格
修練場は、一見して闘技場のようであった。天井はなく、戦いの場は塀で隔てられている。塀の外側は階段状の観客席のようになっていて、先ほどまで酒場にいた冒険者たちがそっくりそのまま移動して来ていた。今か今かと開戦に浮き立っている者もいれば、対戦者の体格差に心配を覗かせるものもいるし、エディスタに唆されたからと言うわけでもないだろうが賭けに興じる者もいる。
「エイグリッド君、頑張ってー!」
「コルゼバなんぞやっちまえ!」
「あんまやりすぎんなよー!」
「張った張った! もうすぐ締め切るよー!」
場内中央で相対する二人、エイグリッドとコルゼバに投げかけられるのは、エイグリッドへの応援五割、コルゼバへの野次三割、試験そのものへの野次二割、と言ったところであった。
自分への応援がほぼないこと、大剣を構えている自分に対して素手のエイグリッドに、コルゼバの怒りは頂点に達しようとしていた。
「おい、そんなに死にてえのか? 今ならまだ、バラバラにした上であの女の無様な姿を見せるだけですませてやるが?」
「……あの女?」
エイグリッドの声が低くなる。その反応に気をよくしたのか、コルゼバの舌が回転する。
「ああ、よっぽど大事そうだな? へへ、どんなよがり方をするんだ? ああ、楽しみだよ。組み伏せて、ひいひい言わせるのが楽しみだぜ」
「出来るんですか、あなたに?」
「うっせえ、調子が悪かっただけだ! へ、ズタボロのお前の命を助ける代わりに、身体を差し出させてやらあ。お前は這いつくばってそれを眺めることになるんだよ!」
「…………」
二人の会話はやや遠く、歓声もあって届かない。だがそれも常人相手であって、ギルドマスターたる力量を持つエディスタ、そしてリナディエーサには筒抜けであった。
エイグリッドへの不快な物言いに今にも鞘走らせそうなリナディエーサに、酒瓶を抱いて隣に座っているエディスタは「どうどう」と抑えに回っていた。
「落ち着いて下さいな。殿方の戦いに乱入しては、メンツが丸潰れになりますからね?」
「分かってる。終わってから切り捨てるから」
「まあ怖い。一応、冷静なようで何よりです。ですが……」
リナディエーサはその呟きを聞いているのかいないのか、修練場中心の二人を注視していた。だからエディスタの「あなたの分、残りますかねー」という呟きはその場の空気にただ掻き消されていった。
修練場中央にアルンが進み出て、大声を張った。
「それではこれより、疾風ランク昇格試験を始めます! 一、これは適正な技量か確認する場である事! 一、戦意を喪失した者を攻撃しない事! 一、殺害は禁止! 両名、相違ないですか!?」
「うっかりやっちまった場合は?」
「状況によりペナルティ! 場合によっては法で裁かれますので、注意されたし!」
「生きてりゃいいって事だな。せいぜい避けろよ、去勢されないようにな!」
コルゼバは大剣を抜くと、下から切り上げるような動作でからかって見せた。
「彼女にお別れは済ませて来たか? 残念だな、最後に味わう暇がなくて!」
やたら饒舌なコルゼバに対して、エイグリッドの表情は冷めていくばかりであった。が、ふと口元を緩めて笑った。
「……こちらも準備しますね」
「ああ?」
エイグリッドの右手に銀色の杖が出現した。それはリナディエーサと再会した時に手にしていた物だった。
かつん、と杖の先端が地面に触れる。
そうして、エイグリッドは口元とは違って全く笑っていない目をコルゼバに向けた。
「手加減しようかと思いましたが、気が変わりました」
「てめえ……!」
コルゼバは激昂しただけだったが、アルンは後ずさった。開戦の合図をしようとしたからだったが、エイグリッドの雰囲気に当てられて逃げ出した、が正しい。
