第6話「病院」
そして間もなく、学校に救急車が到着した。彼女の病状が、精神的なものであれ、物理的なものであれ、学校の保健室では対応しきれない状況だ。救急車が着くと、彼女はストレッチャーに乗せられ、病院へと連れていかれた。
私はもちろん同行できなかったが、彼女は、ずっと小さな声で、数を数えていた。私は、それを聞いていて、彼女の状況が何となくわかった気がした。
その後、私はいつも通り登校した。しかし、登校すると、私は寮母さんに声を掛けられた。
寮母:「ねえ真紀ちゃん、昨日、咲希ちゃんに、何か変わったことはあった?」
七瀬:「いや、特に変なことはありませんでした。ただ、昨日は少し、早く寝ていましたよ。」
寮母:「そうね。咲希ちゃん、なんであんなことになったのか、原因が不明なんですって。」
七瀬:「ちなみに今、高坂さんはどんな状態何ですか?」
寮母:「それがね、今、まだ詳しくはわかっていないんだけど、どうも、脳の中のいろんな感覚器からの信号をまとめているところが、うまく働いていないらしいよ。だから今、咲希ちゃんは、ほとんどの感覚器が不能になっているんですって。」
七瀬:「そうなんですね・・・。」
寮母:「あとね、これは伝えていいかわからないんだけど、咲希ちゃん、病院で、ずっと何かのジェスチャーをしているみたいよ。ほら、こんな感じで・・・」
寮母さんはそう言って、私にそのジェスチャーを見せてくれた。簡単なジェスチャーだったから、きっと、電話か何かで聞いたのだろう。
そして、私は、そのジェスチャーを見てピンときた。これは、間違いなく”あれ”を表しているに違いない。私は、急いで寮母さんを追いかけ、そのことを伝えた。それを聞き、寮母さんも”あれ”を表していることに気づいたようで、病院に電話をかけると言っていた。
高坂さんは、ただ感覚器が働いていないだけで、しっかりと意識はあるんだ。彼女の中の”記憶”をもとに、今、彼女は動いている。
高坂さんは、ずっと、小説を書きたいと言っていた。このジェスチャーは、絶対にそれを表しているに違いない。
全感覚器不能の小説家 水町 啾魅 @Syamy-mizumachi
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