異端冒険者の軌跡〜国家転覆計画の罪で追放されたけど、いい機会だから世界征服することにしよう〜

細猫

第1話

恥の多い生涯を送ってきました。例えば──


「カネル・レイアレス、お前を追放する」

 突然、パーティ会場で仲間にそう言われたり。


「え……」

にぎやかだった会場の雰囲気が、一瞬にしてざわめく。


「近頃、カネル様の部屋を探ったところ、国家転覆の計画書なんてものが……」


 (うわーめんどくせえー)俺、カネル・レイアレスは心の中でうんざりする。結構上手く隠してたつもりなのに、もうばれたのかよ。

 あと、俺の部屋を勝手に探るな。


 にしても、パーティ唯一のS級冒険者の俺を追放するなんて、このパーティはアホなんだろうか。


「俺がいないとさァ、このパーティ、やってけねえよ?」俺は漫画を読みながらそう言う。


「は?」


するとパーティメンバーの一人、マコト・ヤマトが俺の言葉に反応する。


「お前なんかいない方がずっと楽ですよ!だって──」


「いや、だからさァ。このパーティで俺は最強なわけ。テメーらだけでこのパーティやってくなんて無理だって」俺はもう一度言う。


「ていうか俺の力なら他の国でもやってけるし」


 だが他の三人はそれを無視する。そしてリーダーのサラ・ウォラスは大声で言う。


「お前!自分が何をしたのか知っているのか!国家転覆だけが理由じゃないんだよ!それに私に何をしたか覚えていないのか!」


「えー?なんかしたっけ?」本当に思い出せない。そもそも俺と彼女は仕事の日以外は関わらない。


「忘れたとは言わせんぞ!お前、私の200金貨でやったギャンブルは楽しかったか??」

 あーそれか。そういえば、彼女から金を借りてギャンブルをしたような気がする。

 確か、ボロ負けしたんだっけ。


「ああ、あれか!あれは本当に運が悪かった」


200金貨というのは、大人一人が2年間何もせずに生きていけるほどの大金で、

またこの国で最も高価なギャンブルだった。俺はギャンブルが好きだったので、試しにやってみたのだが……。


「あれが200金貨で当たるなんてさ、普通思わねーじゃん?まあでもサラもさァ、そもそも俺の金を勝手に持ち出したのが悪いだろ?」

ちなみにその金は2年かけてちゃんとサラに返した。だが彼女はもう俺を見限ったらしく、俺にお金を渡すことはなかった。


「やっぱりカネルは追放した方がいいな……」

「そうです!俺だってカネルのやばい思想にはうんざりなんですよ!」

 ヤマトが叫ぶ。


「ええ……俺の思想ってそんなにやばいか?」


「当たり前だ!国家転覆なんてやって許されるとでも思うのか!」ヤマトが激昂する。


 正直、俺は意味が分からなかった。国家転覆がどうしてダメなんだ?別に悪いことじゃないだろ。ていうか今の時代は平和すぎてつまらないんだよ。俺は別に正義の味方じゃないし、国家を転覆させて独裁政治を行うわけでもない。単に俺が楽しいと思うことをやっているだけなのだが……。


 皆んなにはその良さがわからないらしい。


「兎に角、お前は追放だ。500金貨やるから、さっさと出ていってくれ……」

 どうやら、彼らには何を言っても無駄なようだ。それは俺も同じで、俺はテメーらに何を言われようがどうでもいい。


 でも、今回の失敗から一つ改善すべきことがあった。──それは、


 人に自分の思考を読まれてはいけない、ということだった。どうやら、自分の思考は知らずのうちに相手に伝わってしまうらしい。なので、これからは常になんも悪いことを考えていなさそうな善人を演じなければいけない。


 

 そこで俺はこう考えた。


 今度は国じゃなくて、

 世界全体を支配してやる!


 例えば、あのパーティの奴らなんか、俺を追放したことに対して後悔させてやりたい。

 世界征服をするなら、まずは国を手に入れる必要がある。


 国を手に入れるには、戦力がいる。さて……どうしたものか? そういえば、昔読んだ漫画に、似たような奴がいた。


 確か名前は……そう!山田太郎!彼は自分の恋人を探すために旅をしていたんだ!

 

 それと同じように俺も世界を旅して回るのだ!


「面白そうじゃねえか!」

 早速俺は、行動することにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

異端冒険者の軌跡〜国家転覆計画の罪で追放されたけど、いい機会だから世界征服することにしよう〜 細猫 @qoaWIqmskswm

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