(やっべ。こいつ、怒らせたらダメな奴だ)
自分がその対象となる前に知れて良かった、とアルンは胸を撫で下ろしつつ更に後ろに下がり、腕を振り上げて下ろした。
「始め!」
「うおおおおおっ! 旋風連斬!」
アルンの合図が終わらぬ内に、コルゼバが吠えた。幾重もの剣撃が衝撃となって飛び、エイグリッドに襲いかかる。それらは直進し、あるいは弧を描いて周囲から迫る。
「
エイグリッドが口ずさんだのは、全周を覆う、初歩の防御魔法であった。
「はっ、防げるわけねえだろっ! おらおらぁっ!」
嘲笑を乗せ、コルゼバは更にその場で剣を振い続ける。それらは更なる衝撃を生み出し続け、エイグリッドは土煙に包まれていく。
「おっといけねえ。やりすぎたか?」
エイグリッドが完全に見えなくなって、コルゼバは思い出したように剣を下ろした。息など乱れてはいない。風が土煙を打ち消していくのを、観客は固唾を飲んで見守った。
「……終わりですか?」
声が響き、防御魔法の中心に佇むエイグリッドが見えると、観客が「わっ」と湧き立つ。
コルゼバはこめかみに青筋を立て、改めて大剣を肩に担いだ。
「どんなイカサマだ? そんなもんで、俺の剣を防げるわけがねえ」
「イカサマと思うなら、見抜けばいいのでは?」
防御魔法を張ったままのエイグリッドに、返事の代わりに鋭い踏み込みとともに刃が振るわれた。大上段のそれは防御魔法と火花を散らし――エイグリッドへと沈み込んでいく。
「へえ」
「こいつは魔力破壊属性を持つ魔法使い殺しの魔剣! 死ねえええっ!」
「試験って覚えてます?」
「はっ、不慮の事故ってな!」
「僕が本物ならそうなったかも知れませんね」
「なにっ!?」
エイグリッドの姿が、ふっ、と消えた。同時に防御魔法も消失し、勢い余ってたたらを踏むコルゼバ。
「なっ、どこに……!?」
「上だ!」
観客の誰かが指さして叫んだ。
コルゼバが慌てて振りあおぐと、空にエイグリッドの姿があった。
「集え奏でよ。
彼の周囲に浮かぶのは十本の光の剣だった。
「降り注げ」
命に従い、次々と射出される剣。頭を抑えられているというのに、コルゼバの自信は崩れない。
「はっ、魔力破壊だっつったろ! 通じるかよ!」
最初の一本を打ち払う。それはコルゼバの予想では砕かれ霧散するはずだった。
「なにっ!?」
払ったそれは何事もなかったかのように再度切先をコルゼバに向け直すと、最初以上の勢いで向かってくる。
「こいつ……! 魔力で出来ているわけじゃ、ない!?」
一本目をよけると、また方向転換で襲い掛かってくる。それを横目に、避けた二本目は地面に突き刺さると爆発した。
「ぐおっ!?」
運良く爆発の範囲外だったが、そこからも次々と襲いくる光の剣。それを、エイグリッドは静かに指示するのみだ。
それを眺めやりながら、酒瓶の蓋を開けるエディスタ。瓶の口から酒の玉が漂い出てくる。エディスタの酒操作魔法だ。ぱくん、とそれを頬張って飲み下すと、満足そうに唇を舐める。
「見た事ない魔法ですね。精霊を介しているから、魔力破壊が通じない、という訳ですね。弾いたら加速して死角から再度襲い、避けたら爆発。えげつない。それを初見で回避し続けるコルゼバさんも大したもので……あれで性格が伴っていれば、ねえ」
酒気と共に吐き出した溜め息は悩ましくも、なまめかしい。
エディスタの評通り、コルゼバは頭上と死角からの剣を、見かけによらない俊敏さでいなしていた。最初に弾いた剣も避け、ついに全てを自爆に追い込んでいた。
「ぺっ。畜生、遊びやがって……!」
埃まみれになりつつ、忌々しく吐き出すコルゼバ。剣圧をエイグリッドに向かって飛ばすものの、宙を滑るような動きで回避されて届かない。翻るローブの裾すら嘲笑っているようで、さらにコルゼバの神経を逆撫でする。
