時の魔女が住む屋敷

碧山

第1話コッポル大森林に潜むもの


 コッポルの朝は早い。日が昇り始めると村の人々は目を覚まし活動を開始する。

 パオは父のヨーザスを叩き起こして厚着をして家を出た。

 パオの家は村々と少し離れた丘の上にあり家を出ると村の一部が見渡せる。

「ねぇ、パパあれなぁに?」

 パオは森の入口の門の上の部分を指差す。

「冬のお祭りが近いからコッポル様にも来てもらうために飾り付けをするためのクレーンって道具だよ」

 ヨーザスの仕事は門番でパオが学校へ行っている間森からの獣や族の侵入を備えるために見張りをしている。

「違うよ。あれだよ。」

パオを指をツンツンと突くように指をさすがヨーザスにはわからなかった。

「クレーンのことではないのか?」

 パオは強く頷きその上の尖ったのだよというがヨーザスには門から飛び出ている木々しか他には見えないみたい。

「パオすまんがパパには見えない」

 パオはもういいといい門の方へ走り出す。

 コッポル大森林の冬は多くの雪が毎年ふり雪の層ができる。冬の朝は男達総出で雪かきで朝が始まる。

 パオは門の入口にいる番兵の下へかけて行く。

「バーネットさん森から見える尖ったものってなぁに?」

「よぅ、パオ!早起きだなぁしかしなんだって森から何か見えるだと!?」

 番兵の皆に近況感が走り出す。

「パオ、どのへんに見えた?」

「家を出るとね門の方に尖ったものが見えたの昨日にはなかったんだけど」

 番兵の一人が門の横にある高台の梯子を登りきりあたりを見渡すが何も見えない。

「パオよ嘘ではないのだな?もし、族だったら一大事だからな」

「バーネットすまない!パオが飛び出してしまって」

 ヨーザスがハァハァと息を切らしながら走ってきた。

「ヨーザス!お前には見えたか?」

 バーネットとは焦った様子で聞くがヨーザスは横に首をふる。

「パオそれは、今も見えるのか?」

「うん。本当だよ嘘じゃないもん!」

 パオは泣きそうになりながら叫ぶ

 ヨーザスはパオに抱きつき"わかってるよ嘘じゃないよ”なと言い聞かせ頭を撫でる。

 梯子をおりてきた番兵が一本の枝をパオに渡して雪に描いてくれとお願いすると門の上から尖った屋根と壁には丸い模様の描いた家を描いた。

 「これはコッポル様かも知れねえな。」

 日陰で座り込み酒瓶からちびちびと酒を注いで朝っぱらから酒盛りをするおじさんが言う。

「おじさんも見えるの?」

 パオはおじさんの元へいき目を輝かせて聞く。

「今は見えぬが坊主くらいの時には見えた。」

 おじさんは顔を赤くしてさくりをしつつパオの目を見て言う。

「坊主会いにいくといいぞ見えるのは今日だけかも知れない。わしは一日しか見れなかった。」

「爺さんは行かなかったのか?」

 バーネットはパオの後ろについてお爺さんの話を聞く

「誰も信じてはくれなかったからな。」

 お爺さんは寂しそうにつぶやき酒をもう一杯飲む。

「パオ!ヨーザスはこれからお仕事だから行けないが俺とそこのレオンがついていく」

 仕事上がりの手続きをしていたレオンが俺もですか?と飛んで来るがパオの輝く目を見て仕方がないと覚悟をする。


 ヨーザスが仕事へ行くとパオは一度家に帰りパオの愛用のくまのリュックにヨーザスが用意してくれたお弁当とお茶の入った瓢箪を入れて家で待ってい

た。

[ドンドンドン]

 ドアを強くノックする後に「パオ!バーネットだ」との返事がありドアを開けると鉄の鎧でおおった二人の姿があった。バーネットの腰には短刀が2振りレオンは背中に弓を背負っていた。

