Chapter:3
夕焼けの強い光が深い青に染まった海を明るい色に変える。
そんな美しさ満点の橋の上で、嫌な事でもあったのだろうか、ひとりの少女が風景に合わない顔でとぼとぼと橋の上を渡っていった。
そう、彼女の名はアスカ。
アスカは何とも複雑な気持ちを紛らわそうと、夕焼け空を見上げる。
「今後の学校生活、大丈夫かなぁ……」
そうつぶやいた時には、もう遅かったのかもしれない。
この国の学校生活の苦労さを知ったとき、アスカ・ファーヴァイアンは絶望を目にしたかのようにへたり込んでしまうのであった。
妙な異変を感じ始めたのは、この時からだった。
「
……。
教師の声が教室に響き渡り、廊下まで達したところで他のクラスの騒音に搔き消されてしまう。
辺りの静けさに不思議と背筋が寒くなった。
寒さを紛らわすため、机に肘をつきながら、広がる空を見ようと窓の外に視線を向ける。
そこで見た景色に、心を癒されるとはちっぽけも思わなかった。
灰色の何とも言えない空。
それに同化したような薄暗い雲。
風にかき混ぜられ大きく揺れる木々。
寒気は徐々にエスカレートしていった。
希少な肌のためか、体は氷に包まれたように冷たくなり、顔は血の気が引き青ざめ、残りわずかの暖かな春風を喰い荒らすように奪っていった。
異変はそれだけじゃない。
とてつもない貧乏だけれど、その苦しさを乗り越えながらも愛し合えた大切な家族、ファーヴァイアン一家。
その思い出を忘れたかのように……耳にしっくりと通ったその名前に「あの名は貴方でしょう?」と、心の中から悪魔の囁きが聞こえてくる。
悪魔の囁きは自分自身の不安からできてる、って聞いたことがあるけど……。
誰かにとっては自分の助けになっていることなのかもしれないけれど、私にとっては 逆効果。
この冷血な発想が私の胸の奥深くに潜んでいる……って考えると、どうしても自分が許せなくなる。
不安と怒りと驚き……そんなたくさんの感情が混じった時に、ふっと頭の中にある電球が灯ったかのようにひらめいた。
お母様の……苗字?
「
二回目に呼ばれた名前がじわぁと胸に広がった。
私……ホントにお母様の娘になっちゃった!?
家族が……変わっちゃった……?
いつの間にか私の表情は、大切な何かをごっそりと盗られたような……そんな絶望を味わった顔をして原形が
イヤだ。
例えお母様………領主様だからって、ファーヴァイアン一家は大事な家族。
世界でたったひとつの家族。
勝手に変えられたくない……‼
「せんせッ」
思い切って椅子から立ち、手を上げる。
「あぁすまんすまん。この名簿は6組滞在の生徒だったわい」
おーい!!!!!!!!!
先生のうっかりミスに耐え切れず、手を上げた位置から急激に降下。
ドーォォオン‼
鐘が間近で鳴ったかのような急降下グーパンチに、一気に生徒たちの視線が私に集まる。
…………ん?
視線が向いている位置が………ちょっと違う?
よく見てみると、私の顔を見ている者と、私の顔より少し下の位置に視線を向けている者で別れていた。
その疑問と同時に感じた足上からの重みに、皆の視線の先……机に視線を向ける。
「うぁぁぁああ?!!!!」
すぐさま席から離れ、さっきの爆音グーパンチに負けないくらいの大声で叫ぶ。
私の瞳に映ったのは、真っ二つに割れ、原形が付かなくなり、破片がボロボロと崩れ落ちる机であった。
ちょいちょい私………怪力過ぎでは!?
これはやっちゃったどころではないけど……でもそれより私の怪力急降下グーパンチの方が気になるぅぅう……っ!
まあ、この事件は前代未聞過ぎて学校側が色々いじって何とかしてくれるっしょ。
他の生徒も夢を見ているんだ、みたいな感じで頭がフリーズしてるから……
ギリギリセーフ――――――…って、ん?
そうなると私……。
他の人間の名をお母様のお名前と勘違いし、そしてお母様が過ちを犯したと勝手に
判断をしてしまった……!?
またもやお母様に大変なご無礼を‼
あぁ申し訳ございません、申し訳ございません……。
今この場で土下座をかましたいけれど、残念ながらその分のスペースが無くて……。
ま、そんくらいは許してちょ☆
「全生徒、一旦解散‼廊下に移動するように!」
野太いうっかり先生の声に、戸惑う生徒達がちらちらとこちらを見てくる。
私も何とかその集団に紛れ込んで廊下に……LET'S G O !
「そこの君‼君は後で校長室に来てもらう」
……え。
あっれ?おかしいなぁ。
校長室って、悪ガキが親と校長とで三者面談……みたいなのするとこだった気が。
特に大やらかしをした奴だけ。
だから悪いことはしないようにって、今朝お母様に言われたばっかなんだけどなぁ。
アスカ・ファーヴァイアン、入学2日目にて校長室に、 LET'S …… GO‼
どうも異世界から越してきました。 仮面の兎 @Serena_0015
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