御参り

燐紫

大○山○○堂

見られていた

小さい頃から


毎年ここに来るたび、より奥に 奥に

行きたくなる


山道で揺れる車内。

変わらない景色


これもどれもいつもと同じ。


「なにしてるの」


母が聞く。ミラーで言わずともわかっているだろうに。


「スマホ」


淡々と返す。母の質問はいつも同じ

だけど、私の返答は年を重ねる毎に変わる。


12月にしては暖かすぎるこの日に、今年も

”御参り”に来た。



カチッ

車のエンジンが止まる。


ここから先は道が狭すぎる上に 、参道なため歩くしかない。

いつもと同じ。


針葉樹林に囲まれていて、葉擦れが聞こえる。

門をくぐると、少し気温が下がり、

空気が張り詰める気がする。


コツコツコツコツコツコツ

母が特別祈祷の手続きをしている間に先に

432段もある階段を上る。

階段は急ではなく緩やかなものだ。


この神社は結構有名な神社らしくて、ネットの評価も星が4.5もある。

いわゆるパワースポットなんだそうだ。

なら、毎年来ている私になにか特別な気でも

積もっているのだろうか。



でも、私にとったら

毎年来る神社であり

それ以上でもそれ以下でもない。



途中にいくつか小さい祠があるのだが、

そのうちの一つに

暖かいから分からないでもないが、半袖で薄いワンピースを着ている中学生ほどの少女が視界に入った。


目をとめたのは、見覚えがある気がしたからだ。


しかし、すぐにそんなのは気のせいだと感じた。


髪の毛の一部が少しはねているが、綺麗な茶色の髪で、目元にはきついアイラインがひいてあった。



神社とアンマッチな少女は熱心に手を合わせて、お祈りをしているようだ。


なにかつぶやいている


こちらを一瞬見た気がした。。


変では無い。 変では無いが、少し胸騒ぎがして、どこか逃げるように私は階段を上った。


少女は笑っていた。



サラサラサラサラ


山の中にあるので、境内の横には川が流れていえる。


ある石が重力に逆らうようにバランスをとっていて


あれに乗ったらどうなるだろう


強く強く惹かれて、向かって行っ


ドン


痛い。何も無いのに転んでしまった。

また、川の近くには柵があった。自分の腰ほどなので、行けないことはな


「なにしているの」


ははだ。


「なんでもない」


石は変わらずそこにいた。


階段を登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。登る。



はぁはぁはぁはぁ

祈祷の場所をすぎてしまったようだ。


あまりにも夢中で登っていて、わかれ道を間違えてしまったようだ。


ガサガサ ピー

先程は聞こえなかった、鳥の詩も聞こえる。



戻るか


パシャ


50代程で全身が真っ黒な人がこちらにカメラを向けて立っていた。


このおじさんは肖像権を知らないのだろうか。


上も下も漆黒に包まれているような、

口元だけがみえた


不健康そうなすこし黒っぽい唇がぐにゃりと歪んだ。


そして、


急いで戻った。


そこに

ははは いた

「なにしているの」


「なんでもない」


とにかく早く祈祷を終わらして帰りたかった。

元々ここには私も来たくなかったのだ。


姉の横に座る。


「遅かったね。」


遅くはないだろう。予定された時間よりも5分も早いのだ。


「もう、はじまるよ」


シャナリ シャンシャン


すずの音と共に


特別祈祷


が始まった。


特別祈祷

後ろにいる熱心な信者の人の視線を受けながら、儀式は進んでいく。


沢山のお坊さんが前を向いて、よく分からないことを言いながら書物をバーと広げている。


とても読んでいるようみは見えないが読んでいるらしい。


誰もが一糸乱れぬ動きをしていて、気味が悪い。


自分は別に熱心な信者でもないから、いつも木目を眺めたりしている。


ドンドンドンドンドンドンドンドン

太鼓の音がうるさい。


いつもと同じだ。


そんな私を見て、姉は

くすくす

と笑う。


いつもこれを聞いていると、自分が自分で無くなるような気持ちがする。

胸が苦しくなり逃げたくなる。



お姉ちゃんは、私より4歳も年上なのに背は私よりも小さい。


繝ウ縺ォ繧?i縺九?蜊礼┌髦ソ蠑・髯?莉繝ウ縺ォ繧?i縺九?蜊礼┌髦ソ蠑・髯?莉繝ウ縺ォ繧?i縺九


視線が刺さるようだ。



やっと儀式が終わった。


「本日はありがとう………」


何か言っているが聞こえない。


母がいつもと同様に御札を受け取っている。


私はさっさと下山しようと急いだ。


繝ウ縺ォ繧?i縺九?蜊礼┌髦ソ蠑・髯?莉


頭の中に回る。回る。



入口の門まで戻ってきた。


ギュ


手を


掴まれた。


後ろを見ないで、無理やり門をくぐる。


リン


「また来年」

と、少女とも老人とも思えぬ声がした気がした。


「なにをしているの」


母がいた。


なんでもないと答え、私は車に乗った。


いつも通り家に帰った。





来年も来てしまうのだろうか。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

御参り 燐紫 @Rinshi_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