「パオすまんな怖いものを見せて万が一あるからなパオはレオンの側を離れるなよ」

 バーネットは右手で荒々しくパオの頭を撫でてヨーザスに借りた家の鍵を占めて門を出る。


 門を出ると大森林に入る一本の通路がありその左右には30〜40メートルにも及ぶ木々に囲まれており光は入ってこない。

 バーネット先行して松明を左手に持ち前進して、後ろにレオンがパオの乗ったソリのひもを引く。入口でパオが指を指した先には村の資源となる湖がある。

  湖には多くの草食動物が憩いの場として利用しており、湖周辺は暖い日のおかげもあり雪がなく緑の草で被われていた。

「レオンさんおりてもいい」

 パオはレオンのズボンを引っ張って呼びレオンに一度抱っこされて草原におろした。

「バーネットさんの目の前に尖ったお家の扉がある」

 バーネットとレオンはパオの指差す先を見るがそこには大きな大木があるのみだ。

 バーネットは小走りでその大木に近づいて触るが木の硬い表面だということのみ感じられる。

「ポオここにあるんだな。」

 バーネットはパオの顔を見て再度確認を取るがパオは頷く。

「ここに扉があるの」

 パオはバーネットの元に走っていき扉に触れ、ドンドンとドアを叩きバーネットを横目に見るとパオは姿を消した。


 真っ暗な暗闇に迷い込みパオは転んでしまった。

 ころんだ痛みで泣きそうになりながらぐっと堪えて立ち上がると"ぼっと”左右に備え付けられた松明に炎をが灯る。

 目の前には螺旋階段があり、登ってこいと言われてる気がしてパオは這って登っていく。登るにつれて徐々に階段が登りやすくなり次第に片足を交互に段数を登っていく。

 しばらく登り上の階が見え始めた頃、下をふと覗くとはるか下にある。

 下を見てしまったため恐怖でヨーザス呼ぼうと思ったがここにはいない。バーネットもレオンもだ。

恐怖と寂しさで一段一段が重くなる。

 最上階へと登ると視界が高くなり、背中のリュックの肩紐が片方敗れたため右腕で熊を抱く。

 床一面に小さな青い花が一面に咲き、奥には丸い天蓋付きのベッドがある。

「何だ、客か」

 ベッドからモゾモゾと動き黒いドレスを着た女性が現れた。

「よく来たな、我が家が見えたものよ。おや、懐かしいな」

 ベッドからおりてきた女性はパオ前に立ち顔を触る。

「おかえり、コッポル。悪しき者と相打ちをして1000年よく帰ってきた。」

 女性はパオの頭をなでてくるがパオには彼女を知らない。

「貴方はだぁれ?」

 パオは一歩後ろに行き触れるのを拒否する。

「記憶がないのね。では、ここは時の時計塔で私の名はトロン時計塔の魔女」

 トロン…パオは何処か聞いた気はするが思い出せない。

 急に頭の中に思い出の断片が脳内を駆け巡り痛くなりパオは縮こまる。

「コッポル、ごめんなさい急に思い出さなくて大丈夫よでも、悪しき者の復活を感じます。」

 トロンはベット横の本棚から一冊の本を取出しパオの元へと戻り差出す。

"大森林を守護した者”

 字が読める。

 パオの住む村は文字が読み書きができるものは村長の家系のみでほとんどの人が使えない。10年くらい前に異界の者が怪我をしているを救った時にお礼として数字とお金を教えてもらい村にドラという通貨が誕生し数字は皆読める。

