第4話 高3のメンタルケア

高校最後の一年間、私の心身は満身創痍だった。


小学校1年から取り組んだ結果が、この推薦入試にかかってる。

勉強しないといけないけど、勉強したくない。後悔はしたくないけど、自分の限界を知るのが怖い。


そんな醜い、他人に言わせれば「人間らしい」考えがずっと頭に渦巻いて、私の精神を抉った。


そのストレスが原因なのか、人とのコミュニケーションも難しくなっていった。

学校に行っても、クラスメートと目を合わせられない、雑談の声が出せない。

「他人に見られている」と感じるだけで、目が潤んで顔のあちこちが引き攣りだす。

休み時間は、廊下の隅や教室の窓のそばで誰とも目を合わさないようにしていた。


そんな私に、クラスメートは本当に優しくしてくれた。

私の机に来て話しかけにきてくれる。「教えて」と頼ってくれる。

目が合わせられなくて、声も出せなくて、男子を突っぱねても女子に抱きついても、何度も何度も。


先生方も、私自身が「贔屓ではないか」と思うほど大事にしてくれた。

うっかり泣き出せば泣き疲れるまでそばにいてくれる、褒め言葉に対し卑屈になれば「糖分不足だ」とチョコを渡してくれる、授業を抜け出して校内の廊下をうろついていれば「暖房ないから寒いでしょ」とストールを貸してくれて、満足するまで一人で放置してくれる。


あの高校で出会った人達は皆、間違いなく私のヒーローだ。



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控えめすぎるヒーロー達 @mustardflower

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