第16話 四者四様


 すぐには判らなかった。


 小脇に抱えられ、顔面に少々の風を感じ、そこでようやく理解した。


「え?何!?どうなってんの!?」


 私の声が、伸びて響く。


 シュッと、私の横を何かが通り過ぎた。


 どうやらそれはお札が張られた小石のようで、投げたのは後方から追う双葉のようだった。


「妖態解放!」


 後方で双葉が叫ぶ。


 風のせいじゃない、少し寒気がした。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 咄嗟にお札を張った石を投げたのは、苦肉の策だった。


 当たらないことは想定済みだったが、その後の対策も考えてはいる。


「妖態解放!」


 叫んで、前方を睨みつける。


 この辺り一帯を、飛ばす。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「・・・来たか」


 どうやら待ち伏せが成功したようだ。


「妖態解放・・・」


 少し先の道を指さし、八咫烏を呼び・・・


「!?」


 出てこない。


 しかも、何やら嫌な感覚もする気が。


 まるで、ここら一体が急に異界にような・・・


 ここまで考えて、ハッとした。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 どうやら、双葉の契約者が解放されたらしい。


 その余波は神社まで届いている。


「少し見てくる。すぐに戻る」


 参拝客の相手をしていた哲司に一言声をかけると、双葉の元へと急いだ。

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