第10話 早坂の答え

ホテルの部屋に入ると、すぐに望月は早坂の首の後ろに手を回し、キスをした。


望月は、まるで子どもがおもちゃをしゃぶるように早坂の唇を弄んだ。


シャツのボタンが外され、首元を望月の舌が這う。


望月が、早坂のベルトに手をかけたので、「せめてベッドで…。」と言って、なんとかベッドまで辿りついた。



望月は俺のスーツを脱がそうとしたが、俺は「自分で脱ぐよ」と言って望月の手を遮った。


望月は、脱いでいる最中に首筋の後ろにキスをしてきた。

同時に下半身も弄り始める。

慣れた手つきだ。



望月は俺をベッドに押し倒し、ひとしきり身体を愛撫してきた。



そんなときに、なぜか社内で見る望月の凛々しい姿が思い出された。

身体の快楽と理性の狭間で心境は複雑だった。



「俺のも、してくれますか?」


乱れた髪を直しながら望月が言う。

望月はベッドの枕をクッション代わりにして、ヘッドボードへ寄りかかった。


俺はいざ望月に覆いかぶさるも、体が動かなかった。


「……初めてですもんね。それは、いいですよ。今日は。」


望月の笑みは優しかった。



また望月がリードして、互いの体を感じ合った。


「早坂さん…大丈夫ですよ。やってみれば、女とやるのと大して変わりませんから。」


望月にそう促された。



望月が俺に背中を向け、自分の顔にかかった髪を耳にかけた時だった。

まるで、望月が10代の少年に見えた。



母親のどす黒い愛情を背負った細い肩。

父親に頼れない心細さに耐えた浮き出た背骨。

男になり切れない細い腰。



「望月さん……。」


俺は後ろから望月を抱き、望月の望みに応えた。

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