「降りてこい、畜生! 卑怯だと思わねえのか!」
苦し紛れの抗議に、空中で肩をすくめるエイグリッド。彼はコルゼバと距離を維持しながら、修練場へと降り立った。
「はっ、のこのこと! ぶった斬ってやらあ!」
最初からそうだが、殺意を改めてむき出しにするコルゼバ。それに対してエイグリッドは、差し出した左の手のひらを上に向けて、手招きしてみせた。
「……! 舐めんなあーーっ!」
が、エイグリッドは挑発したわけではなかった。そう見える自覚はあったが、手招いたのは別の存在である。
「
「ぐうっ!?」
駆け出そうとしていたコルゼバの下半身を、地面から立ち上った石壁が捕まえた。
「
今度は、エイグリッドの手のひらの上に水の玉が現れる。その大きさは、コルゼバをすっぽりと覆えそうな大きさだった。そうと察したコルゼバが、ぎょっとする。大剣の柄で石壁を砕こうにもびくともしない。怒りは去り、焦燥が大半を占め、それを声にしようとする。
「待て、よせっ……!」
続きは水によって堰き止められた。予想通り水の玉がコルゼバを包み込んだのだ。命の危機にコルゼバは大剣を振り回すが、虚しく水をかき混ぜるだけだ。魔力破壊は作用しない。大半は単なる純水で、それを操るのはエイグリッドが従える水の精霊である。精霊は魔力ではなく精霊力で構成されているため、その前ではコルゼバの剣はただの大剣でしかないのだ。
「ぶはっ! ち、ちく……! ごべっ!?」
顔を覗かせたと思ったらまた地上で溺れるコルゼバ。本当に溺れそうになる前に、エイグリッドが息継ぎをさせたのだ。そうして、また溺れさせ、また息継ぎさせる。
「はあっ、はぁっ! ちょっ、ちょっと待て……!」
二度。
「はっ、お、おい……!」
三度。
「や、やめ……」
四度。
「るら、ゆ、ゆる……」
五度。
その度にコルゼバが弱々しくなって行く。
アルンがそろりとエイグリッドに近寄り、恐々と声をかける。
「……おい、エイグリッド。ちーっとばかし、やりすぎじゃねえか?」
「どうでしょうね」
「いや、お前が怒ってるのは分かるんだけどな?」
「……まあ、それもありますが」
確かにそれもある。
エイグリッドは周りの気配を探った。そうして、期待通りの結果となった事に満足していた。
観客席の大半を埋めているのはもはや熱気ではなく、畏怖であった。小さく震えている者もあり、口を開けたまま呆然としている者もいる。
(悪いけど、宣伝材料になってもらうよ。リンの側に誰がいるか)
リナディエーサにエイグリッドあり。
そう誇示し、不埒な輩を遠ざける。
(リンと側にいるためなら、僕は……何と言われようが、構わない)
「ゆ、ゆるし……あ、あやまる、あやまるから……! こ、この通りだ……!」
「……あのコルゼバから謝罪を引き出すとはね」
エイグリッドの所業に鳥肌を立てながら観客席で呟いたのは、丁度居合わせたザフィーであった。
彼女はコルゼバに長年悩まされて来たが、こんな切実な状況は見たことがなかった。
彼女を始め、大勢はこう思った。
「こいつを怒らせてはいけない」
と。
エイグリッドは、ちらり、とアルンを見た。そこに了承を覗き見て、アルンは咳払いをして手を挙げた。
「試験官の戦意喪失を確認! 疾風ランクを認めます!」
その声に、この戦いがランク昇格試験だったと思い出した者も多かった。まばらに拍手が上がる。と同時に、エイグリッドは魔法を解除した。コルゼバの周りの水が力を失って地面に水溜まりとなり、拘束していた石壁が地面に戻っていく。コルゼバは九死に一生を得た、とばかりに荒く息を繰り返し、ぬかるんだ地面に脱力した。
「エイク!」
決着に喜ぶ声が駆け寄って来た。観客席を隔てる塀を飛び越え、エイグリッドに抱きつくリナディエーサ。
