第11話 別れ

望月は、約束通り課長を急遽の転勤に持って行ってくれた。

そして、望月の予言通り、俺の営業成績は上位に上り詰めた。



望月とは定期的に関係を持った。


望月はベッドの中だと無邪気な笑顔をよく見せた。

どうして普段は笑わないのかと聞くと、「自分にとってはベッドの中だけが自由で優しい世界なんだ。笑えるのはここだけだよ。」と言った。



2人とも、お互いに恋愛感情はないと自覚していた。

だからといって性欲や同情だけの関係ではない。


この関係は、いわば契約だ。


踏み荒らされた望月少年の自由で優しい世界は、今契約で守られている。




望月は三年間で支店を全国成績優秀賞がとれるまでに育て、また転勤で去っていった。


早坂には、後悔も寂しさも安堵もない。



息子は7歳になった。

妻があれこれ世話をしている。

子どもにとって世話が必要な時期は思ったより短いのだろう。


今日も青白い月は綺麗だった。




-完-


※この物語は、『薫と彗』に続きます。

https://kakuyomu.jp/works/16817330668306023163/episodes/16817330668306054197

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月の綺麗な夜に 千織 @katokaikou

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