本当の理由 2

@pirikalua

第1話 好きだったのかな

今度の土日、まだ連絡もらってないけど

どこへ行くのかな…

メールの返信がきた

"ごめーん!土日仕事ーどこにも行けないから”


珍しいな…でも、わりと嬉しいかも

久しぶりに図書館に行ってみようか


緑に囲まれた一角にある図書館

図書館の中を、一人で本を見ながら歩いていると、不思議な落ち着きを感じていることに気づいた…居心地がいい

いつの間にか、本を見たり読んだりしているうちに、15時をまわっていた

そろそろ帰らないと


図書館からの帰り道に、わりと大きなカフェがある

いつもは彼と来ることが多い

コーヒーでも飲んでから帰ろうか

空いている席を探すため、中を見渡した時だった

彼が来ている…でも、隣に女がいる…誰だろう

一気に心臓の鼓動が激しくなった


順番待ちで並んだところから、前の人の後ろに隠れてチラチラ見る

小柄で、ころころとよく笑う、かわいい感じの女性

なんだ…そうか…今日は違う人とデートだったんだね

こんなことは、初めてで、どうしたらいいのか、わからない

でも不思議と冷静で、寂しさと悲しみはあるけど

どこか納得しているところもあって…

わたし…本当に彼が好きだったのかな


コーヒーは家で飲もう

列から外れて家路に急ぐ

道々彼と出会ったころのことを、ぼんやりと思い出す


入社2年目の春だったと思う…桜が咲いていたから

私は事務職で彼は営業だった

食事に誘われて何度も行くうち、告白されて

誰とも付き合ってなかったし、OKして付き合い始めた

気さくないい人で、一緒にいると楽しかった

いろんなところに連れて行ってくれて、いつも楽しみにしてた

彼はどうだったろう

あまり考えたことが無かった…一緒に居て楽しくなかった?

初めて彼のことを意識した

えっ…彼氏なんだよね…彼は楽しそうにしてた?

思い出せない…付き合い始めてから、もう3年になるのに…


なんだか胸の奥がざわざわする

旅行会社の前を通り過ぎようとしたときに

北海道旅行のパンフが目に入った

チラシを手に取って眺めていると、店員さんが出てきた

明日出発の2泊3日、北海道旅行…行こうか


会社にメールを送り

一週間の休みを願い出た

理由は体調不良


家に帰り旅行の準備をしていると、少しだけ気持ちがまぎれた

季節外れで旅行客は少ないと聞いて行く気になった

自由行動が多いのも嬉しい


一人旅は初めてだし、自分の行動力にもびっくり

自分の意外な一面をみた

ゆっくり心の整理をしよう

このままでは前に進めない

荷物の中に、ノートとペンを入れて

そう決心した






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