「凄かった、格好良かった! さすが賢者様だね! こう、きらきらしたり、水とか土とか!」
「ありがとう」
手で形を示してみせるリナディエーサに、ほっとした様子のエイグリッド。彼の懸念はただ一つ、リナディエーサに己の所業をどう取られるか、ということだった。彼女から脅威を遠ざけたい一心だったが、彼女自身を遠ざけてしまう事もあり得たと今更ながらに気づき、やはり頭に血が昇って冷静ではなかったのだな、と反省した。
(君は僕を賢者と言うけれど。僕をこうして照らしてくれる君は、まさに勇者様だよ)
その称号を決して喜びはしないだろうから、言葉に出すことはない。けれど、権威付けの為の箔ではなく、人を救う心根を持つ存在を本来はそう呼ぶのだと、エイグリッドは思う。
「……ぐ」
そんな二人の様子に全身を震わせていたのは、一方的に敗北した形となったコルゼバであった。恥辱に塗れ、ぬかるみに沈んだ自分と違い、異才を放たんばかりに眩い二人。未だ握ったままの大剣がひどく重い。
それは魔がさしたという表現が相応しかった。
――勝者は背中を向けている。
そうと気づいた瞬間、誰の視線もエイグリッドに集まっている事を確認し、そっと腕を振り上げた。そうして投擲された凶刃は、真っ直ぐエイグリッドの背中を襲う。
(取った!)
コルゼバの内心を歪んだ喜びが満たす。
が、それは一瞬で消え去った。エイグリッドへと向かっていた大剣が背中に刺さる直前で空中に静止し、くるりと反転すると自分へと向いたのだ。
次いで、溜め息が聞こえるとその主、エイグリッドがコルゼバを振り向く。やれやれ、彼の瞳がそう物語っていた。
「何のつもりでしょうか」
それでも礼儀を欠かさないエイグリッド。激昂されるよりも余程恐ろしい。ようやく、コルゼバはそれを悟った。悟らざるを得なかった。
「う、く」
呻くコルゼバと宙に縫い止められた大剣に、何が行われたか察したリナディエーサは、とうとう剣を抜き放った。その鞘走りの様は流麗で、それだけで熟練を想像させた。
「リン、抑えて」
「でも、エイク」
「用心はしてたから。だから、水を通じて剣に操作の魔法をこめていたんだし」
「な、どうして。魔力破壊属性があるのに……!」
「刃にはね。柄の部分はそうじゃないでしょう?」
「……!?」
エイグリッドの指摘に息を飲むコルゼバ。その代わりに一つ思いついた事があり、それを持ち出した。
「……いつの間に、空中に逃げてやがった?」
「修練場に入る前ですね。修練場に入ったのは、魔法で作ったハリボテです」
あらかじめ、幼なじみだけにはそれを告げておいた。だからリナディエーサは全く心配していなかったのだ。
「……は。俺はそんな最初からコケにされていたってわけかよ」
「おいエイグリッド。そんなのありなのかよ?」
呆れたようなアルンに、エイグリッドは澄まして答えた。
「試験開始時に、『本体で試験に臨むこと』と言われていればそうしていました」
「いや、言うわけねえだろ、そんな事! ずる賢いにもほどがあるわ!」
「魔法使いは知力勝負なので」
「エイク、頭いい」
リナディエーサは感心しきりだ。そこに、よたよたとした足取りでギルドマスターエディスタがやってくる。
膝をついたコルゼバの近くに寄ると、酒瓶を肩に担いで見せた。
「勝負あり、ですね、コルゼバさん。あなたは最初から最後まで、エイグリッドさんの手のひらの上だったという訳です。元裂海ランクの凄み、少しは骨身に染みましたか?」
「れっ……!?」
初耳の事実に、コルゼバが驚愕で顔を歪めた。
まさか、それを全身で表現してエイグリッドを見つめる。彼本人は澄ましたままだが、なぜか隣のリナディエーサが得意げな表情だった。
