第2話 イケメン過ぎてギルド職員が気絶してしまう

さて、どうしたものか。

異世界に1人で投げ出されてしまった。


「困ったな」


今の俺には顔面しかない。


さっきの場所でしか確認してないけど、俺は他のステータスを犠牲にして顔面チートを手に入れた。


その破壊力は見て理解してる。

倉石さんが命の危機に陥ったほどだ。


俺は生物兵器と言っても過言では無いかもしれない。


「とりあえず顔を隠すものとか必要だろうか?」


マスクとか。


マスク美人と言うが、そんな感じで顔を隠せば少しは顔面チートも抑えられるかもしれない。


とりあえず顔を隠すものが欲しいな。

このままでは行く先々で顔面チートの弊害を受けることになりそうだしな。


そうして歩いていると、目の前から女の子が歩いてきた。


そして


「ぐはっ!」


吐血してそのまま土下座した。


「い、命だけはお助けを……それ以上見られたら心臓が止まってしまいます!」

「俺何もしてないんだけど」

「きゅーん!」


早く顔を隠さないとな。


とりあえず俺はハンカチを取り出してそれをマスク代わりにすることにした。


それで女の人に声をかけてみた。


「顔を上げて」

「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」


そう言いながらも顔を上げると。


「あれ、動悸が治まってきた?」


女の子は落ち着きを取り戻していた。


俺の読み通り、顔を隠せば顔面チートの効果を抑えられるようだ。


「迷惑をかけたようだねごめんね」


謝って俺は歩き出した。


とりあえずお金を稼がないとダメだろうが。


どうしたものか。

そうやって悩んでいると俺を追い越すように女の子2人組が歩いていった。


「そろそろ冒険者ランクも上がりそうだな」

「そうだねー。今日はどんなクエストにするー?」


そんな会話をしながら歩いていった。


そして、視線の先にある建物に入っていった。


建物には看板があった。

異世界の文字のようだが俺はなんとなく読めてしまった。


【冒険者ギルド】と書かれてある。


(異世界と言えば冒険者だよな)


ホストという選択肢もありそうだが俺は女の機嫌を伺いたくない。


なので、冒険者の方が気楽そうだ。


よし、とりあえず冒険者ギルドってやつに向かってみよう。


俺はギルドの扉を開けて中に入った。そして、そのままカウンターの方に歩いていった。


カウンターに着くと早速受付嬢に声をかけた。


「すみません」

「はい?なんでしょう?」

「冒険者登録したいのですが」

「分かりました。ではこちらの書類にお名前を」


渡された紙に適当に書いて言った。


そして埋め終わると受付嬢は言った。


「マスクを外していただけますか?」

「そ、それはちょっと」


俺が今マスクを外すのはやばい気がする。


「外していただけないのであれば冒険者登録はできません」

「な、なぜでしょうか?」

「本人確認のためです」


そう言われたら外すしかないな。


俺はマスクを外した。


「はひゅー!」


ばたん!

俺の顔を見て後ろに倒れるギルドの受付嬢。


その音を聞いて隣で作業してた受付嬢が俺たちの方を見て。


ばたん!

倒れた。


「なんだ!なんだ!」


カウンターの奥の事務室から人がどんどん出てきたけど全員俺を見て倒れていく。


マスクをもう一度装備することにした。


しばらく待ってると最初に倒れた受付嬢の様子を他の職員が見に来た。


「な、なぜ倒れてるのでしょうか?」

「さぁ?」


まさか俺がイケメン過ぎて倒れたなんて言えないよなぁ。


「死んではいないようなので、とにかく、手続きの方を進めさせていただきますね」


そう言って彼女が手続きを勧めてくれた。


登録を終えてギルドカードを受け取った俺は次に依頼を受けてみることにした。


「簡単なクエストを受けてみよう」


クエストを見ていると薬草の採取というクエストがあった。


俺がそれに手を伸ばそうとしたら。


とっ。


手と手が触れ合った。

横を見てみると、女の子が立ってた。


白い髪に白い瞳の女の子。


「ひぁっ!ご、ごめんなさい!」


急いで頭を下げていた。


「あ、いや。気にしてないけど」


俺はそう言いながら依頼書を取った。

それで女の子に聞いてみた。


「一緒に受ける?」

「い、いいんですか?」

「うん、もちろん」


それに俺も初めてで1人だと心細いしね。



近くの草原まで移動してきた。


ここで薬草を集めることになる。


薬草を探して歩くのだが。


チラッ。

チラッ。


女の子が俺を見ていた。


「どうしたの?」

「あ、いや。なんでもありません」


視線を逸らすけど、またすぐに見てくる。

それでこう言ってきた。


「わ、私はシーナと言います。お名前を聞いても?」

「ユウカだよ」

「ユウカ様ですね。たいへん、お美しい人ですね」


その言葉を聞いて思った。


(どうやら俺の顔面チートだがマスクでも完全には防げないようだな)


マスクをしている状態でもある程度顔面チートの効果が出ているように思う。


まぁ、この程度ならいいかって思うけど。


そうして歩きながら俺は聞いてみた。


「俺、この街は初めてなんだよね」

「そうなのですか?気になることがあればなんでも!なんでも聞いてください」


日本にいた時とは反応が違う。


心の底からなんでも聞いてほしそうな感じで言ってる。


「好きな人のタイプは?」

「ユウカ様です!」

「へ、へぇ……」

「ユウカ様です!」


顔面チートほんとやべぇ。


(イケメンってやっぱそれだけでアドだな)


そう思いながら俺は草を探すことにしたのだが。


歩き疲れてきてしまった。


俺は顔面に全振りしたからスタミナとかはないはずだ。


「はぁ、疲れたね」


そう言ってみるとシーナは言った。


「ここでお待ちください。私がクエストを終わらせてきますので!」


ダッ!


シーナは1人で草を探しに行った。


「顔面全振りしたの正解だったかもなこりゃ」


俺は数時間前の自分に感謝していた。


しばらく待っているとシーナが帰ってきた。


「取ってきました!お待たせしました!」

「あ、いや。悪いね」

「そんなことありません!ユウカ様のお役に立てることが嬉しいのです!」

「あ、ありがとう」


苦笑いしながら俺は今日の成果を報告するためにギルドに帰ることにしたのだが、その帰宅する途中だった。


もうすぐ日もくれるというのに、草原の方に向かっていく人間が数人見えた。


「やっぱり夜中のクエストとかもあるんだね」


シーナにそう聞いてみるとシーナは言った。


「いえ、あ、あれはその。土葬に行くのだと思います」

「土葬?」

「人間はいつか死にますので」

「あー。たしかに、よく見ると棺桶を運んでるね」


そういう会話をしていると一行は俺たちに気付いて声をかけてきた。


「あんたら冒険者か?」

「はい」


シーナが答えると一行はこう聞いてきた。


「近くに墓地があるんだ。あんたらも同行してくれないか?こいつと組んだこともあるかもしれないしな」


シーナは言ってきた。


「行きましょうユウカ様。この街では可能な限り多くの葬儀に参加しますよ」


異世界ではそういう風習があるらしい。


豪に入れば郷に従え。


俺はついて行くことにした。

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