第15話 『貴方の本音を聞くまで』

 私は炎を剣に纏い、灯ちゃんに切りかかる。  


 だけどーー


「アルくん」


 灯ちゃんがポツリと呟くと、彼女を守るように魔法陣が展開され、そこから眷族(野獣)が無数に現れた。


 野獣の見た目はサメみたいな見た目。一つ違う点があるとすればそれは空を飛んでいることだけ。


「Bgyaaaaaaaa!!」


「う、うるさ!」


 こ、鼓膜が破れちゃいそうなほどの声量で鳴かないで!! いや、むしろそれが相手の狙いなのかな?


「おわっ!?」


 内心で灯ちゃんの戦術を考えていたけど、一匹のサメが私に突進してくるのが見えた。だから作戦会議は中止! 


 動きは直線的だけど氷魔法を四方八方に撒き散らしてくる。それだけで数段階も脅威度が変わってくる。


「でも、相手が悪かったね!! そりゃ!!」


 私は瞬時に魔法の軌道を読み、炎で強化した剣で、一番厄介そうな尻尾を先に叩き切る。


 たったそれだけのはずだった。


「GAaっ!?」


「嘘っ!?」


 切った箇所から炎が燃え移り、サメを跡形もなく灰にする。


 い、今までBランク級の野獣を一撃で倒し切ることなんてできなかったのに。


 急激な変化に、戸惑いと同時に嬉しさが込み上げてきた。


 だって、優ちゃんと特訓した成果がちゃんと証明できたってことだから!


「ほらほら、早くきて! じゃないと……こっちからいくよ!!」


「Gaーーッ!?」


 少し気分が上がった私は、瞬く間にサメの前に移動して豪快に頭を切り落とす。


 ついでに、先程のサメの頭部を盾にして近づき、もう一体のサメに思いっきり回し蹴りを行い、地面まで叩きつける。


「Gaaーー!!」


「まだまだいくよ!」


「BGakyaaaaa!!」


 仲間が次々と倒されていく姿に焦ったのか、周りのサメたちが一斉に向かってくる。


「そっちが突っ込むなら、こっちも!」


 と勢い任せに突撃する寸前、一斉に向かってきていたサメたちが次々と粉々に砕かれた。


 一瞬の出来事に少し戸惑うけど、そんなことができる人物はこの場では一人しかいない。だから私は彼女に問いかける。


「もう眷属たちはいいの?」


「はい。貴方相手では力不足だと思いますので」


 私の疑問に答えるのは、灯ちゃん。


 正気のない顔色は雪のように白く、目は死んだ魚のように濁っている。


「今更どうでもいいですが、先輩が生きてこの場所にきたということは、私の正義を邪魔するってことで合ってますよね?」

 

 灯ちゃんは胸に手を当てて、問いかける。


 憧れの人に、自分の価値観を否定されたような苦しそうな顔。


「そう、なっちゃうのかな? 自分から言い出しといて、いざその時が訪れると相手の考えを否定しちゃう」 


 だけど、と私は続けて、


「私は苦しそうに正義を語るあなたの事を、救いたいと思った。もう一度、笑って欲しいと思った」


 世界の人々を救えなくたっていい。せめて、自分の大切な人だけでも幸せにしたい。


「これが私の思い。他の誰でもない自分自身の身勝手な願いの為に、貴方の本音を吐き出す為に戦うよ」


  今から始まる死闘は私の決意の表れであり、優ちゃんを救うための試練だと思う。


 魔法少女をたった一人も救うことが出来ないのなら、優ちゃんを救う資格なんてないと思うから。


 


◆◆◆ (あとがき的な?)


 約、四ヶ月間もお待たせしました。Yです。


 本当に申し訳ございません!!! (スーパー言い訳タイム)実は裏でちょくちょく進めてはいたのですが、あぁでもない、こうでもない、と葛藤に葛藤を重ねた結果、自分の書きたいものがわからなくなってしまいました。そこで、一度作品から距離を取ろうと思ったわけです。


 今は少しマシになってきましたが、以前のような投稿頻度に戻すことは出来ないと思います。今後は早くて五日、遅くて一週間の内までに投稿できればと考えております。

 

 文章も、もしかしたら話の流れもおかしくなってしまっているかもしれませんが、こんなめちゃくちゃな作品でも見てくださる方には本当に感謝しています。


 いつもありがとうございます。


(話がクソ変わります)


 第16話「お前のせいだ」


 第16話「炎VS氷」


 次回の話はどっちにするべきか、少し迷っているので二つ書きました。上のお話はこの世界の仕組みに迫る話になってくると思います。ようやくわかる主人公の過去や男の思惑まで、パート分けで書きます。


 下の方はこのまま続きですね。とはいえ、こちらもこちらで、ようやくあのキャラを再登場させることが出来る話なので楽しみなんですよね。


 それでは長くなりましたが、15話、終了になります。

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