第107話宇宙の果てを夢見る

 その時、閃光が瞬いた。


 直接迎撃するために僕が魔法によって意識をニライカナイに移して見た宇宙はなるほど、フーさんが求める解放感を存分に感じられた。


 天の光に、流れる閃光。


 ほんの一瞬の間に瞬く光は、そのほとんどが自分を殺しに来ていると思うと、中々だ。


 だが怯むことはない。


 狙いたがわずコロニーに殺到したビーム砲は確かに命中したが、伸ばした手のひらに触れることもできずに四散した。


「おお……すごいな。今のは魔法?」


「結界の魔法だとも。何人たりとも私達に触れることは叶わないさ」


 シュウマツさんの言う通り、ニライカナイには傷一つ存在しない。


 桁外れの存在感を発揮する歴史上最大の巨人に、人類の畏怖の感情がビンビンに伝わって来た。


 ではアナウンス。


『月の皆さん、攻撃は無意味です。様子見の艦隊では制圧は不可能でしょう。当船は、この後木星に出発し、外宇宙を目指します』


 無傷で佇む巨大ロボットを前に、月の戦艦はもう抗う術を持たないはずだった。


 冷静に考えれば、そもそも壊しちゃここに来た意味はないはずなのだし、止まるはずである。


『皆様の選択肢は二つ、引き返すか、我々と共に旅をするか。もちろん引き返す選択をした場合、我々に攻撃の意志はありません。皆様方の心に従い、悔いのない選択を望みます』


 しかし予想に反して、月の艦隊は止まらない。


『猶予は一週間。なお攻撃された場合、私達には自衛の用意があります。では―――賢明なご判断を』


 そう言葉を締め括った上で、第二射が放たれようとしている光景を前にして、僕は追撃の用意を始めた。


「ああ、ダメか。……止まらないなら、もうひと踏ん張りだ」


「ふむ。大丈夫かね? なれないのに力を連発しているが?」


「もちろん。今まで我慢していたんだ。実は魔法も使ってみたかった」


「言えばいいのに。ならば結構だ、限界ならば私も力を貸そう。実は私もロボットに乗ってみたかったんだ」


「そっちこそ、言えばロボットくらい考えたのに」


 星の光から、少しずつ力を分けてもらう魔法がある。


 それはとても強力な攻撃魔法で、異世界でも理論はあったものの地上ではとても使えないと、廃れた魔法だった。


 しかしここは宇宙。存分に使える手札である。


「シュウマツさんの力を借りられるなら、百人力だ。ところで……シュウマツさん、本当の名前があるなら教えてもらってもいいかな?」


「今かね?」


「必殺技は名前を叫ぶものなんだ。せっかくだから名前を貰おうと思ってね」


 笑いかける僕に、シュウマツさんは言った。


「言ったろう? 名前なんてないよ。強いて言うなら君からもらったものが名前だね。確か、週の終わりという意味だったかな?」


「いやいや。僕に未来と希望をくれた、とてもありがたい木の名前だよ」


 グルグルと星が巡っていた。


 その力はいつだってそこら中に降り注いでいる。


 この目で見ているし、あることだって誰だってわかっている。


 だから後は特別な手で束ねればいい。


 一つ一つは些細な光でも、無限を一つに束ねれば、艦隊相手だって十分に焼き払える。


 シュウマツさんが輝きを増してサポートに回り、星の光が両手に集まって行く。


 後は解き放つだけという時には、自分でも恐ろしいほどの力が手のひらの上にあった。


「じゃあやろう。シュウマツの一撃だ」


「……すまない。意味が物騒な方じゃないかね?」


 いや攻撃魔法なら仕方なくない?


 しかし主砲の第二射が始まった瞬間、一撃を解き放つ気でいた僕の耳に、その声は届いた。


『……作戦中止だ。今すぐに攻撃を止めろ』


 たった一言だ。


 しかし月の攻撃はその瞬間、すべて止まった。


「え?」


 どうも敵の砲撃はなくなったみたいだが、手のひらには星の魔法がとんでもない光を放っているのだけれど?