 くまのバックを置き本を開くとページは切り離されて上空に舞いパオの脳内の断片的な記憶はピースが揃ったかのように綺麗に揃い出す。

「トロンありがとう。すべてを思い出した。」

 本からページが無くなった時、パオの姿はなく2m近くあり当時の衣装で身を包み大人びた姿になっていた。

「グルルル」

 パオの持っていたくまのバックも姿を変え、体調2mほどのあ関節にコテをつけた熊が横にいる

「コッポル、思い出したのですね。あとベアゴも、貴方はコッポルを守っていたのですね」

 トロンはベアゴの頭をなでる

「でも、パオの姿でこの時の階段を登って来たので10年近い年月が経っており悪しき者が直ぐ側に来ているかもしれない」

「わかった。すぐに行こうか」

「待ってください」

 トロンはコッポルに声をかぶせベッドの下に手を伸ばして一つの木箱を取り差出す。

「コッポル忘れ物」

 木箱の中には過去にずっと使っていた折れた剣と腰巻きが入っていた。

「そうだったこいつを忘れていた」

 コッポルが剣を持つと折れた先が現れ腰巻きをつけて剣を指した。


「では、行こっか」

 コッポルはトロンを抱きかかえて時の階段を降りていき扉を開くとパオの時にはあった綺麗な湖の水は枯れ生い茂っていた草花も枯れて痩せた土があらわになっていた。

「始まっていたね」

 残った木々や草花も触ると朽ち果ててしまい森林の危機を表している。

 枯れ木が衆くなり以前の様に森は暗くなく快晴なお空は見えるが物寂しい感じがした暗い森の中には動物の鳴き声が響き渡り生命を感じたは今は全く無い。


「怯むな!何としてでも突破させてはならない!」

 遠く枯れ木の向こう側から金属が弾く音や叫び声が聞こえる。

 叫びの方へ向かうと見慣れた男性たちが門の防衛の為剣と盾を持ち獣達と応戦している。

 コッポル大森林には獣はいるが人を襲ったりはめったに無く特に紫のオーラを放った四足歩行と二足歩行の獣はいない。

 戦闘は長期戦七だろう。兵士が横たわる向かいに四足歩行のアタックブルと二足歩行のジャングルベアーが横たわっている。

「洗脳されている」

 ふと、後にいたトロンがコッポルの前に出て地面に大きな丸を杖のそこで描く。

「我、時ノ女神ガ命ジル。岩石ノ番兵ヨ゙人々ヲ守リ給エ」

トロンの前に時計の文字盤が光り輝き現れ、時針、分針、秒針が回りだし、それぞれが3周した頃針は頂点で止まり鐘が鳴り響き、周りのものは警戒しお互いに距離を取る。

 地が揺れ始めた次第に大きくなる。それに同調してトロンが描いた円の中から白い岩が徐々にあらわになり3メートル程の魔人が現れ前進していく。

 立ちはだかる木々を気にせずなぎ倒していき、紫のオーラを放った獣目掛けて接近し、握りこぶしをお見舞いする。

 紫のオーラを放った獣達は気を失い横たわりオーラが消えていく。

 兵たちは警戒を緩めず魔人に剣を向けるが魔神は役目を終えたので足元からボロボロと崩れ去っていく。

「そこの者共無事か」

 トロンは警戒態勢に入っている者達はの前に入り話しかけるが彼らは剣を向け警戒態勢を解かない。その中には髭を蓄えたバーネットや老けたヨーザスの姿もあった。

「何者だ!我が村に脅かす者は切るぞ」

バーネットは剣を前に出して一歩前に出る。

「魔獣を撃退してくれたことには感謝するが今村にはいれることはできない。」

 「トロン行こう、悪しき者の場所はここではない」

コッポルはトロンの手を引いて門から距離を取る。

「パオ!」

 ヨーザスはパオの気配がして振り向くがそこには幼いパオの姿はなく村へと帰る。

(父さんすいません。)

 門に背を向けて歩き出した。

 ベアゴの背に乗りトロンとコッポルはコッポル大森林にある大洞窟へきた。大洞窟は暗く静かで以前来たときと変わらなかった。


 大森林に闇が襲ったのは1000程度前大森林に一人の悪しき者がやってきた。悪しき者はこの大森林を我が物としようとした獣を従え木々や草花を枯らした。

 そこで大森林で村の力自慢のコッポルは悪しき者の討伐に立ち上がり命を引き換えに倒すと悪き者は村へと置き土産を残していった。

 "闇の侵食”

 大森林は徐々に侵食され植物は枯れ湖は汚染され獣達も汚染され我を失っていく。

 洞窟は奥に進むと異臭が立ち込めて洞窟内で滴る地下水には酸が含まれているのか滴る着地点が溶けている。

「コッポルが死んだから村の者はわからなかったのね」

 トロンは浮遊魔法を使いつつコッポルの後ろについていく。獣の洗脳を恐れてベアゴとは入口で別れて進行してきたのは正解だったらしく洞窟に住む温厚な動物たちも洗脳され襲いかかってくる。

 

