第133話:祭りに向けて始動1





 帰省から帰ってきて、底をついていたやる気と気力も戻った頃、一颯は祭り開催に向かって動き始めた。


 まずは朧をはじめとするモンスターたちと共に神前試合のあれそれを決めて行った。


 前に軽く話していた通りに今回の試合は個人戦とすること。

 試合に使う武器は一颯が用意する殺傷能力ゼロ武器であること。ただし、予選が必要になった場合は竹刀やそれに準ずる武器を使用すること。

 遠距離武器の弓などの場合は自らが普段使っている物ではなく、こちらも一颯が用意した物を使用すること。こちらについては予選が必要になった場合も同様であること。

 なお、そのための武器は一颯から担当神経由で頼んでもらい、ネタ武器以外の殺傷能力ゼロ武器を作ってもらったので問題ない。


 予選は応募人数にもよるが、あまりにも多かったら予選一次、予選二次に分けるつもりだ。

 まず一次は、いくつかのブロックに分けて乱戦形式で行う。決められた範囲にそのブロックの全員が入り、ラスト3人になるまで戦う方式を採用した。

 なお、倒されたかどうかの判定はダンジョン機能に審判系の物が存在するのでそれを使用して行う。

 この機能を使ったら、負けと判定された場合、即座に舞台となる範囲から弾き出されるのでとても楽なため採用された。

 そして各ブロックで最後まで残った3人が二次予選出場となる。


 二次予選は残った人達でくじを引いてもらい、対戦相手を決めることになった。

 さて、そうして二次予選からで残った人達が、本戦出場となるわけである。




 あと、面白枠でネタ武器試合を行う事が決まった。

 題して”ネタ武器杯”。まんまである。

 これは担当神から上位神や神話級の神々がネタ武器の試合楽しみにしているからやってくれないか、と言われたためである。

 面白ネタ武器試合参加しても良いよという、神前試合の予選から参加している人たちで行う予定だ。

 今のところ当時飛び入り参戦は考えていない。多分、飛び入りを受け入れるとパンクする。

 スケジュールとしては、舞、神前試合、神輿行列などが終わった後のフリータイムになる時間帯から、参加人数にもよるが祭が終了するまで行う手筈だ。




 そして龍王3人の舞。それに使う曲については現実世界のプロに依頼することに決まった。

 これは、祭りやりたい、祭でこういうのやりたいとダンジョン省に伝えたところ、ダンジョン省からではなく担当神からじゃあ舞の曲は生演奏にしませんか、と提案されたためである。

 なので、そちらは現在ダンジョン省に依頼して生演奏してくれる人員を選んでもらっている。なお、その曲も一颯作曲なので、楽譜は一颯自身が用意した。ただし、五線譜であるが。和楽器の楽譜は流石に書けないので。




 神社エリアの本宮で行うのは舞と神前試合で、それが終わった後、神輿行列で門前町エリアを抜けて、その前にある開けた場所へと出る手筈である。

 祭の間はその開けた場所に開放的な建物を建てるつもりである。神々の休憩所というか待機所というか、祭の間過ごしていただく場所である。

 あと、それと同じく屋台類もそこに展開する。



 そう、この屋台なのだが、ダンジョン外の人も出店出来ないかという打診が来た。

 ダンジョンのモンスターたちのみの屋台であればDMで良いのだが、そこにダンジョン外の人の屋台も加わるとなると、彼らはDMでやり取りすると困ったことになる。DMはダンジョン外では一切使えないものであるし、屋台のための仕入れなどもおそらくダンジョンの外で行うだろうし、それに使われるのはリアルマネーであるし、屋台で物を売ってもリアルマネーの収入がないことになる。


 だからと言って、ダンジョンの中でリアルマネーは使いたくないし、それは担当神が絶対やらないとダンジョン省に告げている。

 ならば、と出てきた案がチケット制である。面倒くさいが、ダンジョン外の人の屋台で使えるチケットは事前に探索者協会から購入し、ダンジョン内のモンスターの屋台で使えるチケットはダンジョン内のギルドにてDMで事前購入する方針になった。

 チケットは1枚100円とし、屋台の売り物の値段はそのチケットに合わせて設定する方針になった。ちなみにダンジョン内のギルドで購入する場合は1枚100DMである。

 なので屋台の値段は、例えば200円、300円というキリのよい単位で設定し、210円や315円と言った十の位以下を設定しない様にする。


 本当は外部の人の屋台を断りたかったのだが、どうしてもと頭を下げられ、朧たちと話し合った結果、面倒だが、モンスターの屋台と外部の人の屋台とで使えるチケットを分ける方針になったのである。

 なお、リアルマネーでやり取りしたら一発アウトであるし、DMで購入しようとしても断ることになる。

 一発アウトになったら即座にダンジョンの外に弾き出されるし、リアルマネーを受け取ろうとした屋台も同様の措置が取られる。

 それでもどうしてもリアルマネーが絡んでくることから、やらかす馬鹿が出て来そうな気配はあるが、担当神が「目を光らせておきますねー」と言っていたので、やらかした瞬間神罰が降ることが確定した。


