第19話

ダンジョンを進んでいく。

後ろからヒソヒソと声が聞こえる。


「強キャラさんマジでやべぇな」

「俺らいらなくね?」


そんな会話が聞こえる中金肉が話しかけてきた。


「強キャラさん。なんでそんなに強いのにダンジョンには中々来ないんですか?」

「少し事情があってな」


ゴクリ。

背後から唾を飲み込む音。


「出たっ。強キャラ特有の事情」

「この人あれじゃねぇの?政府が極秘で研究してた超最強スーパーマンとかじゃねぇの?それで、バレちゃいけないとか」

「強キャラさんの悲しい過去はそれだったのか」


そんな妄想が聞こえてくるが俺は否定しておく。


「個人的な事情だ。今は少し状況が変わってきたんだ」


そう言うとまた反応された。


「強キャラ特有の状況変化」

「思ったより強キャラだった」


俺の強キャラ扱いはどうにかならないのだろうか?


そんなことを思いながら歩いてるとシロが俺にスマホを向けてきた。


「なにしてる?」

「一応安全確保のための配信。強キャラさん前に一度シクッたでしょ?」


魔王との戦闘のことだろう。


「あの時はどうにかなったけど、今回はどうなるか分かんないから」

「好きにしてくれ」

「うん」


配信が始まったらしい。


『シロちゃんの配信きたっ!』

『あれ?強キャラさん?』


さっそく機械音声が聞こえてきた。


コメントの読み上げが行われてるんだろう。


俺は無視して歩いてるとまた機械音声が聞こえた。


『強キャラ特有の多くを語らないスタイルすこ』

『強キャラは背中で語るからな』


その時俺の武器についてのコメントがあったようだ。


『あれ?強キャラさん、剣持ってる?』

『前は銃だったのに』


シロがにんまりして話し始めた。


「強キャラさんのメインウエポンは剣だよ、むしろ前は銃持ってたんだって驚いたよ」

『まじかー』

『どれくらい強いの?強キャラさんの剣』


シロは悩んでこう言った。


「強キャラさんが剣持つと誰も止められないよ。私ですら3秒後くらいにたぶん死んでる」

『www』

『言い過ぎでしょそれは』

「ほんとなんだって!鬼に金棒、強キャラさんに剣だよ」

『新しいことわざ作るなwww』

「ほんとだもーん!強キャラさんに剣持たせたらチーターの出来上がりなんだって!」


シロが叫んでる中コメントがまた聞こえてくる。


『てかさっきから雑魚モンスター全然出なくね?』

「強キャラさんにビビってるんだよ。強キャラさんの全盛期は歩いただけで雑魚モンスターが死んでたよ」

『草www強キャラ過ぎるだろwww』


俺はやがて大ボスの扉の前に着いた。

異世界で散々ダンジョンには来ていたから本能的に最後のフロアだって分かった。


スッ。

居合切りのポーズを取ると。


ブン!

剣を横に振った。


『イメトレ?』

「ぷぷーっ。強キャラさんがイメトレなんてすると思ってるの?」


シロは歩いて扉を開けた。


その瞬間。


グラッ。

中にいたドラゴンは地に落ちた。


消えていく死体。


『?????????』

『はぁぁぁ?!!!!』


シロが口を開いた。


「強キャラさんに剣持たせたらやばいって意味分かったでしょ?」


『壁越しに見えてたのか?』

『いや、そもそも剣の長さと射程がぜんぜん合ってないんですわ、どうなってんの?www』


グラグラグラグラ。

ダンジョンが揺れ始める。


崩壊の予兆である。


「シロ。これやるよ。俺にはもう必要のないものだ」


クリスタルブレイドを渡した。


「え?やるよって言われても、ってちょっと?強キャラさん?!」


俺はそのまま何も答えずさっさと走ってダンジョンの一番奥の部屋に向かった。


ワープゾーンに入ると体の転送が始まる。

これで群生ダンジョンの元を断ち切ることができた。


これ以上ダンジョンが増え続けることは無いだろう。


スゥゥゥゥゥッ。

俺の体は光に包まれた。


外に出ると俺は野次馬が集まる前に近くの路地裏に入った。


それより少し遅れて野次馬が来ていたが、俺はすぐに家に帰ることにした。


少し遅れてシロからメッセージが届いた。


シロ:ちょっと帰るの早くない?!どこにいるの?


俺:今電車に乗ってる


シロ:えぇ?ちょっとくらい待ってくれてもいいぢゃん、ぶー


俺はそのメッセージに答えることなく、電車の座席に座った。


隣の女子高生たちの会話が聞こえてくる。


「強キャラさんまた出たんだって」

「うそーっ。会いたかったなー」

「あの中性的な顔でクールなのすごいかっこいいよね!感情もぜんぜんなさそうだしさー」


そんな会話が聞こえてきた。


思ったより話題になっているらしい。


というより、よく聞いてみれば、電車内俺の話題だらけだった。


「先輩聞いたっすか?強キャラさんまた出たって」

「聞いたぞ。あの子若そうに見えてかなりの死線を潜ってるようだ。ぜひともこのパーティに入れてみたいもんだ」


そうしてると降りる駅に着いたので降りた。


あったかい電車の中から外に出たので寒い。


自販機であったかい飲み物でも買うことにした。

コンポタ買ってそのまま帰り道を歩いてると後ろから声をかけられた。


「薫か?!」


タッタッタッ。


背後からダッシュする音。

振り返ると父さんが剣を持ってた。


「父さんか、それよりなに?その装備は」

「父さんな、職場からの指示もあって冒険者になることにしたんだ!」


「なんでまた?」


「父さんはな。強キャラさんに憧れてるんだ。お前たちを守れるようなでっかい男になりたいんだ。すごいよなー強キャラさんはお前と同じくらいの年齢だろうにあんなに強くてな」


父さんはそう言ってダンジョンのある方へ向かっていった。

マジで冒険者になるつもりらしい。


俺はそのまま家に帰ることにした。


家に帰ると椎奈が出迎えてくれた。


「お帰りなさい兄さんどこ行ってたの?」

「ちょっとな」


そう言った俺だったけど、どっと疲れて玄関で寝転んだ。


「どうしたの?お兄ちゃん」

「だるい。しんどい。めんどい」


俺がそう言うとスライムがやってきた。


「ぴゅいっ!ぴゅいっ!」


俺の体の下に潜り込んできてのそのそと動き出す。

運んでくれるようだ。


部屋に戻った俺をスライムが世話してくれる。


「ぴゅい〜」


濡れタオルの代わりというようにデコに乗ってくるスライム。

冷たくて気持ちいい。


そうしていたら椎奈が聞いてきた。


「熱?おかゆ、作ってくるね」


そう言って部屋を出ていった椎奈。

俺はその後椎奈に看病してもらうことになった。

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異世界帰りの俺、ダンジョンが出現した日本でダンジョンから逃げるように生きることにしたら各所で謎の強キャラ扱いされてましたっ?!~初めからめちゃくちゃ強いけどダンジョンには極力入らないようにします にこん @nicon

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