後編
金色の円盤はレコードと呼ばれるもので、何世代も昔の記録媒体ということだった。僕が拾ってきたのは、人工衛星は人工衛星でもはるか彼方から飛んできたものらしい。
「変なの、人工衛星のくせに」
普通人工衛星は規則的なコースで星の周りをぐるぐる回るものだけれど、この人工衛星は初めから遠くに飛ばすように設計されていたらしい。
はじめは宇宙人の侵略の前触れか、と騒がれたものだ。それもそうだ。ここまでの技術を発達させた生命体が自分達以外にいただなんて想像だにしなかったからだ。
僕が見つけてきた円盤に大人たちがいろんなことを言っていたようだった。例えば、こんなふうに。
『いやー。子どものころを思い出しますねぇ、ハイ。宇宙人が星に乗り込んで侵略し始める、っていうね。まさか、私が生きている間にねぇ、あるとはねぇ、思いつかなんだですよ』
『それよりもですよ、この表面の模様が解読のヒントだなんて、なんともロマンがあるとは思いませんか! しかも、我々との”最小公倍数”を想定しての物ですよ! その事実に気づいた時、私は涙しましたよ……愛ですよ、生命に対する愛ですよ!』
『あそこまでの言語の細分化には文化研究家として興味が引かれます。添付画像にあった建築物についても研究チームが組まれている所です』
『生命の多様化も見過ごせませんね。トリ、という生物はぜひともサンプルが欲しいです。空を飛ぶ動物なんて、我々の星ではとうに絶滅してしまいましたからね』
本当なら、僕は世紀の大発見者として騒がれるはずだったけど、僕はそれを断った。発見者は僕のレコードを解読した人、ってことになった。
発見して騒がれるより、もっと心惹かれるものがあったから。それは、解読してくれた人が見せてくれたある映像。私はそれを大事に持って、部屋に飾って毎日それを眺めた。光のヴェールに包まれた青い真珠のようなそれを。
「在った……。本当に……」
分厚い変圧ガラスの向こうに漂うそれに私は静かに目を閉じた。長い旅だった。長い夢の終わりと、始まりがそこにあった。
「ペイル・ブルー・ドット」
・・・・ ・ ・-・・ ・-・・ ---
初めまして、星の子。おやすみなさい。 一色まなる @manaru_hitosiki
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