「……そんな馬鹿な。こんな、ひょろっちいのが……いや、そうか……だから、か……」
がくり、とコルゼバは観念したように頭を落とした。その言葉を聞いて、リナディエーサの眉と剣先が、ぴくり、と持ち上がるが当のエイグリッドが何も言わないので、それ以上のアクションは控えた。
だが、コルゼバはそんなことに構っていられなかった。
最初に張った障壁が初歩の魔法だったのにもかかわらず、それに見合わない強度であったのは、術者の力量に比例していたからだろう。
それだけではない。初めて会った時からして、只者ではなかった。
威嚇にも一切動じず、いざ立ち会ってみれば緊張などまるでなく、最後まで警戒を怠らず老獪に振る舞い、そして――どこまでも礼儀正しくあった。
それらの事実が否応なくコルゼバを打ちのめし、心を折った。
「これが格の違いってやつかよ……」
思わず零れた呟きに、エディスタは美酒を含んだように笑い、エイグリッドを振り返る。
「エイグリッドさん。試験終了後のコルゼバさんの振る舞いについてはわたしが預かりますね。それでどうでしょうか? お連れさんも」
「はい、お願いします」
「……むー」
素直に頷き、大剣にかかっていた魔法を解除するエイグリッド。大剣は地面に突き刺さる。
リナディエーサは不服そうだったが、エイグリッドが了承したので渋々、抜き身の剣をしまった。代わりに、物騒な発言を投げかけた。
「今度何かしたら、半分にしちゃうから」
何を、とは恐ろしくその場の誰も、エイグリッドも聞けなかった。
「ご納得頂けて何よりです。ではアルンさん、後はよろしくお願いしますね」
「了解です」
わざとらしい敬礼をギルドマスターに返したアルンは、試験の終了を宣告し、観客に引き上げるように指示をする。そうして、エイグリッドとリナディエーサを連れて修練場から出て行こうとする。
と、そこでエイグリッドは歩みを止め、振り返らずにコルゼバに語りかけた。
「僕には剣の事は分かりませんが、とても真っ直ぐな切り込みだったと思います。さぞかし努力なさったのでしょうね」
それ以上は言わず、幼なじみと寄り添い、エイグリッドはその場を後にした。
観客たちも去り残されたのは、膝をついたままのコルゼバと突き立つ大剣、そしてエディスタ。
一転、静けさを取り戻した修練場。
エディスタは大剣を片手で軽々と抜き取ると、その刃をしげしげと眺めやった。
「褒められましたねー」
それに答える声はない。嗚咽が響くだけだ。
「あなたもいいお年です。エイグリッドさんが何故ああ言ったか、察しは付きますよね?」
それでも、コルゼバは言葉を紡げない。こぼれ落ちるものを堪えきれず、ただ身体を震わせる。
拳がぬかるみとなった地面に叩きつけられるも、べちゃり、と言う音が鳴るだけだ。その頼りなさがまるで自分を表しているようで、現状に追い討ちをかけた。
「……ちくしょう。なんで、今更。ちくしょう……!」
「……今更って事はないから、でしょうねえ。エイグリッドさんにも色々あったでしょうし」
我が身を振り返っているのか、エディスタは空を仰いで、ほろ苦い何かを口元に浮かべていた。
「何に拗ねているのか聞きませんし、懺悔なされば、とも言いません。ですが……なんらかの取っ掛かりもなれば良いですね」
それに対する返答は、僅かな身じろぎだけであった。彼女は構わず続ける。
「何にせよ、しばらくあなたはギルド預かりとなります。大人しくなさって下さいね」
「…………」
その沈黙は否定か肯定か。コルゼバ自身にも分からず、歪んだ視界に思考を沈めるだけであった。
聖女な勇者と賢者な魔王は幼なじみ 緋色 @scharlach
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