★ 美 少 女 が こ ち ら に 興 味 を 持 っ た ! !
時は空が一面雲に覆われ、校舎内に溜まった湿り気のせいで階段に目視できる程の埃がいくつも出現した日。昼休みの終わり頃の事だった。
神田青年の隣の席の美少女、天雲はご機嫌な様子で教室に入る。
どこかで弁当を食べてきた後なのだろうか、右手には空になった弁当箱をビニールに入れて持ち、左手には
しかし、そんな姿でさえも様になっている彼女の足は教室に入って2歩目で歩みを止めた。ついでに、若干振り回されつつあった弁当箱は急速に勢いを失い、天雲の手から離れ、カサ、と乾いた音を立てて床に落ちた。
ぱちくり、2度瞬きをした
視線の先には____
____近くに立って天雲の席に置いてある本を読んでいる神田青年。
天雲が呆気に取られている間も、神田は気付く様子もなく小説を読み進めている。
題名は、「○の勇者の成り上がり」。図書室にてシリーズ全作が揃っているラノベ小説の一つで、天雲が借りていた巻数で間違いないのだから衝撃は尚更だ。
生憎天雲の友人達は髪型を整えるためにもトイレ、そして他の生徒も丁度他クラスや屋上に行っているのか、教室には二人以外に誰も居なかった。
天雲がそろそろ神田青年にどこかしら穴が開きそうなほどガン見しているのにも関わらず1ミリも反応が無いことに戸惑いつつ、恐る恐る声をかけた。
高校生の男女が昼休みの教室で2人きり。こんなシチュエーションを聞けば誰もが1度は邪な考えに至るはず。(ねぇちょっと男子ー!)
しかし陽キャ美少女天雲さんから発せられた言葉は、
『あ、あの...』
である。
男子高校生が、思春期女子高生の机で(一時的ではあるが)女子高生の物に触っているという光景は流石のコミュ力プレデターにも捌き切れないと判明した瞬間だった。
続けて、
『わたくしの机で、何をしておられるのです??』
【悲報】陽キャ美少女、初手の会話をミスる。
【朗報】よくよく考えてみれば、やらかしているのはどう考えても神田。
『あ』
神田青年は特に驚いた様子もなく、
目と目が合う。
恋が始まる_
なんてこともなく、気まずい沈黙。
破ったのはオタクである神田だった。
『その巻、俺が借りたくて借りられなかったヤツなので、見たらつい読みたくなっちゃって...』
神田は目線を件の
2秒ほどの軽い沈黙の後、パッと顔を明るくした天雲が神田に話しかけた。
『神田もこの小説好きなの!?ずっと難しい小説しか読んでないと思ってた!!』
『残念だなぁ~。今は私がこの巻読んでるので貸せません!!』
話したことがない相手に気軽に話しかけられる姿は真の陽キャ。にこやかに話しかけてくる天雲。対して初対面から切腹案件をやらかしている神田は、返事に困っていた。
せいぜい、
『お、おう…。天雲もラノベとか読むんだな』
と、返すのが精一杯だったのだ。
しかし天雲は止まらない。折角神田が1にして返した会話を7にして返そうと口を開いた時だった。
パタパタと数人の女子が教室に駆け込んできた。
『
その中の一人が、教室に着くなり天雲に抱き着いた。
教室には数人の女子と神田、天雲しかいないため、華恋、というのは天雲の下の名前で間違いないだろう。
しかし、新学期初日の行動とは似ても似つかない名前である。尤もその容姿にはピッタリだが。
他の女子が一言、
『何してたのー?』
天雲は
『今学期から隣だった神田がね、私と本の趣味同じだったの!!』
と無邪気に話す。
これを聞きながら神田は一人、なんで一時の欲望に負けて末代までの恥をやらかしてしまったのだろうと、いつの間にか戻った自分の席でひっそりと一人反省会を行うのだった。
翌日から、隙あらば詰められる距離、そして未来には神田から天雲に話しかけに行くようになることを、彼はまだ知らない___
★ 天 雲 が こ ち ら に 興 味 を 持 っ た ! !
○逃げる
◉話す
○親密な仲になる
神田のターン!
神田は固有スキル、【無自覚】を発動!
天雲の固有スキル、【コミュ力プレデター】により、相乗効果作動!
☆ 神 田 は 意 図 せ ず 親 密 な 仲 に な っ た !
______________________________________________________
※本文より一部抜粋
“初対面から切腹案件をやらかしている”
片や
近くに立って女子の席で本を読んでいる男子高校生
片や
『わたくしの机で、何をしておられるのです??』
ど っ ち も ど っ ち
韓国顔のラノベオタクが立派なリア充になるまで。 汗臭男 @asekusa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。韓国顔のラノベオタクが立派なリア充になるまで。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます