『冥婚』。ホラーに詳しい方ならば、一度は名前を聞いたことのある単語でしょう。
台湾の都市伝説が特に有名で、道端に落ちている赤い封筒を拾ったら、中に死んだ女性の遺髪が入っている。物陰に隠れていた遺族が出ていて、その場で拾った者は拉致、無理矢理に死んだ女性の夫にされてしまう。
そういう怖い話が主なイメージとなっている冥婚ですが、この作品の中ではそうした暗いテイストは払拭され、とても優しく穏やかな物語が描き出されます。
死んだ後の世界で愛すべき人と出会い、幸せな時間を送る。出会った二人のなんと初々しいこと。読んでいて自然と微笑ましい気持ちになってきます。
作中人物たちの幸せを静かに祈ってあげたくなる、とても素敵な物語です。