第13話 君がみる世界

陸圸俊雄りくやまただおは自分のデスクで書類を探していた。

彼は犯罪者だった身ではあったが、特例で警視庁に来てからは持ち前の記憶力と情報収集能力とサイバー犯罪系統への手柄が認められ、彼メインのサイバー犯罪対策室のメンバーになっていた。

相棒はサイバー犯罪やパソコンに疎い勤続年数の長い先輩警官で、煙草の吸えなさに席を外していた。


そんな時、一人の女性が書類を差し出してきた。

「……ん、ありがとう。君は見たところここの所属じゃないみたいだが」

橘幸知たちばなさちは、やっと探し求めた相手に会えた、と彼が首から下げたネームプレートを確認して、そっと微笑んだ。

「……忘れちゃった? ボクだよ、橘幸知。りっくんやっと会えた……! 」

言われた陸圸俊雄は手から書類を滑り落とした。

その名前はだって、ずっと幸せであれと願ってきた名前だったから。

「本当に、あの幸知ちゃん…なのか…? いや、今はもう、さんだな……見た目が変わらな過ぎて、だな……びっくりした」

陸圸俊雄は昔は出来なかった、優しく笑いかけることに成功して、その笑顔を見た幸知は思わず抱きついていた。

長い年月、ずっとりっくんだけを求めてきたのだ。

もう、手離したくない。

「りっくん、私の思いはあのまま変わらずだよ、りっくんのこと落としてみせるから、楽しみにしててね! ! 」

ぎゅうとしがみついたままの幸知に俊雄は戸惑い、それは犯罪対策室のメンバーが現われるまで続いたのだった。




ーーー君がみる世界と、彼の世界はやっと繋がって未来を繋いでいくーーー。

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君のみる世界 ミハナ @mizuhana4270

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