 洞窟の御口には玉座がありそこには人の形をした泥状の物が足先から入口へと流れていった。

「よく来た正義のモノヨ私は闇世界を染めるもの君に殺された者の置き土産さ」

 頭の中にコトバが流れてくる。以前に退治した者の声質を使って語りかけてくる。

「残念ながら僕自身の意思ではこれは止められない。僕は起動してしまうと完了するまで止まらない働き者なんだ。」

 目や口がないのっぺらぼうの顔をあげてニコッと笑った様だった。

「君達がやめさせたいなら左胸に核があるからそこを目掛けて剣を突き立ててくれれば僕の業務は強制終了され自由の身になれるんだ。」

 闇は蹲っていた体を起き上がらせて左胸を見せると黒い玉から体を覆っている泥を吐き出している。

「私の名はトロン。申し訳ないが君の仕事をやめさせないと森が死ぬしぬと他のものも息絶えぬのだ。」

 トロンは杖を出し闇の方へと向ける。

「君の技では死ねない。僕はそこの男の剣でしか死ねないそれはこの森でできたものだ。僕もアイツによってここで作られた。同じ場所で生まれたものでしか終わらせれない」

 トロンは闇の言葉を無視して魔法球を飛ばすが闇に飲まれるだけで効果がない。

「トロン僕がやるよ」

 コッポルはトロンの右肩に手をおいて前に出る。

「闇よ。すまない君を終わらせる方法はこれしか無い様だ。」

 腰にさした剣を握ると折れた刃先が蘇り構えコッポルが闇の前までに走り込み剣をつきたてる。

 玉にヒビが入り砕け散ると泥は溢れ出てきて濁流のように襲いかかる。

「ありがとう僕は100年以上働き続けて疲れたんだこれで自由だ。」

 泥の濁流によって二人は入口まで押し流され飛ばされた。トロンは即座に防御陣を貼ったため泥に侵されず空中着地をしたが、コッポルは泥に染まりつつ地面に叩きつけられた。

「コッポル大丈夫?」

 泥の溜まりからは返事がない。

トロンは泥をかき分ける。泥は触ると触れた部分にしびれがありあまり長期に触ってはまずいと頭によぎるがそれと同時に全身に浴びたコッポルが心配になる。

 泥をかき分けると杖先に硬いものが当たる。何度かつつくと掴まれ引っ張られるが即座に自分の下半身に魔法をかけて踏ん張ると一人の物が起き上がってきた。

「コッポル大丈夫なのね!」

 ふと顔を合わせると目元に丸いあざをつけて顔色を悪そうにしていたため泥溜まりから引っ張り出す。

「トロンすまない…かなりの泥を浴びてしまった。体はしびれ下半身が動かない」

 泥の浴びすぎた症状なのか肌は部分的に紫に染まる。

「でも、良かった。今度はあなたが生きていた。あのときは私がやるつもりだったのに貴方が飛び出して行くんだから」

 トロンは涙を流しながらコッポルを叱る

「すまないでも、僕は今回は生きていただろ」

 トロンの説教はこの後も長々と続いたが動けないため聞くという選択肢しかなかった。


 あれから年月が経ちコッポル大森林は徐々に緑が戻ってきた。村には感謝ということで一人の少年像がたった。村の者には大森林に何が起こったのかはいまだに原因はわかってはいないが一人の行方不明になった少年のお陰で森が帰って来たのだと。

「トロンそろそろ部屋に散らかった本を片付けてくれよこれじゃ僕が進めないじゃないか」

 椅子に木でできたたいやを左右につけて乗り物にコッポルは腰掛けてベットで寝そべるトロンに言う。

「後でね。」

「それはさっきもきいた今やってくれよ」

 何気ない会話が時計塔内部に響き渡る。

 正午の鐘が大森林に鳴り響くき村生活するものは家を出て仕事の手を止める。


 あれから村には時間という物で管理されるようになった。今まで太陽の位置で管理していたのが時間というもので正確に管理することで不平等さがなくなった。

 時間だけではなく村の規模が大きくなったので記念に英雄の名前を借りて村の名前にすることにした。それは村が国になるときにも使われた。

 英雄の誕生した国パオと。



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時の魔女が住む屋敷 碧山 @AOIKAKu

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