優しい世界

優しい世界

この世界はとても平和だ。

数百年前には、戦争や犯罪などが絶えなかったらしいが今ではそんなことはない。

《優しさの計測器》が開発されたからだ。

15歳になると計測を受けることが義務になっていて、優しさが基準値に達しているかを確認する。

基準値よりも優しさの値が低い子は、たいてい身体の再利用、つまり他人のスペアの身体として保存処理がされる。

しかし、見込みがある子は脳の手術を受けて基準値を満たせるようにしてもらう。

だから基準値未満の人間は存在しない。

手術を受けた子は、たまに拒絶反応が起きて死んでしまうことがある。そのため、抵抗する子がいると聞くが不思議だ。基準値を満たすことが当たり前で、優しさのない人間はこの世界に必要とされないのに。

この前、私も15歳になったので計測を受けた。結果はまだ出ていないが、そのうち配られると思うので気長に待とう。

隣の席の子の顔色がなんだか悪い。大丈夫だろうか。どこか身体の具合が悪いならスペアからの移植を勧めようか。

今日も世界は優しさで溢れている。