最終話

待ち合わせの世界的ハンバーガーチェーン店。


その目立つ黄色いMの字を見つけ、アクルは入る。


 入ってすぐに店員のお姉さんにチーズバーガーとコーラを注文して、エルハの座っている席の前の席に座る。


「よう、そっちはどうだった」

「ノルイ君は死んじゃった」

「ん、そうか。ところでお前ニャって語尾やめたのか?」

「やめたニャ」

「やめてねーじゃんか」

「なれないニ――頑張ってならすよ」

「似合っているからやめなきゃいいのに、お前の性格どおりだろお前の口癖」

「まあ、どうしても直せなかったら戻す。別に好きじゃないけど嫌いなわけじゃないし、振られたからって髪切る人もそのうちロングにするでしょ」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」


2人の間に流れる沈黙沈黙を壊したのは、店員の注文が出来上がったと言う報告だった。


「取りに行って来る」

 そして、チーズバーガーとコーラをプレートに乗せ、また席に戻るアクル。

「・・・・・・なあ、エルハ」

「何?」

「心中しねーか」

「お断り」


 少しの迷いもなく答えるエルハ。

「ノルイ君に『自由に生きろ』って言われているから誘いには乗らない」

「そっか、お前が生きるなら俺もとりあえず生きてみるわ」


ふーんと言いながら、ラテをストローで飲むエルハ。


「そういやお前これからどうすんだ」

「タイとかに行って性転換手術する。ノルイ君のためにやってなかったけどもう死んだことだし」

「俺は日本にでも行こうと思ってる。忍者にも結局会えてねーからな」


「じゃあ、お別れだね」

「そうだな。地球は広い。二度と会うこともないだろうな。今だから言うがお前に俺は惚れていたぜ。サイコパスとも思っていたけどな」

「そう。私はアクルのことはただの共犯者程度にしか思ってなかった。後、それが告白のつもりなら、丁重にお断りさせてもらう」

「ん、そうか。告白失敗」

「もう少しアクルは素直に言ったほうがいい。サイコパスなんてつけて、成功するわけがない」


 そう言うとエルハは残ったフィッシュバーガーを2口で食べ、ラテを飲みきる。


「じゃあ、もうそろそろ行く。RAN号はアクルにあげる。私は適当にそこらへんで稼いで旅するから」

「元気でやれよ」

「アクルもね」

「・・・・・・最後にニャって付けてくれ。ちょっと心残りだ」

「女々しいニャね。潔く生きたらどうニャ? ニャ」


 そうしてエルハは立ち上がり店を出た。

 店の中にいたアクルは、その後、店が閉まるまでその席に座ってなにか、考え事をしていたが、店の営業が終わったらさすがに追い出された。


「・・・・・・いくか」

アクルはRAN号に乗って街を出た。


物語は終わる。

人生は続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サイボーグ青年とミュータント男の娘の、どうにもならない煉獄アメリカ旅行記~腐れなかった金属は狂った神経に夢を見る 嘘宮ヨフカシ @hirunoyohukasi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画