第10話 旅は続く
闇雲に斬りかかってくるかと思ったが、それはしない。わたしの実力を察する程度には、この
それなら実力者には礼を尽くし、わたしの剣技をお見せすべきだろう。
確かにこの細く薄い刀身で、あの
右手で剣を握って、刀身を右肩に担ぐ。左手で手招きして、
ズン!
真に地面を揺さぶるような一撃だった。そして、わたしは剣を一閃する。
わたしの顔や
振り抜いたはずの
わたしは剣をイリヤに返して、地面に落ちた
「あんたたちの
予想外の事態に棒立ちの
戦意をなくして逃げようとする野盗は、猟師の弓矢で射殺された。わたしが3人を斬り捨てて、村人の手で更に3人の野盗が殺された。もしかしたら逃げた者もいるかも知れないが、死体泥棒の件を証言することはできないだろう。
頃合いを見て、
「司祭様も村長もオドさん夫婦も、みんなイリヤに感謝してたんだよ。ちゃんとお礼を受け取るのも、礼儀じゃないの?」
提示してくれたお礼を断って、旅の保存食になる燻製肉とチーズを少しもらっただけ。
「サクヤにもさ、他人から尊敬される父親の姿をしっかり見せておくべきだよ」
「人間を一度、仮死状態にしてから元通りにできる保障なんてありません。今回はただ運が良かっただけです」
ちらりとわたしの方を見て、そして吐き捨てるようにイリヤは言った。
「エルザさんが本当に死んでしまっても、村をお家騒動からは切り離すことだけはできる・・・そう考えてました」
「それは、エルザさんも納得してくれたことだからさ」
「どうでもいいことですから」
「ところで、誰が父親なんですか」
あ、やっと気付いたか。
「サクヤはわたしの娘で、イリヤはわたしの婿なんだから、サクヤの父親はイリヤだよ」
「あれはオドさん夫婦宅に宿を取るための方便だったじゃないですか」
「教会の司祭様にも、そう言っちゃったからさ。教会独自の連絡網とやらで、広がるんじゃないかな」
「え?」
「これからの旅で教会のお世話になるなら、話を合わせないといけないよね。あ、そうそう。イリヤの故郷の教会に伝わるかも知れないね」
「僕みたいな生っ白いのは、女戦士の一族の長に相応しくないんでしょう」
イリヤは、いつになく大声であげて否定する。ちょっと悲鳴っぽいところはカワイイ感じだ。まあ、関係ないけど。
長に一番必要な素養を持ってるのは、本人は気付いてないし。
-終わり-
人狼に狙われた村~女戦士、放浪の薬師を拾う~ 星羽昴 @subaru_binarystar
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