話 八尺様


 双葉と幽、双方の刀を躱しながら八尺様は進み続ける。


 しかし、仮に2人を振り切って前に進んでも、必ず元の場所に戻ってくる。


「ぽぽぽ・・・!」


「!痛いッ!」


 ついに私が邪魔だと気付いたのか、その場に放り投げ、というか叩き付け、応戦体制を取った。


 叩き付けられた場所を押さえながら見上げると、八尺様が私の方を鋭く睨みつけていた。


 と、さっと幽が二者の間に入り、左の掌を私の方に向けた。


「あれ・・・」


 気が付けば、学校の廊下に座り込んでいた。


 窓から指す夕日が朱く、影すら消してしまっている。


「なんで・・・ここに・・・?」


「おや、美玖様。お困りのようですね?」


 声のした方を見ると、そこには何故か佐川さんが。


 しかもこれまた何故か制服をセーラー服を着ている。


 こころなしかいつもより若く見えるような・・・?


「・・・あ、そうか、佐川さん、人間じゃなかったね」


「えぇ。お忘れだったようですが」


 私に手を差し出しながら、にっこりと佐川さん。


「それより、双葉様たちと一緒にいたようですが」


「そうそう、さっきまで路地にいたと思ってたんだけど、急にここに・・・」


「そもそも美玖様たちがいたのは現実世界ではありませんので」


 私は佐川さんの手を掴み、立ち上がる。


「双葉様の契約者の力で作り出された、ただの虚像です」


「ただの虚像・・・」


 てことは・・・形がない?


「左様です。とは言っても、元の風景を虚像に当てはめているだけなので、簡単に入り込めますが」


 佐川さんがにやりと片頬を上げ、両手で頭を押さえた。


 暫くして手を離すと、ぴょこんと三角形の耳がそこには。


「行ってみますか?」

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祓除少女 華野 香 @yuki-graruda

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