ヤギのおじいさんと夢の中
黒星★チーコ
🐐全一話🛏️
森に住むヤギのおじいさんは物知りおじいさん。沢山の本を読むのが大好きです。
たまに本が大好きすぎて、食べちゃったりもするけれど。
でもすごく色んな事を知っていて、森のみんなの相談役なんです。
最近、森のみんなは眠れない子たちが多いみたい。ヤギのおじいさんに相談にきました。
ウサギさんが言います。
「あのね、イヤなゆめをみたの。ハチに追いかけられて怖かったの」
キツネくんが言います。
「ぼくはね、川で溺れそうになったゆめをみたの。すごく怖かったよ」
クマくんが言います。
「すごくステキなお花畑があるのに、とちゅうにガケがあって行けなくて、とても悲しくなったゆめをみたんだ」
ビーバーちゃんが言います。
「おいしいお菓子をもらったのに、どこにしまったのかわからなくて、ずーっとぐるぐる探すゆめだったの。目がまわってこまっちゃった」
ヤギのおじいさんはおヒゲをピーンと伸ばして言いました。
「そうかそうか。じゃあみんなの枕を交換してみたらどうだい?」
「マクラを?」
みんなは不思議に思いましたが、おじいさんの言うとおりに枕を交換してみました。
ウサギさんはクマくんの大きな枕。
クマくんはウサギさんの小さな枕。
キツネくんはビーバーちゃんのちょっと固い木の枕。
ビーバーちゃんはキツネくんのふかふかの葉っぱの枕。
すると不思議に、みんなぐっすり眠れました。
次の日、ウサギさんは嬉しそうに言います。
「ゆめのなかでガケの上をぴょんぴょんって飛んだらね、すっごくステキなお花畑をみつけちゃったの! キレイだったなぁ」
キツネくんもニコニコです。
「ぼくね、お鼻がきくからゆめのなかで、お菓子をニオイで探すゲームをしたんだよ。あっちもこっちもおいしいお菓子だらけだった!」
クマくんはうっとりしています。
「ハチさんを追いかけたら、ハチの巣を見つけるゆめをみたよ。あのハチミツ、とーってもおいしかったなあ~」
ビーバーちゃんはウキウキして言いました。
「すっごくキレイな川で泳ぐゆめをみたわ! とっても気持ちよくって、おうちまで作っちゃった」
ヤギのおじいさんはにこっと笑いました。
「そうかい。じゃあもうみんな、イヤな夢は見ないね」
「うん! ありがとう!」
みんながニコニコ笑顔で帰っていくと、それをこっそりと木の後ろから見つめる大きな影が。
「あれ、トラくん?」
「おじいさん……あのね」
トラくんはモジモジしながらヤギのおじいさんに話しました。
「ボクも、怖いゆめをみたの……オバケがでてくるんだよ」
「オバケ?」
「うん、うらめしや~ってさけんで追いかけてくるの……」
恥ずかしそうにするトラくん。
「でもボク、からだが大きいのに『オバケがこわい』ってみんなの前で言えなくて……」
「いいんだよ。そうだ! ワシの枕とトラくんの枕を交換してみようか」
「えっ! いいの?」
「本の枕だから、ちょっと固いけど、いいかな?」
「うん! ボクのマクラも石のマクラだからかたいよ!」
こうしてトラくんとヤギのおじいさんは枕を交換しました。
その日の夜、トラくんは夢を見ました。
「わぁー!! 本がいっぱいだ!」
足元から頭の上までの高い本棚に、赤・青・白・茶色……と色んな本がいっぱい詰まっています。トラくんはその中から黄色い本を取り出して読んでみました。
「うふふふ! この本、おもしろいなぁ!」
トラくんは朝まで楽しい本を読む夢を見て、ぐっすり眠りました。
ヤギのおじいさんはどうなったでしょう。
おじいさんは寝る前に、石の枕の下にエンピツと紙を入れておきました。そして眠ると夢の中にオバケが現れます。
「うらめしや~!」
「おやおや、出たね。何がうらめしいのかな?」
「えっ」
おじいさんは紙とエンピツを取り出します。
「メモをするから、何がイヤなのか教えておくれ」
「……えっと……さいしょはね、ふつうに『ねえねえ』って言ってたの。でもみんな、オバケだー! ってにげちゃうの」
「ふむふむ」
「だからなんだか、かなしくなって、ムカムカして、さけぶようになっちゃった」
「そうかぁ。それは大変だったね」
おじいさんはオバケの言ったことをメモに書くと、それをくしゃくしゃと丸めてお口にポイッ。
「あっ?」
「もぐもぐ……うーん! オバケちゃんのうらめしやは、なんて美味しいんだ!」
「おいしいの?」
「とっても美味しいよ! 他にもイヤなことがあったら教えておくれ。どんどん食べちゃうからね」
「えっとね! こないだトラくんに声をかけたの。そしたらトラくんがこわがってね……」
オバケはイヤだったことを沢山、たーくさん話しました。おじいさんはそれもぜんぶメモにして、もぐもぐと食べました。
「もうイヤなことはないかい?」
「うん! おじいさんありがとう!」
「またイヤなことがあったら、そのときはワシの夢に出てきておくれ」
ヤギのおじいさんは、オバケとバイバイしました。オバケはにっこりしていつまでも手を振っていました。
そして次の日の朝。
「うーん! いい夢だったなぁ」
ヤギのおじいさんは、物知りおじいさん。色んなことを知っています。
中には本に書いていないことも知ってるんです。オバケのお話とかも、ね。
ヤギのおじいさんと夢の中 黒星★チーコ @krbsc-k
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