クラスごと召喚で唯一【顔面ステータス】に全振りした元いじめられっ子の俺は【顔面チート】で異世界を無双する~戦闘スキルなんて必要なかった件

にこん

第1話 イケメン過ぎて追放された

「おりゃー」


気の抜けた声と共に俺に飛び蹴りをぶち込んでくるのはクラスの中のいわゆる不良の荒尾だった。


いきなりのことで俺は受け身も取れずに教室の床に寝転んだ。


「あだっ」


そんな俺に近寄って口を開く荒尾。


「今日はお前のヒーロー涼音さんは来ないみたいだなぁ?」


バキッ!


俺を殴ってくる。


クラスメイトは誰もが見て見ぬふりをする。


当たり前の事だった。


俺なんて助けたってなんの意味もないからだ。


でも、1人だけ助けてくれる人はいる。


倉石 涼音。


学年一の隠れ美少女だ。

マトモな感性を持った倉石さんは俺がこうして虐められていると助けてくれのだが今は教室にいない。


そんなわけで俺は今日もこいつにいじめられているのだが、その時だった。


パァァァァァっ!!!


俺たちの教室の床が光った。


下を見るとそこにあったのは


(魔法陣?!)


光はどんどん強くなり、そして俺たちの意識は薄れていく。


しかしその直前に見えた。

教室に入ってきた倉石の姿を。

あの子もこの光に包まれる。



次に目覚めた時俺は見知らぬ空間にいた。


なにもない部屋だったが、突如俺の頭に知識が流れ込んできた。


それで理解する。


(勇者召喚か)


いわゆる勇者召喚をされていた。


そしてここは異世界ではなく、異世界に向かう前のいわゆるチュートリアルを行う場所らしい。


そんなことを俺は今の一瞬で知識として理解した。


コツコツコツコツコツ。


ハイヒールの音を鳴らしながらどこからか女が現れ口を開く。


「ようこそ。勇者の皆様。私は空間を司る女神です」


そう言うと女神様は続けた。


「ステータスオープン」



名前:女神

レベル:7000

体力:7000

攻撃力:7000

防御力:7000

魔力:7000

敏捷:7000

コミュ力:7000

顔面:7000

優しさ:7000


「このようにすると皆様のステータスを見ることができます」


ザワザワ。


クラスメイト達はステータスを確認し始めた。


俺もする事にした。


名前:時雨 優花

レベル:1

体力:1

攻撃力:2

防御力:3

魔力:2

敏捷:2

コミュ力:0

顔面:-254

優しさ:3


(なんだ、このステータスは)


困惑する。


見慣れないステータスがいくらかあったけど、自分の圧倒的なステータスの低さに驚いていた。


そして、周りではこんな声が聞こえる。


「見ろよ!俺攻撃力200もあるぜ!」

「おいおい。俺なんて攻撃力300だはw」


俺の中で焦りが募る。


みんな初期ステータスがそこそこ高いらしい。


そんな中俺だけゴミみたいなステータスだった。


女神は説明を続ける。


「これから皆さんには勇者として異世界で活動してもらいます。そして、ここではその前にある程度のステータス振りを行うことができまーす。ステータスポイント100を皆様に与えます。それで自由に振り分けてみてください」


そう言われてみんなステータスを降り始めた。


楽しそうだった。


一方俺は自分のステータスを見て固まっていた。


(いったい、どうすれば)


そう思っていた時だった。


【ステータスリセット】


という文字が見えた。


ステータス画面の右下に小さく書いてあった。


俺は少し考え、リセットした。


【リセットボーナスが発生しました】


(え?)


【ステータスポイントを9999付与しました】


ステータス画面を見てみると俺の振り分けに使えるポイントが100から9999になっていた。


嫌でも聞こえてくる。


「どういう振り分け方するー?」

「やっぱりバランスじゃない?レベル上がったらそのうち他のステータスも上がりそうだしねー」


俺は少しだけ考えて答えを出した。


(俺は知っている。一番大事なものって結局見た目なんだよな)


1番下の方にある項目を選んだ。


【顔面】のステータス。


【顔面に振る数字を選択してください】


1→????? MAX


となっていたので俺は迷わずMAXを押した。


【1→9999でよろしいですか?】


俺の答えは決まっていた。


迷わず、これでステータスの振り分けを終える。


次の瞬間だった。


俺の体がぐにょーんと揺れて、そして。


次の瞬間クラスメイトの視線を俺は集めていた。


そして、あの女神の視線すらも俺は集めていた。


ペタペタ。


顔を触ってみた。

明らかに顔が変わったような感覚があったからだ。


(ニキビが消えてる)


俺は慌ててポケットからスマホを取りだした。


黒い画面に映るのは知らない顔。


(誰だこいつ)