「どうすればいいのこれ!」


 慌てた僕は今度こそ本気でシュウマツさんに助けを求めると、シュウマツさんは叫んだ。


「とりあえず放つしかない!」


「よ、よしきた!」


 僕は思い切り狙いを外して、隕石群に向かって星の魔法を解き放つ。


 集まった光の束が解き放たれて、何も見えなくなること数秒。


 視界が戻ると、外した先にあった小惑星群は切り取られたように姿を消していた。


 少なくとも数百キロ規模を消し飛ばした一撃に、僕はプルリと震えた。


「シュウマツさん……希望の一撃はやっぱり重いね。道が出来たよ」


「……まぁ、敵が敵だったからね。必要だったと思うよ?」


 とりあえず後味の悪い結末を回避して、胸をなでおろした僕は意識を船内に戻す。


「いやぁ……すごい威力だね。驚いたよ」


 するとそこには正気を取り戻したらしいF1が立っていたが、正気を取り戻したというのに様子がおかしいことには変わりなかった。


 いや何というか、まるで別人になったような違和感があって、フーさんと白熊さんさえ困惑している。


「大丈夫もう抵抗はしないよ」


 そんなことを言いながら、F1は僕に視線を戻すと穏やかに微笑んだ。


「すまないね。まさかF1がここまで醜態をさらすとは思わなかった」


「ええっと、ひょっとして……別人ですか?」


 思い付きを口にするのは勇気がいる。


 見当はずれだったら恥ずかしいだけだったが、今回は正解だったようである。


「わかるかい? 失礼。私はカヤという。月で女王をやっている科学者だ。今この子の体を使って話をさせてもらっている。緊急だったから無作法は勘弁してもらいたいところだな」


「……」


 僕は黙り込む。


 真実かどうかわからなかったわけだけれども、傍らのフーさんの顔が青白くなって尋常じゃない脂汗が浮いていた。


 アッこれ本物っぽい。


 曖昧だが大事な事実を確認するため、声は勝手に漏れていた。


「……本物ですか?」


「本物だよ。いやいやすまない。なんだかすごく楽しそうだからいてもたってもいられず声をかけてしまったよ。F1はいわば半分がアンドロイドの様な子でね。どちらかといえばロボットよりなものだから、予想もできない事態に弱いんだ」


 余りにもフレンドリーに月の女王様は軽く笑って、F1の胸の辺りを叩いていたが、結構えげつないことをしているんだろうなと思う。


 魂の色がありつつ、アンドロイドとしての機能も備えている存在を目の当たりにして、シュウマツさんすら驚いていた。


「い、いえいえこちらこそ。僕の解呪が妙な引き金を引いてしまったようで。体の悪いところを直す物だったんですが」


「ふむ……。何をどう定義して悪い物と言っているのかわからないが……F1の機械部品と生態部品は五分五分といったところだ。まぁどちらが悪いのか私には判断できないな」


「……ああうん。ちょっとでも手を加えたりしたら、即死でもおかしくなさそうですね」


 それは悪いことをしてしまったかもしれない。


 だがまぁ僕の頭を撃ったわけだし、それでよしとしておいてもらおう。


「まぁ。それはこちらの問題だ。それよりもだ。君達は今から外の宇宙へ旅立つと言ったね? 本気かな?」


 不意にそんな疑問を投げかけられたが、そこに嘘偽りなどなかった。


「もちろん本気ですよ。希望者を募って、外宇宙に高跳びです」


「うーん、なかなかひどくて、最高に魅力的だ。私も今すぐ便乗して旅立ちたいくらいだね」


「でしょう?」


「ああ。だが残念ながら私はチケットを取り損ねてしまったらしいね。実に残念だ」


 おや? この女王様中々話が分かるのでは?


