第3話 イケメン過ぎて死体が動き出した

墓地に入ると墓石が置かれていない場所まで俺たちはやって来た。


一行はその場に棺桶を下ろす。


そして葬儀の準備に入った。


俺は勝手が分からないので見守るだけだ。


そして準備が進みリーダー格の女が棺桶の蓋を外した。

棺桶で寝ていたのは白装束に身を包んだ女だった。


金色の髪をした女の子、中にはドレスが入ってた。


「この子は初恋もまだだって話なのに。死ぬのが早すぎるよ」


女の子はそう言ってた。


それから名乗ってきた。


「一応名乗っとくけど私はエリス。短い間だろうけど名乗っとくよ。ちなみにBカップ。今泊まってる宿は【ヤースーイの宿】」


どうでもいい情報まで話してくれた。


これも顔面ステータスが高いお陰だろうか?


「死因は?」

「分からない。この世界ではたまにこうやって永眠しちまうんだよ」

「怖い世界だね」


俺がそう答えると葬儀が始まった。


棺桶の中を見て一行は言葉をかけていた。


「今までありがとう!サーシャ!」

「お前の活躍は忘れねぇぜサーシャ」


サーシャという人物らしい。

その人に向かって労いの言葉をかけていた。


エリスは俺を見た。


「あんたも声を掛けてやってくれ」

「なんでもいいのか?」

「あぁ、もちろん。ただしマスクは外してくれよ。マナーだからな」

「分かった。マスクを外してもいいが俺からもひとつ。俺から距離を取れ」

「なんで?」

「無駄に葬儀が増えるかもしれないからだ」


顔面チートに関してだが、俺の顔が見えなかったり距離が離れているとダメージが少なくなると思われる。


これはそれを活かした顔面即死チートへの対策だ。


俺はそのまま棺桶の方に近寄っていった。


そしてサーシャの顔を見た。


「よく見ると可愛いじゃないか」


そう言いながら思わず手が伸びた。


頬を触る。


ピクっ……。


指が動いた気がするけど気のせいだろう。


「アンタが生きてるうちに会えなかったのが残念だ」


そう言いながら俺はマスクを外した。


その瞬間だった。

後ろからエリスたちの声。


「うぉっ!なんだ!このエネルギーは!」

「くぅ!神々しいエネルギーを感じる!」

「これは魔力なのか?!」


そんな声が聞こえる中俺はさらにサーシャの顔をのぞきこんで言った。


「お疲れ様」


そう言って見送ろうとした瞬間だった。


ユラァッ。

背後で何かが起きたような気がした。


俺の後ろを見ながらエリスは口を開いた。


「サーシャ、なぜ生きてる」

「神のお告げが聞こえました。私は可愛いと。私が生きてるうちに会いたかったと。だから生き返りました」


俺は頭の中が真っ白になってた。


意味が分からない。


しかし、その時だった。


「がはっ!」


俺の後頭部に血が飛び散った。


「神様がイケメンすぎて心臓が破裂するぅぅぅぅぅ!!!」


サーシャはその場で四つん這いになってた。


そして、その時だった。


ドーン!周囲から物音。


「な、なんだこれ!墓石が飛び散ってるぞ!」


エリスの叫び声。

周りを見ると墓石が空中を飛んでいた。


そして、棺桶の蓋や土も飛んでいた。


それから土の中から人が出てくる。


「長い夢を見ていた気がします〜」

「よく寝たー」


そんな言葉を吐きながら次々と人が出てくる。


「な、なんで?!人が生き返ってるぞ?!こんなこと、今までなかったのに!」


エリスの叫び声。


俺はまさか、と思いマスクをした。


(俺がイケメンすぎて死人が次々に生き返ってる?)


まさか、とは思ったけど俺の顔面はチートレベルだ。


有り得ない話じゃない。


なにより


「イケメンに生きてる私と会いたいって言われたから帰ってきましたよ。棺桶で寝てる場合じゃねぇっ!」


うしろからサーシャのそんな声が聞こえた。

確定だ。

俺がイケメン過ぎてサーシャは生き返った。


俺の顔面はやはりチートらしい。

死人すら生き返るチートだったのだ。




その後俺はエリスたちとは別れて一人で酒場に来ていた。


エリス達から生き返った祝い金として当面の資金は貰ったのでしばらくの生活は大丈夫だろう。


そんなわけで初めての異世界飯にありつくことにした。


マスクを通して店員に注文するのだが、それでも店員は恥ずかしそうにしていた。


俺がイケメン過ぎて俺の顔が直視できないようだ。


そんなわけで酒場の隅の席に座っていたのだが、ゾロゾロと酒場に人が入ってくる。


その人たちの会話内容はこうだった。


「ここの酒場?超イケメンがいるって」

「そうみたいだよ。ほら、あの子じゃない?」


俺を見て会話をしているらしい。


どうやら俺を目当てに酒場に人が入ってきているらしい。


「はぁ……」


イケメンってのも大変だな。


開幕追放されたりこうやってのんびり飯を食えなくなるのか。

更に俺のイケメンさはチート級である。


マスクを外せばそこら辺の女の子が死にそうになる。


このままではやばい。


(もっと高性能なマスクが欲しいな)


例えばほぼ顔全体を覆ってくへて、ご飯を食べる時も装着できるようなマスク。


食べる時だけ口だけ開閉するようなマスクとかいいかもな。


そういうマスクもこういう世界じゃ作れると思うんだよな。


(よし。ご飯を食べたらそういうマスクを作ってくれそうな所を探してみようか)


食事をそうそうに切り上げて伝票をもってレジに向かう。


レジの店員に伝票を渡して会計。


「0ジュエルのお支払いになりまーす」


ジュエルというのがこの世界の通過であることは知っているが聞き間違いだろうか?


「すみません。聞き取れませんでした。もう一度お願いします」

「0です。無料です」

「え?」


俺は慌てて伝票を見た。


【注文リスト】

・チャーハン 700ジュエル

・豚まん 800ジュエル


たしかにお金の掛かる注文をしている。


無料というのは明らかにおかしい。


「無料?おかしくないですか?」

「おかしくないですよ。お客様はイケメン過ぎるので無料です」

「は、はぁ……」

「またのお越しをお待ちしております♡」


そう言われたけど。


「あ、いや。支払いますんで」


1500ジュエル叩きつけて店を出た。


「イケメンだから無料ってなんだよ」


やれやれ。


そう思いながら俺はとりあえず次の目的であるマスク調達をしに行くことにした。


それにしても日常生活にまで影響が出てしまうほどのイケメンなのか今の俺は。

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クラスごと召喚で唯一【顔面ステータス】に全振りした元いじめられっ子の俺は【顔面チート】で異世界を無双する~戦闘スキルなんて必要なかった件 にこん @nicon

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