高嶺の花

ゆる弥

高嶺の花

 頭の中で積乱雲が雷を落として轟音を轟かせている。


「なんで、ただの両面コピーができないのよ!」


 コピーを頼んでいた新人の若い子が、上手くコピーができなくて片面で全部資料を作ってしまった。これは経費削減を掲げている広報部としては手痛いミス。用紙を無駄に使っていると判断される。


 責任は今のプロジェクトを任されている私。

 今は休憩スペースで窓に向かって、ブラックコーヒーを煽っていた。


「また私のせいにされるじゃない! ふーー……」


 怒りをどうにか収めようと飲み物を飲んだけど。思い出すだけで腹が立つ。謝ればいいと思ってる。


 こっちが怒ればパワハラだというし。

 握る拳が白みがかり、震えてくる。


「佐藤先輩? 大丈夫っすか?」


 二個下の後輩君だ。


 急に握りしめていた拳に掌を乗せてきた。

 何かざらつく。


「こういう時は、糖分とった方がいいっすよ?」


 それだけ言うと去っていった。

 拳の上には小袋の飴。


 もぉ。なんか悔しい。

 胸が苦しいじゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

高嶺の花 ゆる弥 @yuruya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説