第15話 再度婚姻届
最近読んでいる漫画はラブコメ、別に恋愛を欲している訳ではないけど、可愛いヒロインを見ていると心が浄化される。雪にはいつも恐怖が勝っているので、安らぎは必要だ。
「隼也、来なさい」
下から母さんの声が聞こえたので漫画を閉じて下に向かうと、机の上に紙を置いて母さんが静かに座っていた。僕も座り言葉を待っていると、
「あなたも高校生だし別に良いけど、これはまだ先だから雪葉ちゃんとは程よい付き合いをね」
「ん?なの事?」
「さっき見た婚姻届だよね」
「これよこれ」
机に置かれた学校からの手紙の下に、しっかり婚姻届があり、そこには佐藤雪葉の文字が、
「......」
「雪葉ちゃんが私の子供になるのよね」
「イヤイヤ、そんな事ないけど」
「恥ずかしいけど嬉しいわね」
母さんは台所に戻ったが、僕は婚姻届を持って又しても佐藤家に向かった。、雪葉が何を考えているかを再度知りたい。
ピンポーーン、
「隼どしたの?」
「その声は秋子さんですか」
「そうだよ」
「雪葉居ませんか?」
「........居ないよ」
雪葉は家に居ないのか。なら秋子さんにこれを渡そうかな..........違うな。これは僕達の問題だから今は帰るか。
「すいません。お邪魔しました」
「はいよ」
家に戻り、婚姻届を部屋に置いてまた漫画を読もうとしたが、婚姻届が頭から離れない。僕は雪葉が坂井の事を好きだと思っていたので、不覚にも恥ずかしくなった。雪葉は僕の事が好きなのかな?
「うぅぅ」
僕自身、雪葉とは少し距離を感じていたが、それは僕の勘違いなのだろうか。それに最近雪葉との接点も増えたし、もしかしたら雪葉の失恋も間違いなだけで、
「あああああ悩みが増えていく」
ここは明日雪葉に聞くとして普段通りに過ごすか、一旦悩みを忘れて風呂に入った。そして夕食を食べて両親には微笑まれていたが、僕は無視して部屋に戻り漫画を再度読んで寝た。
「隼、隼起きて」
「んんん........誰?」
「........」
朝起こされて軽くビンタをくらった。こんな刺激的な目覚めを求めていない。しかし、雪葉には聞きたい事があるので、
「雪葉、これ何?」
「婚姻届」
「何で僕の渡すの?」
「好きだから」
分かっていたが、少し戸惑ってしまった。長年一緒に居るけど、こんな雪葉は初めてだ。真剣な顔で好きと言ってくれたのは嬉しいけど少し怖い。
「返事は?」
「そうだよね」
「そうだよ」
「僕は............昨日雪葉の思いを少し分かって自分自身の思いを現在進行形で考えているから今は何も言えない」
「は?」
「え」
好きだと言えば良かったけど、フワフワした思いを雪葉には言えない。けど失敗したらしい。雪葉は瞬きせず、こっちをずっと睨んでいる。仕方ないけどやっぱり怖い。
「これを見て、この手紙、時雨さんの手紙、これのせいで答えられないの浮気者」
「何で持ってるの」
「焦った焦ったよね、こんな物」
雪葉が坂井のラブレターを破ろうとしていたので、やばいと感じて雪葉の腕を握ると、雪葉も力を入れて抵抗するので、僕は何故か押し倒す形になってしまった。
「そんなに時雨さんが良いの、ならさっき私の事嫌いって言いなよ。言っても絶対に逃がさないけど」
「何を言っているんだ。大切だけど今は落ち着いて」
少し落ち着いた雪葉は手紙を離してくれないが、動かなくなったので顔を見るとさっきとは違い明日世界は滅びそうな絶望した顔をしていた。
「大丈夫?雪葉」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで、なんで私の思いは伝わっていないの」
「ええええ、伝わっているよ」
「なら好きって言ってよ」
手紙をベットに置いて雪葉を起こし、少し泣いている雪葉の背中をさすって僕は多分勘違いしている雪葉に向かって、
「この手紙は坂井のラブレターで僕のじゃないよ」
「本当?」
「うん、それに........雪葉の事は嫌いじゃないよ」
「好きって事?」
正直分からないけど多分好きに近いと思う。けどまだ好きとは言えない。曖昧な気持ちは両方に良い結果を示さないと感じたので、少し申し訳ないけど、
「今は嫌いじゃないとしか言えない」
「..........分かった。けど私は重いよ」
「理解してます」
ずっと怖い存在だったが、今は違う意味で怖い。ラブコメ漫画でよく見ていたが、これがヤンデレなのか、二次元なら興奮していたが、今は違う。間違ったら命が危ういから。
「それじゃあ学校行こっか?」
「そうだな」
満面の笑顔を見ながら僕は従う様に向かった。この笑顔を崩したら僕は死ぬと感じ取れたので従う以外の道が存在しなかった。
クールな幼馴染が失恋したので相談に乗ったら婚姻届を渡されました ブラックコーヒー @Kuro4561
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