第9話 兼 後日談

「ふ、な、づ、き、さ〜ん!?また野菜残して!子供ですか!?」

「いや、ピーマンって美味しくないじゃないか…」

「肉詰めなら食べれるって言ったのに、綺麗に肉だけかっさらって!」

「それはぁ…」


俺が年下だよな!?

俺はあんたの母親になった覚えはねぇ!!


『舟月また怒られてるー』

『ピーマン、僕も食べれてたよ?十才の時には』

「ぐうぅ…」


いや、『ぐうぅ…』じゃないんだが?

困るのはこっちなんだが?

『宿追い出されたから、監視任務兼ねて、養って!』って押しかけてきたのはあんただろうが!?

金を持ってきてくれたのは嬉しいが、野菜を残すのはやめてほしい。心底。


「追い出しますよ?」

「いやああああああああ!!それだけはやめてえええええええええ!!」

「うっさい!!」


ほんっとにもう!!

子供じゃないんだから!ガチで!!


「あなた38でしょう!?ピーマンぐらい食べてくださいよ!」

「う…、」


大人気ないとはまさにこのこと。

あれから約1ヶ月が経ち、だんだん舟月の性格がわかってきた。

まず子供。野菜(ピーマン、ナス、ゴーヤ、セロリ、その他もろもろ……)やレバーがムリ。

残す←コレマジ困る。

そして料理も家事もできない。

レンジを爆発させた。

勘違いするなよ、レンジの中身ではなく、レンジ爆発させたのだ。

信じられる??

初めて見たもん、レンジから火が上がる光景。

修理代も弁償も全部舟月に出させたんだが、涼しい顔してやがる。

『速報、舟月は金持ちだった』

舟月のお金の金額を聞いた俺に、ぴっっっっしゃーーーーーーん、と雷が走った。マジで。

ちょっとお願いしてみたら家買ってくれた。軽く。マジ??

IHコンロにセキュリティ固め、何から何まで揃った一軒家。

それもさ、幽霊たち用の小型映画館ミニシアターあり。

ちょっとした豪邸じゃない?

まぁでも、管理するのは全部俺なんだけどね☆

え?知ってた?

あっはは、だよねぇ〜。

でも、おかげさまでけっこう潤ったしね。


「あーもー、ほら、これお弁当!!さっさと出勤してください、遅刻しますよ!?」

「え、奏は?」

「俺は今日休みなんです!忘れました!?」

「あ、そうか」

「ほらほら急いで!!」


舟月の背中を押してドアから閉め出す。

まったくもー、毎日毎日、子供かっての!!


『かなでは、ピーマンたべれるの?』


ぽんっ、と現れたセンが俺に聞く。

前のアパートでは、ぎゅうぎゅうで視界がやばくなるので、出てくるのは10人までと決めていた。

だがこの家なら、30人くらい出せる。

みんなのびのびとしている…、はず。


「食べれるよー。」

『きらいなたべものは?センはね、なすびがきらいだった』


どうやらセンは、かなりの甘えたらしい。

シトリンがぎりぎりと爪をかみながらセンを睨んでいる。こわ。

化けの皮が剥がれまくってるぞ。

そしてセン、にやりと笑って煽るんじゃない。

ブチギレてるから。


「俺はねぇ、らっきょうがムリ。あれだけはほんっっっっっとにムリ。」

『らっきょう…?』

『かなでー!!あそぼー!!』

「ぐっふぅ」


ついにシトリンが突進してきた。

でも俺の腹に突っ込むのはやめてね?

胃の中の朝食がリバースしそうだったから。


『シトリンくん、ルビーおねえちゃんがあっちにいるよ?』

『ほんとだー!かなで、いっしょにえいがみよう!』

『かなで、えいがのまえにセンとやひろとあいすたべようよ!!』


あっからさまに取り合ってる。

うーん、可愛い。

眼福ではあるが、ばっちばちの雷が見えるからな。


「じゃあ、八尋を呼んで、みんなでアイス食べながら映画見よっか」

『『っ!!』』


奏を独り占めできないのは嫌だが、それ以上にアイスと映画が魅力的すぎる、そう顔にありありと浮かんでいる。

ちなみに幽霊は、主人から許可を得ると実体化することができる。

ただこの場合、主人おれに多大な霊力消費が要求される。

だが俺は霊力の化け物なので余裕である。


「ほら、センは八尋、シトリンはルビーを呼んできて?準備してるからさ」

『『………、うん!』』


お互いに『奏に近づくんじゃねぇぞ、ぉおん??』と睨みを効かせ合い、びゅんっ、と飛んでいった。

これは…、競争になるなー。

俺はクスリと笑い、ミニシアターへと足を向けた。







次の瞬間、


『『かなでー!!やひろ(ルビー)連れてきたー!!』』

『『どうも』』

「いやはっや。」

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夜の神様、人間になる(意味深)。 夜風 天音 @Serene0204

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