第15話 思わぬ展開


「確か・・・この辺り・・・」


 キョロキョロと辺りに視線を配りながら、足を止めた。


 そこは先日双葉と一緒に(別に時空にて)来た場所で、少し見覚えのある風景が広がっている。


「それで、確かこっちに・・・」


 八尺様が走っていった方向、つまり、山の方へ足を向ける。


「それで・・・そうだ、この辺りで見失ったんだ」


 足を止め、周囲を見回す。


 何の変哲もない、ただの住宅地。


 特に変わった様子もない。


 無駄足だったかな、とは思いつつも、取り敢えず、被害の出た夕方まで待ってみることにした。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「で、結局何も起きなかったわけだ」


 辺りは夕日ですっかり朱色に染まり、カラスも自分の存在感を示しながら家路を急いでいる。


 私の帰りの遅さを心配した双葉と合流して、近くの公園で2人、並んで座っていた。


「仕方ないでしょ。初めての仕事なんだから」


 言い、缶コーヒーを口元で傾ける。


 双葉は笑いながら言う。


「でも、そういう風に必死になってるのを見ると、微笑ましいな。僕にはそういうの、全然なかったから」


「そうなの?」


「うん。大体こうなってるな、とか、こうしたらどうなるな、っていうのが昔から判っちゃうからさ。何事も手探りっていうのは、全然」


「ふぅん・・・」


 言って、コーヒーを飲み干す。


「じゃあさ、この間の八尺様との追いかけっこも、これからどうすれば八尺様を封じられるのかも、全部判ってるの?」


「追いかけっこは完全にとは言えないけど、ある程度の予想はしてたよ。恐らく、何らかの方法で逃げるだろうな、とは思ってたし・・・あぁ、でも、これからのこの展開は予想外」


 私の視線を公園の外に促す。


 その通り従うと、そこには。


 少し興奮した様子の八尺様が立っていて。


 その右手には何やら棒状のものが握られていて。


 風が吹いて開けた、長い前髪からは赤紅の目が覗いていて。


 ヤバいと思った瞬間、一気に距離を詰められていた。


 双葉が何か行動を起こそうとしたものの少し遅く。


 八尺様は私を左脇に抱えると、物凄いスピードで駆け出した。

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