ご令嬢とスパイ

「失礼致します、先生方。おはようございます。6年B組 紫良木桃でございます。加用先生はいらっしゃいますでしょうか。」

「加用です。桃様、ようこそ。教室へご案内いたしますね」

お嬢様言葉ってむずかしいね。気を緩めたら、標準語が出てきそう。桃様も、初めて言われた。一族の秘書たちに呼ばれている、姫様ですら慣れていない。今回の件は長期間になりそうです…

「桃様、中へ入ったら自己紹介をしてくださいませ。生徒は少ないですから、緊張せずに。」

…「失礼致します。皆様、初めまして。新しく編入となりました、紫良木しらぎももでございます。よろしくおねがい致します」

「桃様、初めまして。この学級の学級長を務めております、紅月こうづき星歌せいかでございます」

これが、私と目標ターゲットの初対面だった。

今日は、始業式だけだった。早苗と時雨は、半寮制と言って、全国でもここだけの寮制度だ。まず、学期ごとにテストを行い、合格すれば家へ帰れる。今日は初めて、寮に寝泊まりだ!

私はバカではない。実技も含めた8教科のテストは、一発合格をもぎ取った。早苗で言う9教科は、座学5教科と絵画・造形・歌謡・舞踊の4つである。バカではない私が唯一合格出来なかったのは、舞踊だ。これは、頭が良くてできるものではない。故に、卒業式で披露するという課題の舞は出来なかった。

しかし驚いたことに、星歌様はテストに合格したにも関わらず、自主練と言ってなかなか家へ帰らなかった。

「星歌様、大変失礼ではございますが、ご自宅へお戻りにならないのですか?」

「そうね…あと2週間ほどはいようかしら。あ、それと星歌ちゃんと呼んでくださる?私、"様"を付けられると権力を持っているみたいで嫌なの。同級生の間に権力はないわ。」

「では、ぜひ。星歌ちゃんの舞をお手本にさせていただきますね。ところで星歌ちゃん、質問があるのですが、よろしいですか?」

「えぇ。答えられることなら。」

「私、兄弟が合計で6人いるのです。星歌ちゃんはどうなのですか?」

「まぁ、6人もいらっしゃるの?私もいますのよ。高等部一年の星那せいな、中等部三年の星礼せいらがいますの。まだ保育部ですけれど、いとこの美月みづき由月ゆづきは双子なのです。もう可愛くって…」

「分かります!いとこの小さい子が、小さくてかわいいのです!」

「こうして桃ちゃんとずっと話していたいわ。でも、なりませんわね。もうすぐ帰寮時刻になりますもの」

「そうですわね。また今度、聞きたいことがあるのです。明日また会いましょう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ご令嬢は女神様っ! 戸塚 小夢(こゆ) @Koyu_minaraidesu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