この花を誰が徒花と呼ぶものか

徒花とは、咲いても実を結ばずに散ってしまう花のこと。むだ花ともいわれる。
ただし、そう決めたのは花自身ではない。

主人公の火宮華(ひのみやはな)は、女性だからという理由で鍛冶師になることを認めてもらえない。女性だから鍛冶師の技を、伝統を継承できない、実を結ぶことができないと決めつけられているのだ。
鍛冶師になりたいと願うことすら無駄であるように、徒花と咲いて実を結ぶことなく散るように、決められてしまっている。
この物語は、そんな押しつけに抗う物語だ。

もう一人の主人公である一条尊(いちじょうたける)も、由緒ある一条家を守るためと父親から政略結婚をするよう言い渡されるものの、これを断る。
物語の終盤、仇敵との戦いで華は腹部に重い傷を負う。勇み足気味に深読みするが、華はこれが原因で子どもを産めない身体になった可能性もあるのではないか。それでも尊は華を選ぶ。華は一条家の跡取りを成すことができないかもしれないのに。
世間が華を、子を成せない徒花と決めつけたとしても、尊は抗っただろう。華は徒花ではない、と。

花は自ら徒花と名乗らない。
美しく強い花を残そうとする花を、誰が徒花と呼んでいいものか。