僕のアリス

リュウ

第1話 テレパス。

 テレパス。


 心の中で思う事。

 それが通じるテレパシー。


 僕は、いつも通りに先頭から二両目の地下鉄に乗る。

 一両目は、子どもと女性の車両だから、二両目。

 僕は、イヤホンから流れてくる曲を聞き流しながら、一両目を見る。

 何人か乗ってきている。

 三両目を見る。

 学生がチラホラ。

 僕は、前を向く。

 電車の窓に映る自分を見ていた。


 一両目から歩いてきた女が僕の前に座る。

 他の席が空いているのに、僕の前に座る。

 ショーヘア、スタジャン、コンバースのハイバス。

 綺麗なすらっとした脚線。

 座るとすぐに足を組んだ。

 彼女は、決してこちらを見ない。

 スタジャンのポケットからスマホを取り出す。

 きっと、僕は彼女が僕を見ていると思った。

 目はスマホだが、その周りの風景の中に僕が居る。

 僕は、彼女の顔を見る。

 大きな瞳、すーとした鼻筋、唇はぷくっとして、口角は引き締められている。


<こんな彼女がほしい>

 彼女はスマホから目を離し、僕の方をみた。

「何か言いました?」

<彼女に聞こえたのか?>

 声に出していないはずなのに、聞こえた?

 僕は、首を横に振るだけだった。

 彼女は、また、スマホに目を移した。

 もう、誰も乗らないでと思った。


 

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