『雪が舞ったので冬の話』
小田舵木
『雪が舞ったので冬の話』
先程、買い出しに出かけた。すると、道中、雪がちらついた。
最近は無駄に暖かく、冬が消えたのかと思い込んでいたが、ついに冬はやってきた。
私は冬が好きで嫌いである。阿呆みたいな事を言っているが、素直な感想だ。
私は冬の透き通ってツンとした空気が好きだ、また冬の味覚の
だが、うつを患う私にとって冬は大敵なのである。日照量が減ると、うつの病状はひ酷くなる。冬季うつというヤツだ。
ああ。困ったものである。日本には四季があり。年に一度、ワンクールは冬と付き合わなくてはならない。
私は冬になる度に複雑な気持ちになる。外の透き通ってツンとした空気を吸い込みながら、憂鬱な気分になるのである。
今。私はボチボチ働き始めて。少しは気分が上向いて来たところだが。
これから日照量は減る。すると脳みそは回転を止め始める。
多分、シナプスの間隙のスパイクも減る。
憂鬱だ。さっきスーパーで買ってきた蜜柑をモグモグしながら考える。
甘くて酸っぱい果汁が口に広がる。私は蜜柑が好きだ。手が黄色くなるくらいには食べる。冬の少ない楽しみのひとつである。
冬。私にとってアンビバレンスな季節。楽しみもあれば、憂鬱もある。
いっそ。南方に移住してしまいたい気分もあるが。そんな資金は私の手元にない。
とりもあえず、冬と付き合って行く他ないのである。
◆
私はいろんな地方に移り住んだが。九州北部の冬はそれなりの寒さだ。
日本海に面しているせいもあるかも知れない。
一方で。関西地方の冬(京都除く)は案外楽なものだった。
これは緯度を考えるとよく分かる。大阪は宮崎くらいの緯度にあるし、内陸気味である。まあ、京都の冬は底冷えが酷かったが。
関東北部の冬は酷いものだった。
北関東の平野部ではからっ風というモノが吹き荒び。
容赦なく手を乾燥させてくる。男なのに乾燥で皮膚のひび割れを起こしたのはあの土地の冬だけだ。
また。私は2月の北海道に降り立った事もある。
北海道まで行くと。寒さは冗談みたいな域に突入する。寒いのではなくて痛い。
ブーツで雪を踏みしめながら、融雪剤が撒かれた札幌の街を歩いたのはいい思い出だ。
そう言えば、中国地方に住んでいたこともあるが。
そこでの冬は記憶にない。2年は住んでいたのだが。
その頃の私はうつの症状が出始めており。冬にやられっぱなしで。記憶をする余裕すらなかったのかも知れない。
◆
冬になると。妙に食べ物が美味いのはなんでだろう?
体温維持の為に余計なカロリーを消費するからであろうか?
暖かいシチューが頭を過ぎる。牛乳のコクがたまらないのだ。
また。おでんも良い。出汁が染みた具材たち。案外地方でネタが変わってくるのも面白い。ちくわぶなんて関東人しか食わねえって。
私は。冬が苦手な割には冬の楽しみも知っている。
だが、日照量が減るのはいただけない。
それさえなければ。私は冬をエンジョイ出来るはずなのに。
◆
私は毎年秋口にメンタルを崩す。気温の低下と共にやられるのだ。
半袖を箪笥にしまった瞬間、頭がめちゃくちゃになるのを感じる。
下手をすれば。そのまま、春までメンタルが沈みっぱなしという事もある。
仕事をしていれば。年末に向けて忙しくなるから、更にメンタルはやられていく。
日本の四季は美しいと誰かは言ったが。
私にとっては毎年気分が沈むサイクルでしかない。
何度も言うが困ったものである。
まあ?楽しみがない訳でもないが。それに増して気分の変調には困る。
◆
今、家にいる私は。平日に溜めてしまった洗濯物を乾かしにベランダに出たが。
雪はちらつくレベルから、しんしんと降るレベルに悪化していた。
雪。
どことなく文学的な香りがするのは気のせいなのか、川端康成のせいなのか。
街を白く染め上げる雪は。ロマンチック…なんて。30代のデブのおっさんが何を考えているのだか。
だが、子どもの頃と一緒で、妙にワクワクしてしまうのは、私が子どもだからだろか。
街が凍ってしまうような錯覚。私はそんな妄想をしてしまう。
かつて地球は。氷河期にあって。全ては凍り尽くしていたはずで。
私はそんな地球を歩く妄想をしてみて。
すべてが停止した世界を楽しむ。私以外、凍り尽くしているのだ…
それは。うつの世界に少し似ているような気がする。
うつになると。世界は色を失って。ロクに人と喋れなくなって。
世界が凍り尽くしているのと変わらない…なんて想像が過ぎるだろうか?
私の持つ冬への苦手感はそういう理由もあるかも知れないな。
◆
洗濯物を部屋干しして。
私は今年初めて暖房を点けて。
エアコンから出る暖かい風を浴びながら、この文章を書いている。
冬に家に篭もって文章を書く。まるでヨーロッパの文人のようだ。
だが、生み出される文章は相変わらず拙い。テーマはしっかり決まったが、文章が横に逸れた感がある。
ま。これは冬で調子が悪いと言うことで一つ。
『雪が舞ったので冬の話』 小田舵木 @odakajiki
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