第2話 出会い

 今日も彼女に会った。

 二両目の車両で、同じ時刻。

 僕に気付いているくれるだろうか?

<試してみよう>

 僕は、彼女を見て軽く会釈してみた。

 反応なしだった。


 これを毎日繰り返して見ようかと思った。

 何日目のある日、彼女が気付いてくれて会釈を返してくれた。

<やったぁ、気づいてくれた>

 僕は、多分、嫌われてはいないのだろう。

 嫌われていたら、きっと、彼女は、車両をずらすとか乗車する時間をずらすとかするはずだ。

 僕は、彼女に会う時を楽しみ待ち焦がれるようになった。

 

「あのー」と声をかけられた。

 僕は、本屋で立ち読みをしている時だった。

 立ち読みを注意されると思って、ゆっくりと声の方を向いた。

 心臓が止まるかと思った。

 びっくりして変な声が出たかもしれない。

 声の主は、彼女だった。

「地下鉄でよくお会いしていますが、私に用事があるんですか?」

 こんな声をしているんだ。

 聞きやすい高めの声。でも、やさしい声。

 僕は、声にならない声で返事をした。

 気を静めようと、ゆっくりと本を元の位置に戻した。

「私を知っているんですか?」と僕の顔を覗き込んだ。

「いえ、知らないです。でも、前からあなたが気になっていて……。

 話したいなと思っていたのです」

 僕は、声が震えないように、息を吸いしゃべった。

 彼女は、一瞬止まって、「そうなんですかぁ」と言って微笑んだ。

 その仕草が、かわいい。

 これは、僕にくれたモノ。神様からのプレゼントだと思った。

「時間、ありますか?あなたと話たいです」

 僕は、断られてもいいと思い切って行ってみた。

 彼女は、下を向きスマホをいじると、僕に向き直って言った。

「おかしな人、付き合ってあげる」

 僕は、ホント?って頭を掻きながら、店を探した。

 なるべく、静かな話が出来るところを。

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僕のアリス リュウ @ryu_labo

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