第14話 いい人止まり、北欧系ギャルにラッキースケベする③

 

 燐のお着替え覗き見事件があってから、三十分近く経った。

 すっかり元の調子に戻った様子の燐は、公園の蛇口で水を汲みながら、あっけらかんと口にする。


「あんなのでうろたえるなんて、ホームレス失格だよね〜」

「お、おぅ……?」

「本当、あとちょっとで刺すところだったもんな〜。よかった〜、殺人事件にならないで」

「……」

 

 オレ、また刺されかけてたのか。

 命があることを神仏に感謝したほうがいいかもしれないな……

 

 燐は、小さなバケツに水を満杯に貯めると、当然のようにオレに渡してきた。

 今日のオレに、拒否権はない。ひたすら荷物持ちだ。

 謹んで持たせて頂く。

 

 燐は今日ばかりはベタベタせずに、常に先を歩いていた。

 耳がまだわずかに赤い。

 オレはその小汚い背中を追いかけながら、考える。

 

 冷静になってみると、燐がこれほど恥ずかしがっているのには意外さがあった。


 いつも無邪気に抱きついてきたり、男子寮のシャワーを借りたりするから、てっきりあの手の状況にも、


「え〜? 純くん、ついにその気になってくれたんだ〜? いいよ〜、触る〜?」


 とか言ってくるもんだと思っていたのに。


 ……もしかして、あのキャラは実は無理してやっているとか?

 いや、自分を淫乱女に見せるメリットなどひとつも思いつかないので、可能性は低そうだが。

 それでも、彼女への違和感は否めなかった。


 頑なに事情を話さないことといい、やけに積極的な行動といい……

 やっぱりコイツ、なんだか隠し事がありそうだ……


 オレは、瞼の裏に先ほどの光景を思い浮かべる。


 しっかし、これまで何度も体を押し付けられていたから、わかっていたことではあったが……

 締まるところは締まり、出るところは出ている、グラビアアイドル顔負けのとんでもないワガママなボディだった。

 その実例を生で見てしまったら、童貞が耐えられるわけがない。

 

 この思い、今すぐ解消しなければ……

 

 オレは燐に抱きつけるほどの距離まで身を寄せた。

 

「え、な、なに⁉」


 突然の接近に目を丸くして振り返る燐。


「純くん、もしかしてついにムラムラしちゃったの……⁉ でも今はまだ外だから……!」


 うろたえる燐を尻目に。

 オレは勇気を出して彼女に覆いかぶさるようにして……刺激臭を放つ頭皮の匂いを嗅いだ。


「くっさッ……‼ よし、落ち着いた」

「やっぱ刺しとくか」


 燐の懐でナイフが輝く。

 

 オレは急いで燐から飛び退いて距離を取った。

 色んな刺激のおかげで、一発で性欲が落ち着いた。

 

「本当、えっちさんって急に変なことするよね〜。普段はちょー奥手なくせにさ……」


 燐がため息をつく。

 呆れ顔は初めて見るかもしれない。


「すまん、必要なことだったんだ……あと、燐。悪いんだけど、そのあだ名やめてもらえないか? さすがに不名誉すぎるというか……」

「飲み物ほしいな〜、えっちさん」

「買ってきます」

「ダッシュ」

「はい!」


 オレは公園内の自販機へ向かって駆け出した。

 

 今後、燐にはなにも逆らえないかもしれない……



――――――――――――――――――

もし少しでも、


面白い、続きが気になる、読んでて楽しい、と思っていただけましたら、


下にある【星☆評価】でエールをくださると、嬉しいです。

 (※現時点の評価で構いません)



⇩ お試しでコチラも!


★「ウチはブスじゃねぇ! 美少女だッ!!」


https://kakuyomu.jp/works/16817330667704219218/episodes/16817330667704684007

学校1ブスの山崎さんが「ウチは美少女だ!」って暴れ始めた……



★クールなカレが脳内ではお喋りなこと、心が読めるワタシだけは知っている


https://kakuyomu.jp/works/16817330669078227708/episodes/16817330669081471722

心が読めちゃうワタシと無口で照れ屋なキミとの食卓



★ジャズタグ歴代1位🎺一般文芸3位

ようこそ、青く燃えるジャズの世界へ!


https://kakuyomu.jp/works/16817330652299130579/episodes/16817330667729166863

【16000PV】アオの音🎺 〜ジャズビッグバンドと独りぼっちの少女〜


――――――――――――――――――


次回、いい人止まりが北欧ギャルの意外な特技に驚きます。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る