第17話 四者四様2


 違和感の中心に行ってみても、そこには誰も居なかった。


 明らかに双葉の契約者が解放されたのに、その姿が見当たらない。


 どうやら本当にらしい。


「あの野郎・・・何があったか知らんが、ただじゃ済まさんぞ・・・」


 その場の塀に背中を預け、腕を組んだ。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 私を小脇に抱えたまま、八尺様は走り続ける。


 もうかれこれ20分はこのままだ。


 いつの間にか後続の双葉も見えなくなってしまっていた。


「はい、お疲れさん」


 このまま何処に連れていかれるのかと、少し心配になったところで、前方に何故か双葉が立っていた。


 しかも、労う言葉をかけてくる。


 しかし八尺様は気にすることなく、そのまま双葉の横を走り抜ける。


 そのまま暫く走ると。


「はい、お疲れさん」


 先程とデジャブの光景に立ち会った。


 八尺様はずっと直進しているはずなので、正面から双葉が現れることはあり得ない。


「はい、お疲れさん」


 3回目でようやく異常に気が付いたようだった。


 通り過ぎて少ししたところで急停止、方向転換。


 双葉に向けて突進を始めた。


 双葉はにやりと笑うと、右手を一薙ぎ。


 いつの間にかその手には刀が握られ、八尺様は剣先をギリギリで止まり、回避していた。


「ぽぽぽ・・・!」


 とても不服そうな声を出す。


「・・・」


 双葉は依然黙ったままだ。


 しかしその口角は少し吊り上がっており、いつもの朗らかな雰囲気ではなく、異様なそれを漂わせている。


「・・・予想外だ」


 やがて、ゆっくり口を開く。


「全くもって予想外だ」


 そう言えば口調も違う気がする。


 こういう場面で性格が変わるのだろうか?


「どうよ、双葉、言った通りだろう!?」


 八尺様はハッとすると、踵を返して逃げようとする。


 しかし。


「止まれ」


 こちらには剣先を向けた幽が。


「邪魔をするなよ、原井家のご子息」


「こっちのセリフだ、夕崎双葉」


 双方が刀を構え、睨んだ。

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