――貴方の『補機』になりたい。鉄道好きによる鉄道好きのためのドラマ。

本作は鉄道品質マネジメントシステム(RQMS)が適応された小説である。

心無い罵声から始まる本作の主人公は――『鉄道が大好き』というだけでクラスメイトから『いじめ』を受け続ける――和達 譲司である。

苛烈で目を背けたくなる程リアルな悪口の数々に読者も打ちのめされることになるが、そんな彼にもある転機が訪れる。
同じく『鉄道が大好き』な絶対零度の美少女の存在だ。
本作は彼女との出会いによって主人公の交流も広がり成長していくさまが描かれていくことになる。

お互いの『好き』を共有し関係を深める中で、同じ『好き』が高じた者同士が集まるある種のサロン『鉄デポ』に参加することになる。彼は持ち前の知識を発揮しいち早く溶け込めることができた。
年齢も違えば生い立ちも異なる仲間たちと『己の好き』を語り合う至福の時間は見ていて微笑ましい。
そして美少女とのデート(彼らは無自覚なのもポイントだ)も甘酸っぱく思わず頬が緩む。

しかしそんな彼らにも二度目の壁が訪れる。『いじめ』を受けていることを告白する辛さに悲観せずにはいられないが、そこでも美少女は支えとなってくれる。彼らは雨にも風にも負けないSL蒸気機関車のように鋼の意志を持って、『いじめ』とも立ち向かう決意をすることになる……。
気づけばそんな彼らを必死に応援している自分がいる。負けるな!と、そして物語のキャラクターも言う、最後に勝つのは「強い人」ではない、「負けない人」だと。

つまり諦めないことが肝心だ。

彼らの『好き』という内燃機関(内なるエネルギー)を蒸気に換えて、人生というレールから弾き飛ばされないよう、一直線に走ってほしい。


最後に本作の魅力を語るうえで外せないのは圧倒的な鉄道知識だ。読んでいるだけで「そうなんだ!すげぇ!」となること請け合いだ。
そして『鉄道知識』を扱った機知に富んだセリフの数々も見過ごせない。
このレビューのタイトルも、そんな本作から引用している。はっきり言って名言だ。

『いじめ』とも向き合う素晴らしいドラマ作品、オススメだ。


156話まで読み終えて、評価が一部変わった。
本作をラブコメととらえていたが、ラブコメよりも奥深いドラマが展開されているという点だ。
『苛烈ないじめ』表現や、主犯格の悪役ぶりにストレスを感じることはあったが、それを解消するカタルシスもしっかりと用意されている点が素晴らしいと思う。

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