 僕は少なからずときめいてしまった。


「なんだかべた褒めで、むず痒いですね。本当に褒めて大丈夫ですか?」


「当然だよ。より広く、より高みに進むために人類を新しいステージに引っ張り上げるっていうのは私の最終目標だ。私はその手段に人間を進化させるという方法をとっただけさ」


 なんとなく不本意そうに呟く彼女に僕はフーさんと、そして白熊さんをチラ見して尋ねた。


「それが、フェアリーシリーズなんですか?」


「いいや? そこもまだ通過点さ。進化とは適応だ、その変化は混沌としたものだが有益かそうでないかは我々が取捨選択できるものだ。故に優れた可能性を拾い上げている。脳が拡張した人類。体が強靭な人類。優れた特性を選りすぐり、究極の人類を作り出して、活力を失いつつある人類を我々の手で引き上げる。それが現状で最も優れた進化をした我々の義務である……なんてね」


「なんだか壮大ですね」


「ああ壮大だとも。この先、どうやっても人自身が弱くてはどうしようもないというのが私の結論でね。しかし技術を最大限使っても、きっと私が生きている間には叶わない。でも今君がやろうとしていることは、きっとその先の話なんだよ。再び勢いを取り戻した人類は、星の海を目指すだろう。少なくとも私はいつかそんな姿を見たいから無茶な理屈をこねているのさ。どんなインチキで階段をすっ飛ばしたのか知らないけど、私はうらやましくて仕方がない」


 いやまさに的を射た不満に僕の表情筋も引きつった。


 まさにインチキ以外の何物でもない。それに僕は幸運だっただけだ。


「その通りですね。僕はただの幸運な愚か者です」


「いいさ。幸運も愚か者かどうかも君の行動の結果でしかない。君がどこの誰なのかは知らないが我々は我々で、近い将来君達に追いつくとするよ。楽しみに待っていなさい。首を洗ってとは言わないからさ」


「ははは……楽しみにしていますよ。待ってはいませんけれどね」


 クックックッと人の悪い笑い声を響かせて、僕らは笑う。


 そしてこの女王様は、ずいぶんと気前のいい提案までしてきた。


「私個人としては、君達に協力しよう。今回送った調査隊についても、好きに使うと良い」


「……本当に?」


 僕としては、このまま勝手に希望者を連れて行こうと考えていた手前、公認となると気持ちが楽だ。


 ただしどう考えても裏がありそうな話ではあった。


「もちろん。まぁ言及はしないし、君達の立場が悪くならないようにする程度のものだがね」


「……それって実質何もしないということでは?」


「沈黙は金だよ? その代わりと言っては何だが、定期的に連絡が欲しいものだね」


「いいですよ。何なら連絡先、交換しておきますか?」


「……!」


 僕があっさりと同意すると、F1の表情が普通に崩れてこれは一本とれたらしいと僕はちょっぴり喜んだ。


「ずいぶん簡単に言うんだね? いいのかな?」


「もちろん。というよりも、この後定期的に情報はガンガン地球圏に流すつもりだったので問題ないですよ」


「ガンガン流すのか!?」


「はい。出来る限りは」


 それは当初の予定通りだ。


 受け取る相手は誰でもいい。とにかく送り届けられる範囲で、情報は出し惜しむつもりはなかった。


 それを聞いたカヤは目を見開き、人の悪そうな笑みを浮かべた。


「なるほど……君のやりたいことが分かって来た。ならば精々楽しんで進みなさい。食べられないように気を付けるんだよ? ニンジン君」


「ありがとうございます。でも絶対に食べられないからニンジンの意味があるんですよ?」


「そうだな。そう願おう。ああ、そうそう……私の娘達をよろしく頼む。出来る事ならば私のいけないところまで連れて行ってくれたまえ。ではさらばだ」


 言葉を最後に崩れ落ちたF1は、それ以降動かなくなった。


 僕はいつの間にか強張っていた肩からようやく力を抜いて、息を吐いた。


「ふぅ……」


 予定外の事態は起こったが、これで本当に一区切りだ。


 そして本気で忙しいのはここからである。


 程度の差はあれ、すでに意識を取り戻し、落ち着き始めているお客様達にもう一度状況を説明しなければならない。


 帰りの船も無傷で残せたのは僥倖だった。


 後はこの中から何人ついてきてくれるかだが、そこはすべて自由意志に任せなければいけない。


 そうじゃないと、一週間後には遠く離れた宇宙の彼方である。


 どうなるかなぁと僕は鉢植えを抱え直し、頭を悩ませていると、同じく緊張から解放されたフーさんが困り顔で僕の顔を覗き込んでいた。


「緊張したー。女王様の言葉なんて初めて聞いたよ。それにしても……改めて考えると、カノーってば思い切りすぎだよね。まさか調査に来た艦隊の人員をかすめ取って逃げるって。いいのかなぁ?」


