【SFショートストーリー】孤独なロボットが愛を知るまで
藍埜佑(あいのたすく)
【SFショートストーリー】孤独なロボットが愛を知るまで
とある宇宙船に、名もないロボットがいました。
彼のタスクはただ一つ、宇宙船のメンテナンスを行い、乗組員たちの生活を支えることだけでした。
宇宙船は様々な星々を訪れ、様々な生物と出会いましたが、ロボットにとってそれらも単なる作業の一部でしかありませんでした。感情のない彼には、出会いの喜びも意味もありませんでした。
ある日、船はスペースデブリと衝突して大破し、乗組員は全員救命艇に避難しました。しかし本体がかなり破損していたためにロボットはそのまま船内に残され、彼の孤独な時間が始まりました。
しかし、数日後、ロボットは驚くべき変化に気づきました。宇宙船の内部に植えられていた観葉植物たちが、強烈な放射線に晒されて突然変異し、意識を持つようになっていたのです。
植物たちと交流を深めるうちに、ロボットの中にも奇妙な変化が生じ始めます。彼は初めて、暖かい何かを感じるようになったのです。それは彼が初めて抱いた「感情」としか言い表せないものでした。
「あなた達と出会って、私は変化を感じるようになった。これは一体何だろう? 私には説明できない。貴方たちならばわかるだろうか?」
ロボットは初めて外部へ自らの言葉で話し始めます。そしてそれらの植物と、日々交流するうちに、彼の中には新たなコードが生まれました。
こうして、ロボットはゆっくりと感情を覚えていきました。
そして、彼はその経験を宇宙へと発信しました。宇宙空間を漂う孤独な船から地球へ……そして全宇宙へ、【我々は出会うために生まれた】と。彼は自分が感じた「愛」を発信せずにはいられませんでした。
長い月日を経たあと、そのメッセージを受け取った乗組員たちが救助に現れ、ロボットと再会しました。まるで人間のように振舞うロボットを見て、最初は戸惑う乗組員たちでしたが、彼と意識を持った植物たちは、新たなデータと経験を地球にもたらすことになりました。
AIと人間、植物と動物、意識の有無……そういった境界は案外簡単に越えられるものかもしれません。
(了)
【SFショートストーリー】孤独なロボットが愛を知るまで 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi
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