『傷を舐め合う』

ヒニヨル

『傷を舐め合う』

あなたが隠した

胸のキズに

私は気がついている。


ふたりきりになって、

私が耳元で囁くと

あなたは服を脱いだ。


温かいあなたの

上に乗って

私は舌を出す


痛むところを全て教えて。


昔、私の涙を

不器用な指先で拭ってくれた。

猫みたいに戯れあって

月が沈むまで

寄り添ってくれた。


今度は私の番


あなたは触れると

顔を歪めた

笑っているような、泣いているような

そんな表情で私を見つめる


私はあなたの胸に

キスを落とすと、

舌を這わせた

あの時の、あなたみたいに。


私たちは退化している


人間のように時を待てず

舐め合う術でしか

悲しみの、癒し方を知らない。



     Fin.





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『傷を舐め合う』 ヒニヨル @hiniyoru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説