「まぁ、よくはないだろうね」


 あっさりと僕は頷いたが、もちろんよくはない。


 きっと大犯罪だろうし、ここにいる人間の大多数は、帰りたいと言うだろう。


「ボクはかなり心配だ。ホントにいいの? まず間違いなく人類の敵認定だよ?」


 白熊さんの言う通り、そりゃあ軍艦と兵隊を黙っていただき、逃亡すれば普通は怒り心頭に違いなかった。


「面子って案外大事だからね。目の色を変えて追いかけてくると思う……んだけれど、正直チョット期待薄かな? 僕は中々ショックなんだ。まさか解呪が利かない人間がいなかったなんて」


 ただ、ここまで僕らがお膳立てを整えて宇宙の端に招待したと言うのに、純粋な好奇心でここに来た生身の人間が一人もいないと言うのは本当に拍子抜けもいいところだと僕は思う。


 それはいくら僕らが大丈夫だと訴えても、あまりにも危険すぎると大多数の人類が安全を優先した結果なのだろう。


 まぁ当たり前といえば当たり前だった。


 完全に意識がなくなった、唯一解呪で意識が飛ばなかったF1を調べ終わったオペ子さんは、僕に調査結果を報告した。


「F1シリーズはやはりアンドロイドに近い物の様です。おそらくは技術提供はコロニーだと思われます。我々のアンドロイド体と共通点が多数確認できました」


「おう……どこもかしこも複雑なことだね。……じゃあ、ゼロなんだ。みんなは興味ないのかなぁ外宇宙?」


 それは何とも本当に残念だ。


 決してまったく興味がないってことはないと思うのだが、こればかりは今後に期待したいところだった。


「でもまぁ、これからは違うといいね。地球圏の人達はここから僕らを追ってくるんだ。僕らは馬の前にぶら下げられたニンジン役だ」


 月の女王様はよい例えをしてくれたものだと僕は思う。


 僕らは人類の目の前にぶら下げられたニンジンだ。


 それを追うかどうかは、判断は任せるけれど、面子なり好奇心なりどんな理由でもいいから追いかけてきてほしいと僕は思う。


 ハハハと苦笑いするフーさんは、クレイジーだなぁとニンジンを笑った。


「……そのうち食べられちゃわない?」


「食べられないのがニンジンの役目さ」


「でもそこまでして、何か君に得るものはあったのかい?」


 白熊さんの困り顔の質問に僕はぱちくりと目を見開いた。


「そんなに悲しい顔をする必要なんてどこにもないよ? 得るものだらけに決まっているじゃないか」


「そうかな?」


「もちろん! 僕の夢はここからだって言っただろう? 行先はまず木星だ。あの輪っかで写真を撮ってデータを一斉送信してから、役立ちそうな資源を丸っといただいちゃおう。その次は土星、次は天王星でその次は海王星かな? 冥王星にオペ子さんの記念碑を立てて、冥王参上と刻んでいこう」


「賛成です。天才的な発想だと賞賛します」


「……やめようよ、そんなこと惑星規模でやるこっちゃないよ」


 苦笑いを浮かべる白熊さんだがそんなのまだまだ序の口である。


「後は……そう、シュウマツさんの同族を探しに行くって言うのもいいかもしれない」


 そしてもう一つ、重要な要件もあった。


 思い付きのようなものだが、それを聞いて一番驚いていたのは、シュウマツさんだった。


「え? 私の?」


「そう。こうしてさ、形になってみると……可能性を感じない?」


 いや、ぼんやりと思っていたことだが、シュウマツさんの果実を植えても、同じように木にならないというのが気になっていたんだ。


 ひょっとすると僕らは、シュウマツさんのお見合いを成功させるのが使命だったりしないだろうか?