鼻は高くスラッとしていて、目は二重。


坊主だった髪の毛は何故か生え揃い、肩まで伸びていた。


しかもとても似合っている。


俺が顔を上げると女神はビクッとした。


分かる。


今この女神は明らかに女の顔をしている。


そして、周りからの女子の反応が全てを物語ってる。


「ちょっと?!誰あれ!めっちゃかっこいい!」

「遅れて召喚された人かな?!めちゃくちゃかっこいい!」


そんな声が聞こえる中俺は女神様に近付いていく。


一歩近付くと目の前にこう表示された。


【好感度上昇】


もう一歩歩く。


【好感度上昇】


歩く。

歩く。

歩く。


【好感度上昇】

【好感度上昇】

【好感度上昇】

【好感度上昇】

【好感度上昇】

【好感度上昇】


そして、俺は女神様と2人で話せる距離まで近付いた。


「女神さん。質問がある」

「な、なんでしょう?!なんでも聞いてください!」


俺はにっこり笑ってこう言った。


「割り振れるポイントの量を"俺だけ"増やして貰えませんか?」

「喜んで!」


【女神からステータスポイント500を受け取りました】


俺はそれを見て続けた。


「えー?これだけですかー?」


俺がそう返した時だった。


荒尾が言った。


「そ、その声……お前」


俺を見て指を指していた。

震える手で俺を指さして見ていた。


(気付かれたか)


俺は先に女神様に言って先手を打つ。


「俺以外の奴のステータスリセットの使用を禁止してください」


ボソッと言うと


「喜んで!」


ガシャッ!


何かがロックされる音が聞こえた。


これで誰かが俺のようにステータスリセットボーナスを貰うことは無い。


そのまま俺はもう一度女神様に言った。


「おかわり欲しいなー?」

「も、もう無理ですよー。公平さは大事なんですー」


そのとき、荒尾がまた叫んだ。


「時雨だろお前」


そう叫んで荒尾はクラスメイトに聞こえるように言った。


「騙されるなお前ら!あいつは俺たちのクラスの腫れ物の時雨だぞ!」


そう叫んだが荒尾のことを冷めた目で見るやつが多かった。


それどころか女子の反応はこれだ。


「えー?あれ時雨くんなんだー♡」

「私前から思ってたんだよねー。時雨くんってやっぱり隠れイケメンよね♡」

「時雨くんこっち向いて!」


1人で取り残される荒尾を見て俺は女神様に言った。


「女神様。あれは俺たちの仲間にふさわしくありません。あれが勇者なのですか?」

「のーーーー!!!!あれは勇者ではありません。性格の悪い、ただの反逆者です」

「和を乱そうとした罰が必要だよね?」

「はい」


女神は荒尾を見て呟いた。


【ステータスオールマイナス】


すると、荒尾の顔はみるみる変わっていく。


名前:荒尾

レベル:-100

体力:-100

攻撃力:-100

防御力:-100

魔力:-100

敏捷:-100

コミュ力:-100

顔面:-100

優しさ:-100


それから女神は言った。


「あの反逆者からステータスを徴収しました。これはあの反逆者のステータスです」


【女神からステータスポイント3000を受け取りました】


俺はこのステータスを他のステータスに均等に振った。


「ありがとう。僕の女神様」

「きゅーん!!!!」


女神から離れると女子が集まってきた。


「時雨くん!結婚して♡」

「時雨くん!私を見て!」


だめだ。

このままじゃ話が進まないな。


とか思ってたらその中に1人知っている顔を見た。


倉石 涼音。


彼女も女の顔になっていた。


俺は倉石に声をかけることにした。


「倉石さん」

「な、なんですか?時雨様」

「僕は君を選ぶよ」

「きゅーんっ!!!」


バタッ。


その場に倒れる倉石さん。

そして、息が激しくなった。


「はひゅー、ひゅー、」


女子が心配してこう言った。


「たいへん!倉石さんが心臓麻痺してる!過呼吸になってる!呼吸ができてないよ!」

「倉石さん死んじゃダメ!まだ何も始まってないよ!」


(……マジかよ)


そう思っていたら女神様が近付いてきて倉石に回復魔法を使ってくれた。


それからこう言った。


「時雨様。たいへん申し訳ないのですが、追放してもよろしいでしようか?」

「なんで?」

「あなたがイケメン過ぎて女子が危険なのです。きゅーん。このままではあなたがイケメン過ぎて全員死んでしまいます」

「そうか。なら、仕方ない。俺もクラスの輪を乱すつもりは無いからね」


俺はそう言ってクラスメイト達から離れた。


「こほん」


女神様は咳払いしてからこう続けた。


「拝啓、時雨大明神様。たいへん申し訳ないのですが、イケメン過ぎる罪であなたを追放処分とします。先に異世界に向かってください。きゅーん」


女神がそう言った瞬間、俺の足元に穴が開いた。


俺はその穴の中に吸い込まれていった。


次に目が覚めたら俺は中世ヨーロッパ風の街の中に立っていた。

もちろん、視線は集めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る