希望の名の下に――戦地をはるかにのぞみて

 歴史小説を読む動機というのは、現実を理解したいという人間の根本的な欲動に沿うものだと想う。いかに虚実を交えて描くとはいえ、おおまかなところは史実に従う。なので、歴史小説というのは、どうしても、ドラマツルギーでは他のジャンルに劣るのである。なかには、織田信長のようにドラマチックに死んでくれる人物もいるにはいるが。

 それでも、歴史小説が読まれるのは前記した理由によるものであるし、より本質的には、人というのはより良い形で現実を理解したいとの願いを抱いて生きるものゆえと想う。まさに希望の名の下にである。

 戦地はいわずもがな、現代のパレスチナとイスラエルである。