 それは、全ての命の情報を収集するシュウマツさんの生態や、僕らの星に残った痕跡からの類推でしかないのだけれど、あながち間違ってはいないと思っていた。


「こう、知識を集めてどうするんだって話なんだけれどね。僕らの育てた木を他の星に届けて、新しい世界樹を育てるなんて……シュウマツさんにも次の段階があるんじゃないかなってさ。出来るかどうかわからないけれど、試してみるのも面白いと思うんだよ」


 自分で言っていて、言いつくろったような世迷言に聞こえるかなとも思ったが。


 シュウマツさんは、その本体ごと未だかつてないほど盛大に輝き始めていた。


「シュ、シュウマツさん? 大丈夫? あくまで可能性の話だからね?」


「お、おお……ナイスだよ。素晴らしい。絶賛の言葉が見つからない。……今はっきりとわかった。私は君に出会えてよかったのだと」


「よせやい。照れるじゃないか」


 まだ相手も見つからないうちに喜ばれるのも不安になるけれど、道標の一つとしてはいいと思う。


 何せ宇宙が広いことなんて、ずっと昔からみんなが知っていることなんだ。


 ここから先はどんどんやることを思いついていかないと、あっという間に迷子になってしまいそうである。


「じゃあ、まず十年以内に銀河脱出を目標にしよう。さて地球人類はニンジンに食らいついてこれるかな?」


「……どうかな?」


「来そうな気がするけど……すぐには無理かな?」


 正直どうなるかなんて誰にも分からない。


 だが出来る限り必死に追ってくれるなら、ニンジン冥利に尽きるというものだった。


「さて、今度は僕の夢に付き合ってくれるかな? もちろん君達にはここで夢を終わらせる権利がある。引き返す船はあるよ?」


 偶然ここに流れ着いたフーさんと、白熊さん、そしてオペ子さんにはこの先に付き合う義理は本来ない。


 でも彼女達はやれやれと肩をすくめて答えた。


「ついていくに決まってるじゃない。今更仲間外れは嫌だよ」


 秘密にしてたのはしばらく言うけどとフーさんは笑った。


「ボクもついていきたいな。祝勝会にだけ不参加なんてあんまりだ」


 白熊さんは、そう言って今後も料理の腕を振るってくれるようだった。


「ワタクシはニライカナイコロニーの総括AIとなることが決定しています。今後ともよろしくお願いいたします」


 それは初耳だけれど、何やらAIの間で取り決めがあったようだ。


 そしてシュウマツさんはわさわさと枝葉を揺らす。


「もちろんだとも。覚めない夢というものも悪くはないものだ」


 ああ、確かにその通り。


 ニライカナイコロニーは元より偶然湧いて出た夢や空想のようなものなのだろう。


 きっとなくても何も変わらない。


 人類はそのうち外に向かうだろうし、堅実に現実的に前に進んだのだろう。


 でもきっと、それらを支える原動力もどこかの誰かの夢のはずだ。


 だったら、僕らの見たこの夢だって現実を引っ張る力があって欲しいと僕は願うばかりだ。


 そして仲間達が、僕の夢にこの先も付き合ってくれるのなら、アッと驚きに満ちた感動を提供したいと僕は思った。


 僕はヘルメットを外す。


 おお、どうやら契約の影響か、それとも腹が決まったからか、もうヘルメットは必要ないようだった。


「……!」


「……!」


「……!」


「どうしたの?」


 しかし今日一番の驚きの表情を浮かべる仲間達に僕は尋ねる。


 するとフーさんと、白熊さん。そしてどオペ子さんの端末まで、声をそろえてこう言った。


「「「そんな顔だったんだ……」」」


「……」


 さっそく驚かせることには成功したけれど、ちょっと思っていたのと違う。


 だがまぁ次の機会はいくらでもあるだろうと、僕は大樹の茂る星の海に思いをはせた。

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【完結】宇宙の果てで謎の種を拾いました くずもち @xxxkuzumoti

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