 あと、祭に来る人達のこと。

 ダンジョンは日本だと探索者登録が必須で、それも16歳以上でしか登録が出来ない上に、20歳未満は20歳以上の探索者同伴でないと潜ることが出来ない。

 海外探索者においては世界探索者免許のグレード3が必要になる。

 これは絶対の決まりなので緩めることはしない方向になった。

 ダンジョン省も悩んだようなのだが、例外を作ると色々面倒だという方に意見が倒れたようだ。

 15歳以下やグレード3の免許を持っていない人たちから文句が出てくるだろうが、曲げるつもりはない。




 さて、ここまでが迅速に決まり、ダンジョン省と認識のすり合わせも終わった。

 まだ他にも決めなくてはいけない物があるが、すぐにでも動かなくてはいけないのは神前試合の参加者の応募と屋台の募集である。

 なので募集のための動画を作り、担当神に頼んで神様配信動画サイトに投稿してもらったのがつい今しがたのことである。

 投稿されたのは募集のための動画として神前試合のものと屋台のものの2種類で、それとは別に祭についての大雑把な解説もどきの動画の3つだ。







「うっわ、すごい数の応募が押し寄せてきとる件」

「想定内ではあるが、これは……」

「これは少々プランを変えねばならんのでは?」


 動画が上がってすぐ、応募が押し寄せて来てその応募画面を端末で確認している一颯たちが眉を顰める。




《当たり前だよなぁ!!!》

《祭の開催ありがとう!!!!》

《取材って祭の取材だったんかわれぇ!!!》

《道理で帰省時の目撃情報が偏っていると!!!理解した!!》

《まだどういうのするのか分かんないけど、神前試合するのは分かった!応募した!》

《近距離部門と遠距離部門の2種類かぁ》

《弓とかクロスボウとかその辺使ってる人は遠距離部門なんだな》

《ナイフ投げとかの中距離は?》

《絶望的に人数少ないからないんだと思う。いることにはいるけど、ほぼ見ないんで》

《悲しい……》

《日本はそもそも銃を武器にしてる人がいないから銃火器禁止されてんね》

《海外の人は銃使ってる人もいるし、妥当》

《日本のダンジョンに来る人達皆そのあたり配慮して銃を持ち込まないからすごく有難い限り》

《というか、銃火器の類はダンジョン探索で来日する場合、持ち込むのがとてつもなく面倒くさいからってのもあると思われ。クソめんどい手続きしてまで持ち込むよりは他の武器持ち込むわっていう海外ニキネキばっかりなんだよ》

《どんだけめんどいん?》

《海外から土方ダンジョンの治療を受けるためにとる手順の数倍めんどい》

《それは確かにめんどいな……》




「今時点でこれは……」

「おん、ちと練り直さねば」

「あらあら、人の子たち皆やる気に溢れているのね」

「とりま、もう少し様子見した後でその時点での応募数見てから練りなおそ……」


 ブロックに分けてのラスト3人になるまでの乱戦方式を取り入れていて良かったと思いつつ、この分だとブロック数が増えて、その分勝ち進んだ人も増えるので、予選を第一次、第二次の他に第三次とかも必要になってくるかもしれない、と考える。



《土方さんたち頭抱えてて草》

《ここまで来るの想定してなかったんかwww》

《個人的にネタ武器杯に出たいので応募した!》

《同じくwwww》

《真面目な神前試合は強い人たちに任せてネタ武器杯に出て楽しみたいwwww》

《いかに観客を笑わせられるかを競うわけだな……っ!!》



「他にも人員募集せんといかんもんあるのに……っ!」



《まじでー!?》

《他何やるの?!》

《屋台の募集もあってびっくりした》

《屋台の方は募集締め切り後に抽選だっていうからな》

《ダンジョン内はリアルマネー禁止だから、祭の屋台で買うために事前に100円チケット買わないといけないんだな》

《それも100円チケット使えるのはダンジョン外の人の屋台だけで、モンスターの屋台は冒険者ギルドで100DMチケット買っておかないとダメなわけだが》

《めんどいけど、仕方ないな。リアルマネーやり取りは一発アウトだっていうし》

《一発アウトは当たり前なんだよなぁ》

《これでダンジョン省も土方さんたちも合意してるならおれらは従うのみ》

《じゃらじゃらとリアルマネー持ち込む必要ないからある意味楽かも……?》

《後、祭りに来れるのは冒険者登録している人かグレード3免許持ちだから、ダンジョン規約に則るのか》

《緩めんかったんだな》

《中坊の弟が喚いて煩い》

《そらそうなる(小学生の妹がうるさい)》

《緩めたら緩めたらで面倒ごとの方が多いってなったんだろうな》

《探索者登録してるのでそんなの関係ねえぜ!》

《この祭りのためにとーちゃんが探索者登録してくれることになったからとーちゃんと一緒に高校生のおれ(探索者登録済)もいける!やったぜ!!》

《くそ羨ましい……っ!!!》




「とりま、神前試合と屋台の募集は始まったんで応募期限過ぎるまで放置。他の募集が必要なもんの話を詰めんと……あ~でも、このままやと想定以上の応募きそうな予感がする件。となると、屋台同様抽選にするべきか。いや一応数は決まっとるけど、まだ詳細詰めてないし、さっさとまとめてこれも募集せんと」


 ブツブツと言い始めた一颯の脳天に朧のチョップがどすりと入った。



「残る募集はまた後日、動画が投稿される。それを待つと良かろう。まだこちらも詳細が決まっておらぬ故、今言えることは何もない」



《はぁーい!》

《待ってます!!》

《土方さんwww》

《朧さまのチョップで沈んだまままたブツブツ言い始めてるwwww》

《久々に聞いた土方さんの高速詠唱()wwww》

《ずっと忙しそうで配信に姿映らない事の方が多かったからな》



 ひすいに腹の下に仕舞われた自分の主をちらりと見て朧はため息を吐きだしつつ、もふもふの下に両手を突っ込んで一颯を引っ張り出した。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年9月21日 07:00

ダンジョン経営物語ー現実にファンタジー要素入れたいからと選ばれてしまいましたー 猫のたま @tamamossan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